聖女じゃなかったので、カフェで働きます

風音悠鈴

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7. 新スイーツ完成と、甘い試食タイム

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庭園の約束から数日。
私は毎日キッチンで新メニューに没頭してた。
フルーツパラダイスのパフェをヒントに、和風フルーツスイーツ。
小豆のあんこを丁寧に煮て、パウンドケーキに塗って、甘さ控えめのクリームで周りを包んで、いちご・オレンジ・ぶどうを宝石みたいにトッピング。
名前は「フルーツあんみつパウンド」。

(……これ、サミュエルさんに一番に食べてもらいたい)

試作を繰り返して、ようやく完成した日の夕方。
カフェリテールはいつも通り賑わってたけど、閉店時間が近づき、お客さんがいなくなった頃。
リノさんが「今日は早めに閉めようか」って言って、私は片付けを始めようとしたその時——

カランカラン。 

サミュエルさんが入ってきた。
少し遅めで、疲れた顔。

「お待たせしました……今日はsnow Jewelじゃなくて」

トレイに新作を乗せて、カウンターへ。 

「新メニュー、フルーツあんみつパウンドです。一番に食べてほしくて……」

サミュエルさんがカウンターの席に座って、フードを取る。

「ありがとう」

一口食べて、目を細める。

「最高だ」
「小豆の優しい甘さとフルーツの爽やかさが……俺の好み、ど真ん中だ」

リノさんが奥から顔を出して、
「もう閉店時間だから、私、先に帰るね~。
藍里ちゃん、ゆっくりしてて」
って、ニヤニヤしながら出て行った。
店内は二人きり。
照明が落とされて、カウンターのランプだけが柔らかく光ってる。
サミュエルさんがフォークを置いて、私をまっすぐ見る。

「アイリさん」
「はい……?」
「君に、伝えたいことがある」

声が低くて、真剣。
私は息を飲む。

「毎日カフェに通ううちに、君の笑顔が、君の作るスイーツが、君自身が……
俺にとって、かけがえのないものになった。
好きだ、アイリさん」

……え?
頭が真っ白。
好きだ、って。
サミュエルさんが、私を……?
涙がぽろっと落ちる。

「嬉しいんです……私も、サミュエルさんが好きです」

でも、胸のざわつきが止まらない。

「でも……特別って、どういう意味ですか?」

声が震える。

サミュエルさんが少し驚いた顔をして、
「どういう……?」
「庭園で『かけがえのない』って言われた時から、ずっと考えてて……
私、聖女じゃなくて、場外で……
特別って、妹みたいに守ってあげたい、みたいな……?」

サミュエルさんが目を丸くして、
「……違う」

強く首を振る。 

「妹なんかじゃない。
君は、……俺の心を全部持っていった。守りたいのも、そばにいたいのも、全部、恋だからだ」

サミュエルさんが私の手を強く握る。

「信じてくれ。
俺は、君と付き合いたい」

(……恋だから。
付き合いたい)

涙が止まらない。
嬉しい涙だけ。

「私も……サミュエルさんと付き合いたいです」

サミュエルさんが微笑んで、
「ありがとう、アイリ」

初めて、名前で呼んでくれた。
店内のランプが揺れて、二人の影が重なる。

(……これが、私の恋の始まり)
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