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第五章 エルフの里・ユラトラ
第29話 悪いヤツ
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「はぁー。幸せ……。普通のシチューにここまで感動したのは初めてよ」
「儂もじゃ……。これまでで1番旨い食べ物じゃ……!」
言い過ぎだ……とも言い切れない。それほどグラの作ったカレーは異常だった。
「“これ”、どうするか……。捨てるのはもったいないんだけど……」
「でも流石に食べられないわよ。食料はまだ余裕もあるでしょ? 仕方ないわよ」
「儂も捨てていいと思うぞ。食えんからな」
「お前が作ったんだろうが!」
「今度作るときはちゃんと練習してくるよ」
「グラ、無理しないで。もう作らなくていいわ」
これが少量だったら捨ててもよかったんだが……。あいにくと鍋いっぱいにあるからな……。そんなどうしようもないことを悩みながらシチューを頬張った。うん。うまい。
「ごちそうさま! 美味しかったわ!」
「お粗末さまです」
「ふぁー……。そろそろ寝るか……」
「そうだな。今日はおれが見張りしとくよ」
「あら、いいの?」
「ああ、今朝起きるの遅かったからな。2人よりは眠くないよ」
「そっか、ありがとう」
セリアとグラはテントに入っていき、おれは火に向かって座った。実際のところは朝起きれないから最初から起きていようと思ったのだ。
火に向かって2、3時間経った。良くか悪くか、カレーの匂いで眠気もほとんど起きなかった。そんなときだろうか、草陰からカサカサと音がした。
「……誰だ? 隠れても無駄だから出てこい」
「へっへっ。バレちまったか。おれ達を見つけるとは中々やるじゃねぇか。小僧」
「全然隠れてなかったろ。音が出てたぞ」
「……よく分かったな……」
十数人くらいのうす汚い男共が草原から出てきた。何者だ……?
「俺達はタイガー盗賊団だ! そして俺は棟梁・ダンゾウだ!」
「そうか。どこからタイガーが来たんだ?」
「カッコいいだろうが! 分からねぇか!?」
「そうだな。お前らがアホだってのは分かったよ。ところで何の用だ?」
「盗賊といやぁ盗みと殺しだろうがよォ!」
「そうか、分かりやすくていいな」
おれは座ったまま、淡々とそう答えた。相手は一斉に襲いかかってきたが大したヤツらじゃないだろう。
「いやぁ~流石っスね! エストの旦那! 俺らが相手にならないなんて」
「……」
タイガー盗賊団とかいうヤツらをすぐに返り討ちにしてやった。思った以上に大したヤツではなかったので少し肩透かしを食らってしまったが……。一応縄で縛って身動きを取れないようにした。
「別におれはお前達に恨みもないんだがよ……」
「じゃ、じゃあ見逃してくれないっスかね……?」
「そうもいかないだろ。犯罪者だしよ。……そうだ! 掃除をお願いしようか」
「掃除……ですか……?」
「そっ! これを見てくれ!」
おれはグラの“スーパーかれー”の鍋を見せつけた。彼らもこのヤバさはすぐに理解出来てるだろう。
「あ、あの……これを捨てればいいんですよね……?」
「まさか! もったいないだろ? これを全部食べてくれ!」
「え……だってそれ食べ物じゃな……」
「おれの仲間が作ってくれたものになんてこと言うんだ」
「え……すみませ……」
「まぁお前達縛られてるだろ?拒否できねぇから」
「え……いや……ああああああああ!!」
ああ、可哀想に。心の底から同情するよ。表面上はそのような顔をしたが、正直悪い笑みが隠しきれてない気もした。仕方ないだろ、自業自得というやつだ。
「あが……ぼばばば……」
「いやー、お疲れ様! 助かったよ!」
聞こえているだろうか。十数人でたったの鍋一杯分。言葉にすると大したことなさそうだが、考えただけでも気分が悪くなりそうだ。
「もう君達を逃がしてやってもいいかな」
「ほ、本当ですか……?」
大の男が涙を流しながら聞き返した。むさ苦しい景色だ。
「ああ、本当さ。でも二度と悪さするんじゃないぞ」
「も、もちろんですよ……!」
「もしここら辺で何かが起こったらお前達を殺しに来るからな。これはお前達を逃す条件での条約だからな」
「え……でもそれって俺達が関係なくてもダメじゃないですか……?」
「お前達が守ればいいだろ。ここを通る人達を」
「そ、そりゃそうっスね。そうっスよ。分かりました。これからは改心します!」
「そうだな。条約破ったらついでにあのカレーも食わせるか」
「……! 絶対に悪さしません!! ここの守護者になります!!」
おれは縄を解いて彼らを逃してやった。“スーパーかれー”がかなりのトラウマになったようだ。でもそれでここが安全になるならいいだろう。
「エスト、おはよう……。……朝起きてエストに会うなんて初めてね」
「おはよう。確かに初めてだな」
「……あら? グラのカレーは結局捨てたの?」
「いや、親切な方達が食べてくれたんだ」
「へー。物好きもいるものね」
「まったくだよ」
おれは盗賊のことは伏せていた。言う必要も特になかったからだ。まぁおれの言葉をそのまま信じた訳はないと思うが。あのカレーを普通に食べられるヤツなんて存在するはずがないから。
グラが起きてからおれ達はまたエルフの里へと歩きだした。途中から生い茂る森の中へと入った。森の中央には異様に大きい木が生えている。
「見えてきたわよ。あれがエルフの里・ユラトラよ!」
「儂もじゃ……。これまでで1番旨い食べ物じゃ……!」
言い過ぎだ……とも言い切れない。それほどグラの作ったカレーは異常だった。
「“これ”、どうするか……。捨てるのはもったいないんだけど……」
「でも流石に食べられないわよ。食料はまだ余裕もあるでしょ? 仕方ないわよ」
「儂も捨てていいと思うぞ。食えんからな」
「お前が作ったんだろうが!」
「今度作るときはちゃんと練習してくるよ」
「グラ、無理しないで。もう作らなくていいわ」
これが少量だったら捨ててもよかったんだが……。あいにくと鍋いっぱいにあるからな……。そんなどうしようもないことを悩みながらシチューを頬張った。うん。うまい。
「ごちそうさま! 美味しかったわ!」
「お粗末さまです」
「ふぁー……。そろそろ寝るか……」
「そうだな。今日はおれが見張りしとくよ」
「あら、いいの?」
「ああ、今朝起きるの遅かったからな。2人よりは眠くないよ」
「そっか、ありがとう」
セリアとグラはテントに入っていき、おれは火に向かって座った。実際のところは朝起きれないから最初から起きていようと思ったのだ。
火に向かって2、3時間経った。良くか悪くか、カレーの匂いで眠気もほとんど起きなかった。そんなときだろうか、草陰からカサカサと音がした。
「……誰だ? 隠れても無駄だから出てこい」
「へっへっ。バレちまったか。おれ達を見つけるとは中々やるじゃねぇか。小僧」
「全然隠れてなかったろ。音が出てたぞ」
「……よく分かったな……」
十数人くらいのうす汚い男共が草原から出てきた。何者だ……?
「俺達はタイガー盗賊団だ! そして俺は棟梁・ダンゾウだ!」
「そうか。どこからタイガーが来たんだ?」
「カッコいいだろうが! 分からねぇか!?」
「そうだな。お前らがアホだってのは分かったよ。ところで何の用だ?」
「盗賊といやぁ盗みと殺しだろうがよォ!」
「そうか、分かりやすくていいな」
おれは座ったまま、淡々とそう答えた。相手は一斉に襲いかかってきたが大したヤツらじゃないだろう。
「いやぁ~流石っスね! エストの旦那! 俺らが相手にならないなんて」
「……」
タイガー盗賊団とかいうヤツらをすぐに返り討ちにしてやった。思った以上に大したヤツではなかったので少し肩透かしを食らってしまったが……。一応縄で縛って身動きを取れないようにした。
「別におれはお前達に恨みもないんだがよ……」
「じゃ、じゃあ見逃してくれないっスかね……?」
「そうもいかないだろ。犯罪者だしよ。……そうだ! 掃除をお願いしようか」
「掃除……ですか……?」
「そっ! これを見てくれ!」
おれはグラの“スーパーかれー”の鍋を見せつけた。彼らもこのヤバさはすぐに理解出来てるだろう。
「あ、あの……これを捨てればいいんですよね……?」
「まさか! もったいないだろ? これを全部食べてくれ!」
「え……だってそれ食べ物じゃな……」
「おれの仲間が作ってくれたものになんてこと言うんだ」
「え……すみませ……」
「まぁお前達縛られてるだろ?拒否できねぇから」
「え……いや……ああああああああ!!」
ああ、可哀想に。心の底から同情するよ。表面上はそのような顔をしたが、正直悪い笑みが隠しきれてない気もした。仕方ないだろ、自業自得というやつだ。
「あが……ぼばばば……」
「いやー、お疲れ様! 助かったよ!」
聞こえているだろうか。十数人でたったの鍋一杯分。言葉にすると大したことなさそうだが、考えただけでも気分が悪くなりそうだ。
「もう君達を逃がしてやってもいいかな」
「ほ、本当ですか……?」
大の男が涙を流しながら聞き返した。むさ苦しい景色だ。
「ああ、本当さ。でも二度と悪さするんじゃないぞ」
「も、もちろんですよ……!」
「もしここら辺で何かが起こったらお前達を殺しに来るからな。これはお前達を逃す条件での条約だからな」
「え……でもそれって俺達が関係なくてもダメじゃないですか……?」
「お前達が守ればいいだろ。ここを通る人達を」
「そ、そりゃそうっスね。そうっスよ。分かりました。これからは改心します!」
「そうだな。条約破ったらついでにあのカレーも食わせるか」
「……! 絶対に悪さしません!! ここの守護者になります!!」
おれは縄を解いて彼らを逃してやった。“スーパーかれー”がかなりのトラウマになったようだ。でもそれでここが安全になるならいいだろう。
「エスト、おはよう……。……朝起きてエストに会うなんて初めてね」
「おはよう。確かに初めてだな」
「……あら? グラのカレーは結局捨てたの?」
「いや、親切な方達が食べてくれたんだ」
「へー。物好きもいるものね」
「まったくだよ」
おれは盗賊のことは伏せていた。言う必要も特になかったからだ。まぁおれの言葉をそのまま信じた訳はないと思うが。あのカレーを普通に食べられるヤツなんて存在するはずがないから。
グラが起きてからおれ達はまたエルフの里へと歩きだした。途中から生い茂る森の中へと入った。森の中央には異様に大きい木が生えている。
「見えてきたわよ。あれがエルフの里・ユラトラよ!」
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