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第一章『最も天国に近い地獄編』
第4話「Pa:ゼロから始める異世界生活」
しおりを挟む人は土から離れて生きられないのよ.
昔金曜ロードショーで見たアニメ映画に、確かそのようなセリフがあった。
今の俺の置かれている状況が、まさにそれである。
雲海を貫くほど巨大なテーブルマウンテン。
何を思ったのか、かつての人がその頂上に作り上げた小さな町。
陸の孤島ならぬ、空の孤島。
――そりゃ滅んで当然だろ!!
「ぐおおおおおお!! 耐えろパゼロおおおお!!」
パゼロが、それはもうぐらぐらと揺れていた。
某テーマパークのアトラクションもかくやと言うほど、揺れに揺れていた。
思春期の乙女心だってこれほどまでには揺れないだろうさ!
さっき町の廃墟を探索したときに、あれ、おかしいな? とは思っていたんだ。
どうしてここには背の高い植物が生えていないんだろう? どうして木が生えてないんだろう? と。
今ならその理由が分かる。
ここ、テーブルマウンテンの頂上は、霧が深い他は少し酸素が薄いくらいなもので、それ以外なんの変哲もなく穏やかな気候であるものの、定期的にありえないくらいの強風が吹きすさぶのだ。
つまり、背の低い雑草のような植物しか生き残れなかった。背の高い植物は全てこの風に淘汰されてしまったわけである。
そしてこの風は、俺すらも淘汰しようとした。
廃墟の探索中、なにやら風が強くなってきたなと思ったら、たちまち暴風に変わりやがった。
俺はすぐさまパゼロに籠城し、そして今はパゼロごと雲海に突き落とされないよう神に祈っているところだ。
「もうドジっこ女神でもなんでもいいから助けて!!」
が、これほどの暴風では、俺の祈りもきっと神には届かないことだろう。
だから俺は女神にもらったたわしを握りしめて、このおそろしい風が気まぐれで吹き止むまで待つほかなかった。
だが、風が吹き止むのを待たずして俺は気付いてしまった。
さすがは一世を風靡した往年の名車パゼロ、といったところか。
パゼロは暴風に煽られて激しく揺さぶられているものの、このまま吹き飛ばされてしまうような気配は一切ないのだ。
うわあ、パゼロすげえ。
それが分かると、だいぶ恐怖心が薄れてきた。
そうだ、悪天候の中で車を停めて、天気が落ち着くまで休憩していると思えばいい。
ものは考えようだ。
しっかし、パゼロって本当にすげえな。もしかしたら本当に大当たりだったのかもしれない。
こんな廃墟に飛ばされて挙句強風に煽られた時は、ああこれ死んだな、なんて確信したものだが、パゼロのおかげでその全ての問題がどうにかなりそうだ。
まず、パゼロには屋根があり壁がある、シートの具合もいいし、倒せば横になれる。
すなわちここで、快適に寝泊まりをすることが可能であるということだ。
そして見てのとおり、パゼロにはこの恐るべき強風に耐えうるだけの力がある。
この風の法則性が分かるまで、探索以外の時間はここで過ごすことになるだろう。
あとこれは最終手段だが、どうしてもという時はもちろんパゼロを運転することも、カーエアコンで温まることもできる。
現状ガソリンを補給する手だてがないため、これは非常時のみしか使えない奥の手だが。
「問題は食料だな……」
一人でいると、寂しさのあまり独り言が多くなるので、その点ははあらかじめご容赦願いたい。
ともあれ、現時点での最大の問題が食料についてだ。
水分は周囲に立ち込める深い霧のおかげでなんとかなるが、食料についてはどうしようもない。
なんせ俺以外の生物と言えば、虫かカエル、それかトカゲくらいなものである。
一応、雲の中をドラゴンらしきモンスターがぎゃあぎゃあと飛び回っているが、レベル1の農民に何ができようか。逆に食われるのがオチだ。
となれば、あとはその辺に生えてる毒々しい色の植物、くらいなものか……?
………………
…………
……まぁいけるだろ。
近所の土手で摘んできた山菜だと思えば、いけないこともない。
俺は田舎育ちだから人よりも胃は強い、はずだ。
などと考えていると、ぴたりと風が止んだ。
おそるおそるドアを開けてみると、町中に立ち込めていた霧は嘘のように払われ、もはやそよ風すら吹いていなかった。
あるのはどこまでも続く晴天と、朽ち果てた廃墟のみである。
なんだ、案外ちょろいもんじゃないか。
なんて調子に乗りつつ、パゼロから降り立つと――途端に、限界が来た。
「ヴぉえええええええええええっ!!」
----------------------------------------------------------------
クワガワ・キョウスケ Lv1
農民
HP 12/15
MP 4/4
こうげき 6
ぼうぎょ 8
すばやさ 9
めいちゅう 11
かしこさ 15
----------------------------------------------------------------
地面に膝をつき、俺は腹の底から絞り出した色んなものを地面にぶちまけた。
そりゃあんなぐらぐらぐらぐら揺らされたらそうなるに決まってるじゃねえか!!
俺はしばらくその場から立ち上がることもままならず、芋虫のようにうずくまっていた。
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