最強になりたい奴が多すぎる

アゲインスト

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第一話 衝撃的な出会い

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 さて、それでは暫し御耳を拝借。
 国王ヴァリウスが治めしこの国において最も多くに広まりしは建国記に他なりませんが、それに迫るほど人々に知れ渡ったものとなればこの世界が神々の管理の下、様々な生命に満ちその平穏な時を謳歌していたという創世神話が挙げられるでしょう。
 これには後の時代において禁忌とされた存在――『邪神』が忽然とその姿を現した動乱期を纏めた封神決戦譚が納められた第二部がありますよね。
 あれには確かこんなことが書かれていました。
 
 ――強大な力を持つその禍つ神は数多の神を食いつくし、六大神の協力によって大陸の地下深くに封じられてもなおその邪なる意思衰えることなく。
 出現せしは邪神が尖兵、大地を汚す魔物たち。
 これに六大神、眷族の人族に加護を与え対抗する。
 そうして始まったこの大地の上で行われるこの果てのない代理戦争は――今現在も終わる気配もなく、お互いに一進一退の攻防を繰り広げているのだった――





「――というわけでして、この研究が完成すれば多くの方々に恩恵がもたらされることになり、我々人族のひいてはいと尊き神々の宿願を叶える一助となるはずです。
 だから研究費下さい」
「いや、だから無理だって言ってんじゃん」

 クソがっ……! 
 大して見もせずにそんなこと言いやがってこの頭でっかちの前例主義者め、それで何度僕の研究費申請を却下すれば気が済むんだ。
 などという内心でのあれやこれやをおくびにも出さず、媚びへつらった顔のまま腰を低くして交渉に挑む。

「そんなこと言わずにお願いしますよ教授ぅ」
「無理無理、この内容じゃここで成功する見込みはないよ」

 そういって研究内容をまとめた用紙を突き返してくる教授、その顔には面倒を持ち込んでくるなという思いが透けて見える。
 流石にこれ以上は交渉もなにも出来そうにないと考えた僕は渋々それを受けとる。
「はぁ……分かりました。今回は引き下がりましょう、ですがこの次も同じような対応が出来るとは思わないで下さいね!」
「諦めろって言わなかったっけ私?」

 だがこれはあくまで戦略的撤退だ。この次にこそ貴様の毛根が死滅するようなえげつないもんに仕上げて来てやるからな。首洗って待っていやがれ。
 最近寂しくなりだしたらしい教授の頭部に向けて邪念を送りつつ、表面上はそれをおくびにも出さない態度で部屋を後にした。

「あーあ、今回も許可おりなかったなー……神話の内容を盛り込んだ口当たりのいい内容だと思ったんだけどなぁ」

 無駄と分かっていてもぼやかずにはいられないのはこれで八回目の失敗だからだ。
 この通路も同じ回数通ってきたのだが、その度に胸に沸き上がる悔しさに慣れることができないでいる。
 考えるのはどこが良くなかったのか、相手の興味をどうすればもっと引き付けられたのかということばかり。

「焦るな、絶対に今度こそ……」
 ふとすれば暴れだしたくなる感情を抑えるべくあえて言葉にしながら無駄に長い廊下を歩く。そうしてだんだんと教師棟から離れいくうちに外からの喧騒が聞こえてくる。

「ああ、そういえばそういう時期か」
 いつもとは盛り上がり方に違いがあるなんて思ってみればそれもそのはず、もうすぐ祭りが始まる季節なのだからそりゃ騒がしくなるに決まってる。
 ……でも。

「正直嫌だなぁ……どうにか参加せずに済む方法はないものか」

 この学園で開催するのは祭りは祭りでも武闘祭の類いなんだよなぁ……。
 伊達に魔法学園を名乗っているわけではないということか、ここの授業や催しはそういう系のものが多い。
 このオズワルド魔法学園は魔法の開祖とされている《ミーティアス=ゲレネチア》の弟子の一人、《オズワルド=レイザネス》が興した由緒正しき歴史を持つ学園でる。その門戸は広く、また多くの魔法士を輩出し社会に貢献できる人材を教育してきた実績を誇る――のだが。

「……―――」
「うん?」
 そこまで思考を巡らしたところで何かしら気になる、というか、何というか。
 教室棟へと繋がる渡り廊下に出たことで歓声が増したせいかとも思ったが、しかしそれはそれとしてこう自分に向かって投げ掛けられているようなものが混ざっている感覚がする。
 もしや何か用でもあるのだろうか、しかしそんなことをしてきそうな人物に心辺りがないなと思いつつも渡り廊下から下を覗き込んでみる。
 ――その瞬間だった。

「――きゃあーーー!!」
「うぼぁッ!?」

 影――と認識する間もなく顔面に襲い掛かる衝撃と重量に思わず声を挙げ、首への激痛に呻く暇もなく後ろへ倒れ込み後頭部を強打する。
 明滅する視界を腹部への一撃が強制的に停止させ、僕は満身創痍の様相を呈して廊下に這いつくばることとなった。顔から落ちた眼鏡が遠くに落ちた音がする。

「いった~い……もう何すんのよあいつっ!」

 何がなんだと混乱する頭に入ってくる声、それは腹部に感じる重量体から発せられているようだった。
 おおよその正体に気が付いた僕は動かない体とくらくらとする頭の痛みを気合いで抑え込みどうにかその人物に訴えかける。

「おい……」
「あ」

 それでようやく尻の下にいる僕に思い至ったのだろう、焦りを滲ませた声と共にすぐさま退いてみせる。

「あーその、ほんとにごめん」
「まったくだよ……」

 謝罪の言葉を受けながら体を起こし、あちこち痛む体に呻き声を挙げる。若干ボヤける視界で眼鏡を探すために周りを見渡す僕を見てアワアワと慌てているような雰囲気を彼女から感じる。

「だ、大丈夫?」
「僕が食らった一連の攻撃をご自身で味わっていただきたい程度には大丈夫です」
「本当にごめんなさい……っていうか今回は私だけが悪いわけじゃないでしょうが!!」

 正直誰が悪いとかそんなことはどうでもいい、兎も角この理不尽に対する報復をしたくて堪らない心を宥めるのに忙しくて構っていられない。

「大体、避けてって言ったのに避けなかったあんたも悪いんじゃない!」
「……ああ、あれはあなただったんですか」

 こいつ言うことにかいてこの態度か……別に上から言うわけじゃないがもうちょっと悪ぶれてほしいものだしこれを逞しいとか宣う奴がここにいれば僕はそいつの首を尊敬の念を込めて握りしめていたことだろう。というかあの誰かに呼ばれているような感覚こいつだったのかよ。そんなことを思いながら彼女に視線を向けるが眼鏡がないせいで詳細なパーツがよく分からない。

「はっ、こうしちゃいられないわ! あの野郎よくもやってくれやがったわね! 再戦よ、このレイシア様が今度こそ完膚無く勝利やるわ」
 色々と言ってやりたいことはあれどそれを吐き出す相手はこっちのことなど御構い無しのようで。
 ぴょんと立ち上がった彼女は渡り廊下の縁を乗り越え階下へと飛び降りていく。

「私は絶対に――」

 何かしら熱い思いをお持ちのようだが正直この先に続く言葉が予想できる僕としては『ああ、こいつもそうか……』みたいな感想しか出てこない。たぶんだけどこの次絶対にこういうはずだ。

「――最強の魔法士になってみせるんだから!!」

 だろうな、クソが。
 ここに来てから耳が腐るほどに聞き飽きたそれ。
 ここはオズワルド魔法学園――より強き魔法士として最強を目指す生徒たちが鎬を削り合う――所謂、脳筋たちが集う場所なのである。

「……やっぱり来るとこ間違えたかな?」

 幾度と無く募る後悔の念がまた一つ、僕の中から涙と共に溢れ出していく。
 こんなことなら師匠の口車に乗るんじゃなかったと僕は思わずその時のことを思い返していた。
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