リーズ・ナブルは此れにて御免 ~ 元軍人付与士は冒険者として成り上がる~

アゲインスト

文字の大きさ
11 / 109
ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~

リーズ・ナブルの参戦

しおりを挟む
 正直に言おう。
 正直に、間一髪であったと。
 全力を出しても追い付けないユルゲンの身体能力に頬をひきつらせていたとき、目標であろう魔物の存在に遠目から気づいた俺は咄嗟にユルゲンに頼んで投げ飛ばしてもらったのだ。
 コントロールは抜群で、申し分ない威力で目標の顔面にぶち当たった。その結果、ミンチになる寸前のハナセを救出することができたのだった。
 内心の冷や汗を全力で隠しながら、俺はハナセに向き直る。
 
「悪い、おそk」
「先輩!!」
 
 おっと。
 疲労と負傷でよれよれのくせに、やけに機敏に抱きついてきやがった。こんなことしてる場合じゃなかろうに。この野郎。
 
「離せ、おい」
「はい! なんっすか!」
「いやだから離せって」
「そうっす俺っす!」
「ハナセじゃねぇよ! 離せって言ってんだよこの野郎!!」
「そんなに連呼しなくったって俺は無事ですよ先輩!!」
「だから違うって言ってんだろうが!!!」
 
 あー鬱陶しい!!
 無理矢理引き剥がしたらそのまま倒れ込みやがった。こんなところで変な気力使わせんじゃねぇよまったく。
 
「さて」
 
 気が抜けて気絶したハナセを置いておいて、まずはお嬢様に確認を取らなくては。ちょうど背後におられたみたいで探す手間が省ける。
 
「ラインホード嬢・・・おい、聞いてんのか」
「・・・はっ、あっ! ああ、聞いているぞもちろんだ!!」
 
 ・・・なんだ。やけに赤い顔をして、鼻を押さえている。さっきの突風で怪我でもしたのか?
 目立った外傷はそこまでないし、心配はそこまでいらんだろう。
 
「あの魔物の能力を知りたい。どこまでわかっている」
「・・・聞いてどうする」
「勿論倒す」
「無理だ!!」
 
 赤くなっていた顔を今度は青く染め、ボロボロの体を引きずって近づいてくる。彼女のいうことも間違っているわけではないが、それは前提条件が違う。勝算がなければ戦おうなんて思わん、こんなデカブツ。
 
「確かに俺だけじゃ無理だな。さすがは高位の魔物だ、あんだけぶっ飛ばしたのにまるで堪えてない。もう立ち上がるだろう」
「そうだ! あの固い鱗にはどうやったって太刀打ちできん!」
「そうだな。だから呼んだんだ、スペシャルゲストをな」
 
 なんて言っている間にも、魔物は体勢を立て直し始めていた。乱入者に対する怒りでこちらを睨み付ける瞳は爛々と輝いている。
 これからってところを邪魔されて、さぞやご立腹でしょうな。
 
「そんじゃあ先輩、お願いします」
「---まかっせなぁあああああああ!!!」
 
 俺を投げ飛ばし先行させていた大先輩、ユルゲン・ハワードが突風を纏って駆け抜けていく。そして勢いそのままに飛び上がったかと思えば俺を投げ飛ばしたときと同じようなところに拳を叩き込んでいた。
 
「だらっせい!!」
「---ッGOGYAAAAAAAA!!!」
 
 わーお、やりおるわ。
 豪腕一閃、叩きつけた一撃は容易く魔物の頭を殴り抜いて後ろに仰け反らせる。
 その光景にお嬢様は言葉をなくす。
 
「かってぇええ!? 固いぞこいつ!!」

 嬉しそうにそういいながら、さらに殴りかかっていくユルゲンのことを見ながら、俺はこの魔物の特徴をつぶさに観察していくことに集中していた。
 
 ユルゲンの戦い方は単純なものだ。
 強化した肉体で相手をボコ殴りにする。それだけなのがとにかく強い。本来であれば容易く対象を破壊しているであろう拳を受けて、それでも倒れないあいつが異常なのだ。
 
「さすがは、といったところか」
 
 さすがは高位の魔物。
 同じく高ランクと言われても、人間とはやはり開きはあるものだ。
 だから、ここからが俺の仕事だ。
 
「おい、あんた」
「・・・・・・」
「・・・ったく。レティア=ラインホード!!」
「はっ!? な、なんだ!?」
「とりあえず、あの魔物の名前を決めよう。そうじゃなきゃやる気が起きん」
「やる気ってお前・・・」
「名無しの命を奪って満足か? あんたをこんな風にした相手が名無しで満足か? 納得いく勝利を迎えられるか?」
 
 貴族というのは厄介だ。
 こいつらはまず名誉というやつがなければ生きていけない。それがなんであれ、名前のない存在なんて相手にして満足がいくとは思わない。納得もしないと俺は考えている。
 
「あいつは俺も見たことがない魔物だ。森の深部から出てきただろうから誰もがそうだと思う。ここで一番偉いのはあんただ。だから、あんたにあの魔物の名前を決めてもらう」
 
 倒すのは俺たちだが、その功績はこのお嬢様のものにするつもりだ。わざわざ軍から出てきたというのに目立つこともないからな。全部この人におっ被ってもらおう。
 そんな思惑を隠しながらそう告げれば、お嬢様は少し考えた末、こう呟いた。
 
「・・・ジャバオック」
「そいつが名前か?」
「昔、姉に読んでもらった本に出てきた怪物だ」
「ほーん。いいんじゃねぇか。ぴったりだ」
 
 現実的じゃない、という点も含めてぴったりだ。こんな化け物にはそのくらいの名前が妥当だろう。
 さて。
 
「対象、高位魔物『ジャバオック』。戦闘評価Sと認定し、支援部隊第二部隊元隊長、リーズ・ナブル。これより戦線へと参加する」
 
 俺の戦いを開始しよう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...