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妹がいるお兄ちゃんが羨ましい!!

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「イテテテ」

「おかーさん! おとーさん! この人やっと起きたー!!」

「あら、本当!やっと目を覚ましたのね、私この男の子が庭で倒れてたとき心配で心配で・・・・大丈夫?怪我とかない?お腹は空いてない?なにか必要ようなものは?それからそれから・・・」

「まぁまぁ母さん、心配な気持ちは分かるけど、この子だってまだ起きたばっかりなんだ。まだゆっくりさせてあげてくれ、なぁ?」


(なぁ?)って言れても目の前にいる人たちを僕は知らない。どうすればいいのだろう。

    とりあえず状況を整理しよう。どうやらあの神様が言うには転生したらしい、転生したって言っても信じてもらえないだろうし、色々めんどくさくなりそうだ。さっきの会話の感じだと俺はこの家の子ではなくて、この家の庭に倒れていたのを助けられた感じだ。


「僕を助けて頂きありがとうございます」

「全然!当たり前のことをしたまでよ。それより怪我はない?」

「はい、今のところ元気です」

「あっそうそう。自己紹介をしてなかったわね。」

「はい、はい!エルから自己紹介したい!」

「分かったわ、エルからやっていいわよ。」

「やったー!エルの名前はサール・エルです。6さいです。すきなたべものは、う~んお魚さん!」

「じゃあ、次は俺かな。俺はサール・ライール、エルの父だ」

「最後は私かな。私はサール・サキルです。エルの母です」


 この家は父、母、娘の3人家族らしい。6歳の可愛らしい女の子がエルちゃんで、その父親がライールさん、母親がサキルさん。

    そして、こんな僕を家に上げてくれた感謝の気持に浸ってると、ライールさんが話し始めた。


「お前さんの名前はなんて言うんだい?」

「えっ、僕ですか。僕の名前は楽間 琉生です。」

「ラクマルイ?珍しい名前だな。言いづらいからラクマの『ラ』とルイの『ル』をとって『ラル』でいいだろ。なんかうちのエルとも名前似てるし。」


 こうして僕、楽間琉生はラルになった。


「私一つ聞きたいことがあるんだけど、さっき私達の家の庭にラルくんが倒れてたって言ったじゃない?」

「はい。それでサキルさんが家に僕を入れてくれたって・・」

「そうなんだけど、一つ不思議な点があるのよ」

「不思議な点って?」

「私達の家の庭は5メートルの柵で囲まれてるの。なのにどうやって庭に入ったのかなーって」

「えっ、なんで柵で囲まれてるんですか?」

「なんでって、ラルくんの家もそうだったでしょ。だってラルくんも私達と一緒なんだから」

「えっ?」

「まぁ、母さん。ラルも分かってないんだったら、深く聞かなくてもいいじゃないか」

「そうよね、ごめんねラルくん」

「いえ、大丈夫ですけど・・・」


 僕はなんのことかさっぱり分からなかった。私達と同じという言葉にもなにか引っかかった。

    そしてエルちゃんが元気いっぱいに話し始めた。


「ねえねえラルお兄ちゃん、今から外で遊ぼ!」


 自分は一人っ子なので、お兄ちゃんと呼ばれるのになれていない。しかし、この時僕は世の中の、妹がいるお兄ちゃんが羨ましいと思った。


「ダメよエル。ラルくんまだ起きたばっかで、動けないからまた今度にしてもらいなさい」

「えー。こんどっていつー」

「分かったエルちゃん、明日遊ぼ!」

「やったー!!約束だよー」

「良かったわねエル。ラルくんも、今日はお風呂に入って早く寝なさい。お風呂は、この部屋を出て右にあるから。あと元気になるまでここにいるといいわ」

「ほんとですか!親切にありがとうございます」

「じゃあ、ラルくんおやすみなさい」

「ラルお兄ちゃんおやすみー」

「それじゃあ、ラルまた明日な」

「色々ありがとうございます。おやすみなさい」


 エルちゃんたちが出ていった後、俺は言われたとおりお風呂に入ろうとした。そして鏡の前に立って顔を見ると、神様が言っていた通り、転生する前と顔が変わっていない。少しイケメンになっているかもと期待した僕が間違っていた。しかし一つだけ変化していた部分があった。それは、右腕に十字架のマークがあったこと。その時僕は十字架のマークより、転生したにもかかわらずイケメンにしてくれなかった神様の怒りでいっぱいだった。
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