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牛肉?豚肉?鶏肉?いえいえ......

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    リビングには、ファルソーさんと僕だけが取り残されしばらく沈黙が続いた。そして、ついにファルソーさんが話し始めた。


「ラル君はなぜ外に出てこようと思ったんだい?」

「えっそれは、この世界を変えるためです。えっそれより僕、家から抜け出してきたこと言いましたっけ?」

「言ってないが分かる。さっき、十字架の模様があるって言っていたからな」

「やっぱり、十字架の模様と僕たちが追いかけられたこと関係あるんですね」

「あぁ、今からそのことについて話すが少し残酷な話だ。最後まで聞いてくれるか?」

「はい!お願いします」

「この話は私が小さい頃から語り継がれている話でな、30年ぐらい昔の事だ。その当時この国『レジア』には二種類の種族が生きていた。レジアの8割を占める『デモニオ族』。そして2割を占める『ドロリ族』だ。この2つの種族はお互い協力しあい生きており、住むところ、食べるもの、着るもの、文句なしの生活を全員がしていた。しかし30年前あたりからデモニオ族の人口がさらに増え、食料不足になっていき、そこに追い打ちをかけるように天候不順が続いた。これはそんなドロリ族の少年『ドマ』の話だ」

 

「母ちゃーん、お腹すいたよー。なにか食べるものなーい?」

「あんたさっき食べたばっかでしょうが。夜まで我慢しなさい」

「えー、お腹すきすぎて破裂しちゃうよ」

「大丈夫破裂しないから。あんたは家にいると文句しか言わないんだから、外で遊んできなさい」

「ちぇー、分かったよ」


「遊んでこいって言われたけど、誰もいねーな。とりあえず、シャルの家の前まで行ってみるか」


    ドマの親友シャルは、ドマとは違うデモニオ族だ。しかしそんなことは関係なく仲がいい。


「おーいシャル!あそぼー」

「ドマじゃないか、僕もちょうど暇をしていたところなんだ」

「そっか、なら良かったよ。今日は何して遊ぶ?こないだは俺が好きな木登りだったから今日はャルが決めていいよ」

「いいのかい!なら読書がしたいな。お互いに相手が好きそうな本を選ぶんだ」

「えっ、まぁいいけど・・・」

「よし、それなら早く教会に行って本を読もう!」


   ドマは、シャルに遊びを決めていいと言ったが『読書』はあまり乗る気じゃなかった。

 そしてドマは、『世界の美味しい食べ物百選』という本を。シャルは『世の中の真理。眼の前に広がる景色は本物か』という本を選びお互いに渡した。そしてお互い読書をした後に家に帰った。


「ただいまー‼母ちゃんご飯早く早く‼」

「もう、騒がしいね。はい、ご飯」

「うまそー‼あれ、母ちゃんこれ何?」

「何って、あんたが一番好きなものだよ」

「えっもしかして肉?」


    ドマの母親はコクリとうなずいた。ドマは飛び跳ねて喜んだ。しばらくドマの興奮は収まらず肉を持ちながら家の中を走り回っていた。


「肉だー!肉!肉!肉!いただきま~す‼‼なにこれめっちゃうまい!さいこー!ありがとな母ちゃん!」

「ドマが喜ぶ姿が見れて私は嬉しいよ」

「でも母ちゃんこの肉どこで買ったの?今、食料不足で肉が売ってないんじゃ。もし売ってても高いって母ちゃん前、言ってたじゃん」

「近所の人から少し貰ったんだよ」

「その近所の人、神だな!母ちゃんは食べないのか?この肉メチャウマいいぞ」

「私は大丈夫だよ。さっき食べたから。それよりいっぱいドマが食べな」


    そう言ったドマの母親の服には洗いきれなかった血。生きていくためには、息子の笑顔を見るためなら、人の一人や二人・・・






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