上 下
10 / 24
第三幕

未知の恐怖を何卒。

しおりを挟む
ドアを開けた。


そこには、私たちの集落があった。
だが、明らかに雰囲気が違う。

ここには、私たち以外がいなかった。


とりあえず、皆、家に帰った。



まずは、桜。

「誰もいないんだよー。みんな。」
当たり前のように親も弟もいなかった。


大切な人がいない絶望は分かるだろうか?
わかる人もいるだろう。
だが、誰もいない。大切な人も知らない人も。

これは、桜にとってとてもきつい事だった。
狂っていても、そういう気持ちはある。


桜は、自分の部屋へ入った。
物は、そのままで恐ろしいほど綺麗に整っていた。

自分は、嫌になり、押し入れに入った。


「なぜ、こうなるんだよー。
もう、もう、許してよー。」


なんども、叫んだ。
声が枯れるぐらい。

喉が痛い。
吐き気がする。
大して水を飲んでいないのに、涙が出る。

もう、死にたい。


殺して。



「トントン」

屋根裏から音がする。



「え。やめるんだよー。
怖いんだよー。」


「トントントントン」

優しい音がする。



「もう、殺して欲しいんだよー。」


桜は、ぬっと立ち上がり、屋根裏部屋への板を外して、上へ行った。




誰もいなかった。


何故。


音がしたはず。




目の前にひとつのモニターを見つけた。

桜はスイッチを押そうとした。


すると。



パッと電源が付いた。
何故。押してないはず。



「.......ザーザー。。」

「ザッ......ピ!!!....」

「ゴッザピ...!!!!!!!」



「いらっしゃいませ。
こちらは、役職ネット販売でございます。」


「なんだよー。それ。」


「お客様は、以下の役職をお選びください。」


「いいから殺して欲しいんだよー。」


「それは、出来ません。お客様ですから。」


「それでは、以下の役職をお選びください。」

・剣士
・魔術師
・狩人

「どうしよー。私は、切り裂きたい。
だから、剣士だよー。」


「かしこまりました。
翌日の正午にお届けしますのでお待ちください。

間もなく、お客様の家に、電気と水が通り、食材も用意してありますので、ご自由にお取りください。」


「ありがとうだよー。」


「それでは、ありがとうございました。」



私は、死にたいと思った。
だけど、役職が手に入ったことにより、復習して行きたいと思えた。

私だけ、生きて帰る。

絶対に。


ほかの2人は、何をしているのか分からない。

でも、生きるだけは、絶対に叶えてみせる。


桜は、ご飯を沢山食べ、正午を待った。

万遍の笑みで。
しおりを挟む

処理中です...