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11 ハウス③
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「さあ、勝負だ! 仮面男!」
フィールドに移動した俺は、凶暴な戦士と向き合っていた。頭上には[マクド]というユーザーネームが浮かんでいる。装備しているのは盾に斧。ふつうに強そうだ。
ざわざわ、と周辺にいる冒険者たちが、
「久しぶりにプレイヤー同士の戦いを観るぜー」
「悪口を言い合うと運営から垢BANされちゃうからね」
「結局、民度がいい人しかプロテルには残ってないよな」
などと、言っている。
なるほど。ここはマナーをよくして戦った方がいいな。ちゃんと挨拶してから、土魔法で穴ハメしよう。ん? 穴ハメしたらずるいか? まあ、いいや。
「恨みっこなしで戦いましょう、マクドさん!」
「ははは! 望むところだ!」
戦闘体制に入る戦士。
さらにざわつく冒険者たち。
ヴェリタスは、真剣な眼差しで俺を見つめていた。
ふと思い出すのは、ミルクの言葉だ。
「ヴェリたそは、きっと女性っす」
まさかな……。
ブン!
戦士の振り下ろした斧が眼前に迫る。
「うわぁっ!」
間一髪、避けた。
だが、さらに攻撃を仕掛けてくる。
大振りされる斧。レベル7になったおかげだろう。簡単にかわせるぞ。
「すばしっこいやつめ……おりゃ!」
戦士の怒涛の攻撃をかわしていく。
意識を集中させ、土魔法の詠唱をはじめた。よし、いまだ!
「石を砂に変える魔法 サブルム!」
戦士の足元が砂と化す。
「うおっ!」
驚いた戦士だったが、ニヤッと笑った。
そして大きく飛んだ。俺の土魔法は砂時計のように、むなしく地面を掘っていく。
「ははは! 残念だったな」
「くそっ」
知能の低い魔物になら穴ハメできたが、プレイヤーには、さすがに効かないか。
どうしよう?
サッと周辺を観察する。
ただの平原が広がっている。岩がないので壁は作れそうにないな。
飛んでも回避できないほど大きなサブルムを作るか……。
いや、他の冒険者たちを巻き添えにしたらダメだろう。
うーん、困った。
しかし勝負は待ってくれない。
戦士は、ニヤッと笑う。
「そろそろ決着をつけてやる、くらえー! トマホークミサイル!!」
戦士の必殺技だろう。
ブンっと投げられた斧がこちらに飛んでくる。は、速い!?
グサッ!
何とか避けたが、かわしきれなかった。
あれ? 立ち上がれない。俺の左腕に斧がささっている。
「うわぁぁぁ!」
悲鳴をあげた。
しかし痛みはない。血も出ていない。ここはゲームの世界だから。
どよめく冒険者たちから、
「仮面男の負けだな」
「たいしたことなかったね」
「ああ、やっぱり地雷だわ」
と、言われてる。
冷たい風が吹く。ぽつん、と膝をついた俺だけが平原に取り残された気持ちになる。
それでもヴェリタスだけは微笑んで、グッと親指を立てて俺を応援していた。
あきらめるな!
じわじわ、と近づいてくる戦士。
「まだHPが残ってたか、しぶといやつめ」
俺の左腕には斧がささっている。
あ、そうか……。
ひらめいた。
土魔法を詠唱し、魔法陣がぐるぐると回る。
「あがいても無駄だ」
戦士が俺の左腕から斧を抜いた。
そして、大きく振り上げる。
「おりゃー! ヴェリタスはわいのもんやー!」
ドシン……
無常にも戦士の手から斧が滑り落ちた。
「な、なんだ!? 急にわいのトマホークちゃんが重くなってしもたぁぁぁ!!」
斧が地面に突き刺さっている。
戦士は必死にその斧を抜こうとするが、びくとも動かない。
「なぜだぁぁぁ!?」
困惑する戦士。
周りにいる冒険者たちも不思議な目をしている。説明しよう。
「あなたの斧に土魔法をかけました」
「くそぉぉ、どういうことだ!?」
「物質を重くする魔法 グラウィ です」
「はあ?」
いぶかしがる戦士。
こっそりダガーを取り出し、彼の足先に突き刺す。相手の心臓を刺すわけじゃない。土下座するような動作でこなした。
「なっ……!? なんやこんだけか……びっくりしたやんけ」
「マクドさん、あなたの負けです」
「なんやて? そんなわけあるか!」
戦士は手のひらを握って、俺を見下す。
「斧なんかいらへん」
「どう抵抗するんですか?」
「拳でっ!」
戦士は、ガンっと拳と拳を当てた。
殴られる。
そう思った瞬間だったが、なんとか間に合ったようだ。
ドサッ!
戦士は倒れた。
「仮面男……わいに何をした?」
500
530
550
600
じわじわとHPが削られている。
ホログラムの粒子となって消える前に教えてやろう。
「ダガーに毒をぬっておいたんですよ……」
フィールドに移動した俺は、凶暴な戦士と向き合っていた。頭上には[マクド]というユーザーネームが浮かんでいる。装備しているのは盾に斧。ふつうに強そうだ。
ざわざわ、と周辺にいる冒険者たちが、
「久しぶりにプレイヤー同士の戦いを観るぜー」
「悪口を言い合うと運営から垢BANされちゃうからね」
「結局、民度がいい人しかプロテルには残ってないよな」
などと、言っている。
なるほど。ここはマナーをよくして戦った方がいいな。ちゃんと挨拶してから、土魔法で穴ハメしよう。ん? 穴ハメしたらずるいか? まあ、いいや。
「恨みっこなしで戦いましょう、マクドさん!」
「ははは! 望むところだ!」
戦闘体制に入る戦士。
さらにざわつく冒険者たち。
ヴェリタスは、真剣な眼差しで俺を見つめていた。
ふと思い出すのは、ミルクの言葉だ。
「ヴェリたそは、きっと女性っす」
まさかな……。
ブン!
戦士の振り下ろした斧が眼前に迫る。
「うわぁっ!」
間一髪、避けた。
だが、さらに攻撃を仕掛けてくる。
大振りされる斧。レベル7になったおかげだろう。簡単にかわせるぞ。
「すばしっこいやつめ……おりゃ!」
戦士の怒涛の攻撃をかわしていく。
意識を集中させ、土魔法の詠唱をはじめた。よし、いまだ!
「石を砂に変える魔法 サブルム!」
戦士の足元が砂と化す。
「うおっ!」
驚いた戦士だったが、ニヤッと笑った。
そして大きく飛んだ。俺の土魔法は砂時計のように、むなしく地面を掘っていく。
「ははは! 残念だったな」
「くそっ」
知能の低い魔物になら穴ハメできたが、プレイヤーには、さすがに効かないか。
どうしよう?
サッと周辺を観察する。
ただの平原が広がっている。岩がないので壁は作れそうにないな。
飛んでも回避できないほど大きなサブルムを作るか……。
いや、他の冒険者たちを巻き添えにしたらダメだろう。
うーん、困った。
しかし勝負は待ってくれない。
戦士は、ニヤッと笑う。
「そろそろ決着をつけてやる、くらえー! トマホークミサイル!!」
戦士の必殺技だろう。
ブンっと投げられた斧がこちらに飛んでくる。は、速い!?
グサッ!
何とか避けたが、かわしきれなかった。
あれ? 立ち上がれない。俺の左腕に斧がささっている。
「うわぁぁぁ!」
悲鳴をあげた。
しかし痛みはない。血も出ていない。ここはゲームの世界だから。
どよめく冒険者たちから、
「仮面男の負けだな」
「たいしたことなかったね」
「ああ、やっぱり地雷だわ」
と、言われてる。
冷たい風が吹く。ぽつん、と膝をついた俺だけが平原に取り残された気持ちになる。
それでもヴェリタスだけは微笑んで、グッと親指を立てて俺を応援していた。
あきらめるな!
じわじわ、と近づいてくる戦士。
「まだHPが残ってたか、しぶといやつめ」
俺の左腕には斧がささっている。
あ、そうか……。
ひらめいた。
土魔法を詠唱し、魔法陣がぐるぐると回る。
「あがいても無駄だ」
戦士が俺の左腕から斧を抜いた。
そして、大きく振り上げる。
「おりゃー! ヴェリタスはわいのもんやー!」
ドシン……
無常にも戦士の手から斧が滑り落ちた。
「な、なんだ!? 急にわいのトマホークちゃんが重くなってしもたぁぁぁ!!」
斧が地面に突き刺さっている。
戦士は必死にその斧を抜こうとするが、びくとも動かない。
「なぜだぁぁぁ!?」
困惑する戦士。
周りにいる冒険者たちも不思議な目をしている。説明しよう。
「あなたの斧に土魔法をかけました」
「くそぉぉ、どういうことだ!?」
「物質を重くする魔法 グラウィ です」
「はあ?」
いぶかしがる戦士。
こっそりダガーを取り出し、彼の足先に突き刺す。相手の心臓を刺すわけじゃない。土下座するような動作でこなした。
「なっ……!? なんやこんだけか……びっくりしたやんけ」
「マクドさん、あなたの負けです」
「なんやて? そんなわけあるか!」
戦士は手のひらを握って、俺を見下す。
「斧なんかいらへん」
「どう抵抗するんですか?」
「拳でっ!」
戦士は、ガンっと拳と拳を当てた。
殴られる。
そう思った瞬間だったが、なんとか間に合ったようだ。
ドサッ!
戦士は倒れた。
「仮面男……わいに何をした?」
500
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