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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~
リーズ・ナブルは交渉する
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魔物の序列の話をした。
だから今度は人間の、人類というやつの序列を、地位やなんかではなく単純に力で話そうと思う。
時間もないので手早くしよう。
簡単にいってしまえば、俺たちも魔物とそう変わらない、ということだ。
強い魔物は強い魔力と強靭な肉体を持つ。俺たちもまた、生物として同じような特性を持っている。
だが多種多様な姿を持つ魔物と違って、肉体的にそこまで突出したところがない俺たち人間は、この魔力とやらで違いが出てくる。
『魔力の恩恵こそが人類を発展させた』
分厚い毛皮や鱗、鋭い爪や牙のない俺たち人類がこれまで生存できてきたのはまさにその言葉の通りである。
この力は、ときにどうしようもない采配をするのだ。
圧倒的強者というのを、なんの脈絡もなくそれは造り出すのだ。
「よくわかったじゃねぇの」
ユルゲンの堂々とした姿の後ろで、ホスキンスと受付嬢の狼狽えたような様子が見える。まあ、とんでもない話の連続だもんな。俺だって聞かされたらそうなる自信がある。
「で、どうすんだ」
背中を預けていた窓口から体を離し、彼はばしんとそこを叩く。
「依頼なら、俺は拒否しねぇさ。依頼ならな」
「・・・で、できるわけないでしょうそんなこと!!」
待ったを掛けたのはホスキンスだった。勢い余ってか壁の向こうから身を乗り出さんばかりだ。
「確かに事態は急を要しますが、不確定な情報が多すぎる! 魔物の正体がわからない以上、いくらユルゲンさんといえ、魔鋼級の冒険者といえ! 高位の魔物であればそれは人間にとってあまりにも大きく危険な存在です!!」
ごもっとも。
まったくもってごもっともだ。でもそれを俺は許容できない。
そんな危険な奴に、俺の元部下たちが立ち向かっているんだ。なんとしてでもついてきてもらうぞ。
「ユルゲンさん。あんたにとって決して悪い話じゃない」
「えー、そうは言ってもなー。改めて考えたら怖いしなーさすがの俺でもー」
ちっ、ふざけた態度とりやがってこの筋肉野郎。てめぇーはそんなタマじゃねぇだろうが。
だが実際、どうこういったところでこいつに動いてもらわなきゃならんのだ。四の五の言ってられない。切れる手札は効果的に切る。それがどんな手札でもな。
「・・・実力を示す」
「ん?」
「あんたが言った俺の実力が見たいってのを、実戦で見せてやるっていってるんだ」
この男の興味を誘うには、これが一番手っ取り早い。
「ほう・・・!」
案の定、目を輝かせて期待通りの反応を見してくれる。
「そんな危険な」
「乗った!!」
「ええ!?」
副長の制止の声など意に介さず、このマッシブは面白そうだという理由であっさりと戦闘区域にいくことを決めた。ヤル気満々といった顔で筋肉の躍動を隠そうともしない。
「ユルゲンさん危険です!!」
「このまま見過ごすのは危険じゃねぇのかい」
「それはそうですが・・・! せめてもう少し人員を!」
ホスキンスの顔は不安で歪み、流れる汗が彼の緊張を物語っている。彼もわかってはいるのだ。どんなことを言おうとも、倒す以外の選択肢はない。それでも心配しているのは万が一のことを考えてだ。
ユルゲンはこの王都でも一握りの存在だ。魔鋼級というのはそういった存在であり、替えの利かない最終防衛戦力で、ギルドの顔だ。
そいつがもしも、なんて考えれば臆病になりすぎてもしょうがないだろう。
「かまわねぇよ」
だが、それで止まるようならこの男は高ランク冒険者と呼ばれはしない。
「危険に飛び込んでなんぼだろうが、俺たち冒険者はよ」
結局の所、そういう人間なのだ。ユルゲン・ハワードという男は。
自らに宿った力を存分に振るう機会なぞ、それこそ自分で探さなければこの人類圏には存在しない。国に仕える人間ではできない選択をするために、この男は危険と隣り合わせのギルドの仕事に身を置いている。
それが、『業拳』という二つ名でもって表されている。
「好きなことして何が悪ぃんだ?」
好奇心とは人の性。
あらゆる危険に身を浸し、あらゆる魔物の命を屠ってきた。
故に『業拳』。
命を絶つ業の拳を持つからという、そのままのネーミングは彼そのものの本質を示していた。
「いくぜ俺は」
これ以上の言葉は要らない。
そんなユルゲンの様子ホスキンスは頭を抱えるようにしてみせる。諦めた、というところだろうことが簡単過ぎるくらいに伺える。
そして彼はため息を吐いて、しぶしぶといった感じで書類を取り出している。
「・・・もういいです止めません。依頼書はこちらで形にしておきますから、さっさと行ってきてください」
「わりーなホスキンス! 帰ったら飲みに誘うからよ、それで勘弁してくれや」
「全くですよ。いつも心配するこちらのことをもっと考えてください。無茶ばっかするんですから」
全く。全く全く。
と呟きながらも、手を止めることはない。
ギルドで二番目に偉い人がここまでするのは、彼を信用しているからだろう。
だから、勇気をもって送り出すのだ。
いつだって、彼にできるのはそれだけで、そして。
「無事の帰還を」
いつだって、笑って冒険者が帰ってくるのを願っているのだから。
「リーズさんを頼みますよ。くれぐれも新人を怪我させないように」
「だれにもの言ってやがる! 俺はユルゲン・ハワードだ!!」
名前を叫ぶだけ、それだけでギルドの館内は歓声で沸き上がる。
英雄の出陣に、これ以上ないほどの後押しだった。
「翔ばしていくぜ。新人」
「ご指導のほどよろしくお願いしますよ。先輩」
掛け合いもそこそこ、俺たちはギルドの門を潜り抜けた。
向かうはヘンブロ森林。
敵目標、高位の魔物。種類不明。脅威不明。
勝利条件、殲滅
だから今度は人間の、人類というやつの序列を、地位やなんかではなく単純に力で話そうと思う。
時間もないので手早くしよう。
簡単にいってしまえば、俺たちも魔物とそう変わらない、ということだ。
強い魔物は強い魔力と強靭な肉体を持つ。俺たちもまた、生物として同じような特性を持っている。
だが多種多様な姿を持つ魔物と違って、肉体的にそこまで突出したところがない俺たち人間は、この魔力とやらで違いが出てくる。
『魔力の恩恵こそが人類を発展させた』
分厚い毛皮や鱗、鋭い爪や牙のない俺たち人類がこれまで生存できてきたのはまさにその言葉の通りである。
この力は、ときにどうしようもない采配をするのだ。
圧倒的強者というのを、なんの脈絡もなくそれは造り出すのだ。
「よくわかったじゃねぇの」
ユルゲンの堂々とした姿の後ろで、ホスキンスと受付嬢の狼狽えたような様子が見える。まあ、とんでもない話の連続だもんな。俺だって聞かされたらそうなる自信がある。
「で、どうすんだ」
背中を預けていた窓口から体を離し、彼はばしんとそこを叩く。
「依頼なら、俺は拒否しねぇさ。依頼ならな」
「・・・で、できるわけないでしょうそんなこと!!」
待ったを掛けたのはホスキンスだった。勢い余ってか壁の向こうから身を乗り出さんばかりだ。
「確かに事態は急を要しますが、不確定な情報が多すぎる! 魔物の正体がわからない以上、いくらユルゲンさんといえ、魔鋼級の冒険者といえ! 高位の魔物であればそれは人間にとってあまりにも大きく危険な存在です!!」
ごもっとも。
まったくもってごもっともだ。でもそれを俺は許容できない。
そんな危険な奴に、俺の元部下たちが立ち向かっているんだ。なんとしてでもついてきてもらうぞ。
「ユルゲンさん。あんたにとって決して悪い話じゃない」
「えー、そうは言ってもなー。改めて考えたら怖いしなーさすがの俺でもー」
ちっ、ふざけた態度とりやがってこの筋肉野郎。てめぇーはそんなタマじゃねぇだろうが。
だが実際、どうこういったところでこいつに動いてもらわなきゃならんのだ。四の五の言ってられない。切れる手札は効果的に切る。それがどんな手札でもな。
「・・・実力を示す」
「ん?」
「あんたが言った俺の実力が見たいってのを、実戦で見せてやるっていってるんだ」
この男の興味を誘うには、これが一番手っ取り早い。
「ほう・・・!」
案の定、目を輝かせて期待通りの反応を見してくれる。
「そんな危険な」
「乗った!!」
「ええ!?」
副長の制止の声など意に介さず、このマッシブは面白そうだという理由であっさりと戦闘区域にいくことを決めた。ヤル気満々といった顔で筋肉の躍動を隠そうともしない。
「ユルゲンさん危険です!!」
「このまま見過ごすのは危険じゃねぇのかい」
「それはそうですが・・・! せめてもう少し人員を!」
ホスキンスの顔は不安で歪み、流れる汗が彼の緊張を物語っている。彼もわかってはいるのだ。どんなことを言おうとも、倒す以外の選択肢はない。それでも心配しているのは万が一のことを考えてだ。
ユルゲンはこの王都でも一握りの存在だ。魔鋼級というのはそういった存在であり、替えの利かない最終防衛戦力で、ギルドの顔だ。
そいつがもしも、なんて考えれば臆病になりすぎてもしょうがないだろう。
「かまわねぇよ」
だが、それで止まるようならこの男は高ランク冒険者と呼ばれはしない。
「危険に飛び込んでなんぼだろうが、俺たち冒険者はよ」
結局の所、そういう人間なのだ。ユルゲン・ハワードという男は。
自らに宿った力を存分に振るう機会なぞ、それこそ自分で探さなければこの人類圏には存在しない。国に仕える人間ではできない選択をするために、この男は危険と隣り合わせのギルドの仕事に身を置いている。
それが、『業拳』という二つ名でもって表されている。
「好きなことして何が悪ぃんだ?」
好奇心とは人の性。
あらゆる危険に身を浸し、あらゆる魔物の命を屠ってきた。
故に『業拳』。
命を絶つ業の拳を持つからという、そのままのネーミングは彼そのものの本質を示していた。
「いくぜ俺は」
これ以上の言葉は要らない。
そんなユルゲンの様子ホスキンスは頭を抱えるようにしてみせる。諦めた、というところだろうことが簡単過ぎるくらいに伺える。
そして彼はため息を吐いて、しぶしぶといった感じで書類を取り出している。
「・・・もういいです止めません。依頼書はこちらで形にしておきますから、さっさと行ってきてください」
「わりーなホスキンス! 帰ったら飲みに誘うからよ、それで勘弁してくれや」
「全くですよ。いつも心配するこちらのことをもっと考えてください。無茶ばっかするんですから」
全く。全く全く。
と呟きながらも、手を止めることはない。
ギルドで二番目に偉い人がここまでするのは、彼を信用しているからだろう。
だから、勇気をもって送り出すのだ。
いつだって、彼にできるのはそれだけで、そして。
「無事の帰還を」
いつだって、笑って冒険者が帰ってくるのを願っているのだから。
「リーズさんを頼みますよ。くれぐれも新人を怪我させないように」
「だれにもの言ってやがる! 俺はユルゲン・ハワードだ!!」
名前を叫ぶだけ、それだけでギルドの館内は歓声で沸き上がる。
英雄の出陣に、これ以上ないほどの後押しだった。
「翔ばしていくぜ。新人」
「ご指導のほどよろしくお願いしますよ。先輩」
掛け合いもそこそこ、俺たちはギルドの門を潜り抜けた。
向かうはヘンブロ森林。
敵目標、高位の魔物。種類不明。脅威不明。
勝利条件、殲滅
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