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第二章 帝都・バラン
第11話 VSランド
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エストとバンシュートの戦いに決着がつく少し前、街の端では2人の男が激しい戦いを繰り広げていた。
「貴様が魔物を召喚したんだろ? 貴様を殺せば奴らは消えるのか?」
「剣を振り回しながら質問するなんて余裕があるんだなぁ!? 副団長さんよぉ!」
「くっ! 召喚士の割に近接もなかなか強ぇじゃねぇかよ」
「魔族ってのは人間よりも生物として強くできてんのさ。たとえ魔法主体の俺でも|膂力(パワー)が無いって訳じゃねぇのさ!」
「一芸に秀でて無ぇってことだな。力比べじゃ俺には勝てねぇぞ?」
「生意気な!」
魔族のランドと王室騎士団副団長のガントラードの攻防は一進一退だった。破壊力のあるガントラードの剣をランドは素早い動きで避けたり、魔法で受けたりしていた。ただ若干、ほんの少しだが、ガントラードの攻めの方が押していた。
「さっさと片付けてエスト君の手助けをしたいんだが。そう簡単には行かねぇな」
「あのガキじゃあバンシュートは倒せねぇぞ! アイツは俺よりも強いからなァ!」
「……ッく!」
ランドの作り出した岩の矢がガントラードを攻撃した。ものすごい数と勢いで、まるで雨のようだった。だがガントラードは多少の傷は受けつつもほとんどは受けきれている。
「アイツはなァ、侵界・クロワール様の直属部隊の副隊長なんだよ。ぽっと出の人間なぞ相手にならん!」
「!? 貴様ら三界の手下か!?」
「そうだ! 光栄に思いやがれ! そんな俺達に殺されるんだからな!」
そう言って更に魔物を召喚した。キングオーガだ。元々デカいオーガの更に数倍のデカさ、まるで巨人のような体躯が特徴の魔物だ。
「こんなのも召喚できるのか!?」
街中に魔物を召喚しておきながらこれだけ強力な魔物を召喚するというのはとんでもないことだ。召喚魔法ではなく召喚能力なのだろう。
「ぐぉおオオオ!!」
「重ッ……!」
キングオーガの振り下ろした巨斧を剣で受け止めた。だが体格差と筋力差によって今にも潰されそうだった。
「フハハハハ! さっきまでの勢いはどうした!? 俺は召喚士、召喚して当然だろう!」
「『岩の槍』!」
「くッ……!」
魔族の魔法によって作られた岩の槍が王室騎士団副団長を貫こうというところであった。
刹那、岩は砕け散り、その岩を操作していたはずの魔族の左腕が宙を舞っていた。
「……!? ッく! ぐあァァァ!!?」
「……!?」
互いに何が起こったのか理解か追いつかなかった。何があったのか、そんなことを思った瞬間にはキングオーガも地面に倒れていた。そしてその先には炎を纏った剣を握った少女が立っていた。
「ガントラードさん、ありがとうございます。あとは私がやりますね」
「なんだ貴様は!! 俺の腕を切ったのは貴様か!!」
魔族は頭に血を昇らせながら言った。しかしそれが判断を鈍らせ、少女の高速の攻撃に対して一切、対応することができなかった。
「『灰斬』!」
「ッ————!!」
「私はグランデュース=セルセリア! お前達魔族を滅ぼす者よ!」
少女の声はすでに魔族には聞こえていなかった。下から上に放った炎の斬撃が魔族の体を切り裂いていたからだ。そしてその体は瞬く間に灰となり、街中にいたはずの魔物も一斉に姿を消した。
「また一段と強くなりましたね。セリア嬢」
ガントラードは疲労と痛みに身体を震わせながらそう言った。
「強くならなきゃいけませんから。立ち止まったりはしませんよ。ところで向こうも戦いが終わったようです。これでひと段落ですね。もっとも被害は大きいですが」
「本当だ。魔力の衝突が止んでますね。……セリア嬢が早く来てくれて助かりました。俺1人ではどうなっていたか」
「団長さんが代わってくれたんです。街の冒険者も頑張ってくれましたし」
「えっ! 団長帰ってたんですか?」
「ええ。ついさっき。移動で疲れたから魔族の方をやってくれって」
「また適当な……。ご迷惑おかけしました」
「いいえ、構いませんわ。それよりエストが帰ってないわね。私は彼を探してきます。街の方はお任せしますね」
この日に起きた襲撃は世界中の他の街でも同じようなことが起こっていた。ただし無数の街が襲われた訳ではなかったことと、それぞれ人類の抵抗によってほとんどの街は陥落しなかったことで、おおよそ人類側の勝利ということになった。魔族が人間の力を侮っていた結果だろう。
しかし全ての街の防衛に成功したというわけではない。そんな中でも一つ、西大陸の北端にあるバルバタという街は1体の魔族の手によって完全に落とされた。
帝都・バランでは建物の崩壊が多かったものの、冒険者や騎士団の活躍により死傷者は少なく済んだ。翌日から復旧作業も開始され、次第に賑やかさも取り戻しつつあった。
「……?」
目を覚ますとベッドに横たわっていた。確かバンシュートを倒して気絶したんだっけか。痛みも和らぎ疲労も抜けて今の気分はぼちぼちといった感じだ。
ところでここはどこだ? 病室か? それにしては少し豪華な気がする。とはいえ傷の治療もしてあるから心配することではないか。そう思って耳を澄ますと外からは賑やかな声がする。魔族の襲撃はなんとかなったんだなと安心した。
「あら、エスト。起きたのね!」
扉が開いたと思ったら見知った顔が見えた。
「ああ、セリアか。おはよう」
「おはようじゃないわよ! 心配したのよ!? 戦いが終わって探してみたら倒れているんだもの! それから1日起きないし」
「ごめん」
「まぁ無事でなによりだけどね」
「ところでここは?」
「王宮よ。王様が魔族を倒してくれたお礼をしたいって」
「王宮だって!?」
そんなところ初めて来た。この前セリアの家でも驚いたのにもっとすごいところに来てしまうとは。
「お医者さん呼んでくるわね。ちょっと待ってて」
王宮か。どうりで洒落てるわけだ。そう思いながらおれは目を瞑って心を落ち着かせた。
「貴様が魔物を召喚したんだろ? 貴様を殺せば奴らは消えるのか?」
「剣を振り回しながら質問するなんて余裕があるんだなぁ!? 副団長さんよぉ!」
「くっ! 召喚士の割に近接もなかなか強ぇじゃねぇかよ」
「魔族ってのは人間よりも生物として強くできてんのさ。たとえ魔法主体の俺でも|膂力(パワー)が無いって訳じゃねぇのさ!」
「一芸に秀でて無ぇってことだな。力比べじゃ俺には勝てねぇぞ?」
「生意気な!」
魔族のランドと王室騎士団副団長のガントラードの攻防は一進一退だった。破壊力のあるガントラードの剣をランドは素早い動きで避けたり、魔法で受けたりしていた。ただ若干、ほんの少しだが、ガントラードの攻めの方が押していた。
「さっさと片付けてエスト君の手助けをしたいんだが。そう簡単には行かねぇな」
「あのガキじゃあバンシュートは倒せねぇぞ! アイツは俺よりも強いからなァ!」
「……ッく!」
ランドの作り出した岩の矢がガントラードを攻撃した。ものすごい数と勢いで、まるで雨のようだった。だがガントラードは多少の傷は受けつつもほとんどは受けきれている。
「アイツはなァ、侵界・クロワール様の直属部隊の副隊長なんだよ。ぽっと出の人間なぞ相手にならん!」
「!? 貴様ら三界の手下か!?」
「そうだ! 光栄に思いやがれ! そんな俺達に殺されるんだからな!」
そう言って更に魔物を召喚した。キングオーガだ。元々デカいオーガの更に数倍のデカさ、まるで巨人のような体躯が特徴の魔物だ。
「こんなのも召喚できるのか!?」
街中に魔物を召喚しておきながらこれだけ強力な魔物を召喚するというのはとんでもないことだ。召喚魔法ではなく召喚能力なのだろう。
「ぐぉおオオオ!!」
「重ッ……!」
キングオーガの振り下ろした巨斧を剣で受け止めた。だが体格差と筋力差によって今にも潰されそうだった。
「フハハハハ! さっきまでの勢いはどうした!? 俺は召喚士、召喚して当然だろう!」
「『岩の槍』!」
「くッ……!」
魔族の魔法によって作られた岩の槍が王室騎士団副団長を貫こうというところであった。
刹那、岩は砕け散り、その岩を操作していたはずの魔族の左腕が宙を舞っていた。
「……!? ッく! ぐあァァァ!!?」
「……!?」
互いに何が起こったのか理解か追いつかなかった。何があったのか、そんなことを思った瞬間にはキングオーガも地面に倒れていた。そしてその先には炎を纏った剣を握った少女が立っていた。
「ガントラードさん、ありがとうございます。あとは私がやりますね」
「なんだ貴様は!! 俺の腕を切ったのは貴様か!!」
魔族は頭に血を昇らせながら言った。しかしそれが判断を鈍らせ、少女の高速の攻撃に対して一切、対応することができなかった。
「『灰斬』!」
「ッ————!!」
「私はグランデュース=セルセリア! お前達魔族を滅ぼす者よ!」
少女の声はすでに魔族には聞こえていなかった。下から上に放った炎の斬撃が魔族の体を切り裂いていたからだ。そしてその体は瞬く間に灰となり、街中にいたはずの魔物も一斉に姿を消した。
「また一段と強くなりましたね。セリア嬢」
ガントラードは疲労と痛みに身体を震わせながらそう言った。
「強くならなきゃいけませんから。立ち止まったりはしませんよ。ところで向こうも戦いが終わったようです。これでひと段落ですね。もっとも被害は大きいですが」
「本当だ。魔力の衝突が止んでますね。……セリア嬢が早く来てくれて助かりました。俺1人ではどうなっていたか」
「団長さんが代わってくれたんです。街の冒険者も頑張ってくれましたし」
「えっ! 団長帰ってたんですか?」
「ええ。ついさっき。移動で疲れたから魔族の方をやってくれって」
「また適当な……。ご迷惑おかけしました」
「いいえ、構いませんわ。それよりエストが帰ってないわね。私は彼を探してきます。街の方はお任せしますね」
この日に起きた襲撃は世界中の他の街でも同じようなことが起こっていた。ただし無数の街が襲われた訳ではなかったことと、それぞれ人類の抵抗によってほとんどの街は陥落しなかったことで、おおよそ人類側の勝利ということになった。魔族が人間の力を侮っていた結果だろう。
しかし全ての街の防衛に成功したというわけではない。そんな中でも一つ、西大陸の北端にあるバルバタという街は1体の魔族の手によって完全に落とされた。
帝都・バランでは建物の崩壊が多かったものの、冒険者や騎士団の活躍により死傷者は少なく済んだ。翌日から復旧作業も開始され、次第に賑やかさも取り戻しつつあった。
「……?」
目を覚ますとベッドに横たわっていた。確かバンシュートを倒して気絶したんだっけか。痛みも和らぎ疲労も抜けて今の気分はぼちぼちといった感じだ。
ところでここはどこだ? 病室か? それにしては少し豪華な気がする。とはいえ傷の治療もしてあるから心配することではないか。そう思って耳を澄ますと外からは賑やかな声がする。魔族の襲撃はなんとかなったんだなと安心した。
「あら、エスト。起きたのね!」
扉が開いたと思ったら見知った顔が見えた。
「ああ、セリアか。おはよう」
「おはようじゃないわよ! 心配したのよ!? 戦いが終わって探してみたら倒れているんだもの! それから1日起きないし」
「ごめん」
「まぁ無事でなによりだけどね」
「ところでここは?」
「王宮よ。王様が魔族を倒してくれたお礼をしたいって」
「王宮だって!?」
そんなところ初めて来た。この前セリアの家でも驚いたのにもっとすごいところに来てしまうとは。
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