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幕間
B.A.pre1
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物心ついたときからずっと、私は目に見えぬ誰かの存在を感じていた。
その誰かはときに暖かくときに力強く、また、ときには慈しむような気配を持っていた。
そして私は、その誰かとの繋がりが私の存在に深く根付いているのを感じ、当たり前のように信じて受け入れていた。
私たちには下位世界に住む人間たちのように、肉親と呼ばれる存在はいない。
幼い頃に才を見出され同じ部屋に集められた「兄弟」たちと、私たちの面倒を見てくれる「兄さん」たちだけが擬似的な家族とみなされている。
肉親を持たない私たちにとって、それが擬似的なものであれ、兄弟や、とりわけ親代わりの兄さんたちは特別な存在だった。
私も含め兄弟たちはみな兄さんたちにひどく懐いた。
私にとっては目に見えぬ誰かが一番の家族のように感じられたので、「人間の肉親とはこういうものかしら」と思っていた。
擬似的な家族だとわかっている兄弟たちや兄さんたちよりも、感覚的には常に身近にいたのだからそれも当然のことだっただろう。
もちろん、その感覚が普通ではないと薄々気づいていたので誰にも話すことはなかった。
変なやつだと思われたくなかったこともあるが、なにより誰かの存在を自分だけのものにしておきたかったのだ。
誰かに話してしまうと誰かのことを根掘り葉掘り訊かれて、その存在を知った兄弟たちが私から誰かを取り上げるのではないか、という想像が漠然とあった。
結果的にその判断は正しかった。
私の他にも誰かの存在を感じていた兄弟はいた。
彼らは私が抱いていたような懸念を感じていなかったようで、ふとした時にその存在を洩らした。
例えば先に述べたような、人間には肉親と呼べるものがいるということを教えられたときに疑問を感じたらしい。
そしてその数日後、彼らの姿は見えなくなった。
彼らの行方を尋ねた弟に、兄さんは言った。
「あれは邪神に魅入られて堕ちてしまったのだよ」と。
人数の減った部屋の中で、私たちはそれまでと変わらず過ごした。
私たちが部屋から「卒業」する頃には、兄弟は半分以下になっていた。
卒業後、兄弟たちはそれぞれの部隊に配属されていった。
駒階級の者たちと違って彼らはエリート階級であるため、過酷な前線でそれなりの功を立てさえできれば昇進が約束されている。
そして、私はというと。
「まさか私が…」
私が受けた辞令には私が「弟たち」の新たな「兄さん」になることが格式張った長々とした文面で認められていた。
その誰かはときに暖かくときに力強く、また、ときには慈しむような気配を持っていた。
そして私は、その誰かとの繋がりが私の存在に深く根付いているのを感じ、当たり前のように信じて受け入れていた。
私たちには下位世界に住む人間たちのように、肉親と呼ばれる存在はいない。
幼い頃に才を見出され同じ部屋に集められた「兄弟」たちと、私たちの面倒を見てくれる「兄さん」たちだけが擬似的な家族とみなされている。
肉親を持たない私たちにとって、それが擬似的なものであれ、兄弟や、とりわけ親代わりの兄さんたちは特別な存在だった。
私も含め兄弟たちはみな兄さんたちにひどく懐いた。
私にとっては目に見えぬ誰かが一番の家族のように感じられたので、「人間の肉親とはこういうものかしら」と思っていた。
擬似的な家族だとわかっている兄弟たちや兄さんたちよりも、感覚的には常に身近にいたのだからそれも当然のことだっただろう。
もちろん、その感覚が普通ではないと薄々気づいていたので誰にも話すことはなかった。
変なやつだと思われたくなかったこともあるが、なにより誰かの存在を自分だけのものにしておきたかったのだ。
誰かに話してしまうと誰かのことを根掘り葉掘り訊かれて、その存在を知った兄弟たちが私から誰かを取り上げるのではないか、という想像が漠然とあった。
結果的にその判断は正しかった。
私の他にも誰かの存在を感じていた兄弟はいた。
彼らは私が抱いていたような懸念を感じていなかったようで、ふとした時にその存在を洩らした。
例えば先に述べたような、人間には肉親と呼べるものがいるということを教えられたときに疑問を感じたらしい。
そしてその数日後、彼らの姿は見えなくなった。
彼らの行方を尋ねた弟に、兄さんは言った。
「あれは邪神に魅入られて堕ちてしまったのだよ」と。
人数の減った部屋の中で、私たちはそれまでと変わらず過ごした。
私たちが部屋から「卒業」する頃には、兄弟は半分以下になっていた。
卒業後、兄弟たちはそれぞれの部隊に配属されていった。
駒階級の者たちと違って彼らはエリート階級であるため、過酷な前線でそれなりの功を立てさえできれば昇進が約束されている。
そして、私はというと。
「まさか私が…」
私が受けた辞令には私が「弟たち」の新たな「兄さん」になることが格式張った長々とした文面で認められていた。
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