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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~
リーズ・ナブルはそれから家に誘われる
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それからの話をしよう。
俺とリティアが友達になり、彼女の助けになることを約束した、それからの話だ。
気が緩んでしまったのか、彼女は大いに泣いてしまい、それを慰めるのにとても大変だった。
女性を慰めるなんて経験はないもんだから、どうにも小さい子供を泣き止ませるみたいにしてしまった。突然のことに慌ててしまったこともあってそれなりに時間が掛かったが、何度も声をかけ体を擦ってやり、どうにか泣き止ませることができたのだった。
そして改めて、俺たちは話をするのだった。
目元を赤く腫らしたリティアは先ほどの自分の醜態が恥ずかしいのか、テーブルの上に上半身をベッタリと伏せてしまっている。隙間からブツブツと、小声で何やら呟いているがきちんとした文章でないようで意味がわからない。
「気にするなよ。ここには俺しかいないし、誰にもしゃべらないからよ」
「そういう問題ではない!!」
勢いよく体を起こしてこちらに、きっ! っと視線を向けてくる。
俺の度重なる慰めが逆に働いてしまったのか、羞恥に染まった顔にさらに怒りをブレンドさせて逆上させてしまった。
「恥ずかしいことじゃないって、そのくらい年頃の娘なら全然珍しくない立派な葛藤だった。いい感情の発露だった」
「だがっ! だが・・・ううぅ・・・!!!」
とても貴族の娘とは思えないような身の振る舞い。頭をかきむしり髪を振り乱し、取り乱すというのが相応しい有り様であった。
貴族の仮面を投げ捨てた、年相応の、可愛らしい反応である。
「ほら、もういいだろ。機嫌直せよ」
グリグリと頭を撫で回し、気分を落ち着かせるようにしてやれば徐々におとなしくなっていき、かきむしっていた手を下ろす。
「・・・すまない」
「いいよ」
お互いに冷静になったところで、話をこれからのことに移す。真剣な顔をするこちらの様子に、彼女も座りを直して聞く体勢になった。
「さて、どうするんだ。俺は君のやりたいことに、全力で協力するぜ?」
いつもであれば面倒だなんだといって逃げるのだが、こと今回においてそんな無責任なことはしたくない。焚き付けたのは俺自身なのだ。最後まで付き合うのが妥当なところだろう。
「・・・お前のいう通りだと、私は思う。確かに私は見えていなかった。知ろうとしなかった。一人で空回っていただけなのかもしれない。
実際に、本当のことを聞いたわけではないのだ。思い込んでいただけかもしれない。本当はお前のいったような真実が、私の家族にはあったのかもしれない」
だから。
「頼む、リーズ。真実に立ち向かう勇気のない私を、どうか支えてほしい」
それまでの葛藤を拭い去り、毅然とした態度できっぱりと言ってのけた。そこには一点の曇りのない、実に晴れやかな瞳でこちらを見つめる、少女から一段成長したレティアの真っ直ぐな表情。
勇気のないと語る彼女は、しかし、確かな覚悟をその身に宿したのだった。
その姿に、俺はもう心配する必要がないことを確信する。
「リーズ。私はこれから父の居る家へといくつもりだ。そこには姉もいるだろう。二人から真実を聞きにいく。そこにお前もついて来てくれないか」
「合点承知だ、付き合うよ。まあ、ついてくるなと言われても、ついていくつもりだったがな」
「ふん。もしそんなことをしたら家の兵士に捕縛されてしまうぞ?」
「そんときはこういうさ。『俺はお宅のお嬢様の友達なんです』ってな」
「なるほど。それなら助けないわけにはいかないな。なにせ友達だからな」
「ああ、友達だからな」
そうやって、おかしくなって二人して笑いだす。
ふふふ。
あはは。と。
そして腹を抱えてひとしきり笑いあったら、合図をすることもなく同時に立ち上がった。
「行くぞ」
「あいよ」
そうして彼女を先頭に、俺たちは個室の扉を開いて表を目指す。
聞こえてくる喧騒が、多くの客が来ていることを知らしてくれる。そのくらいには時間が経っていることをここで理解した。
奥から出てきた俺たちに集まる視線をよそに、俺は厨房で鍋を振るうハンスに向かって呼び掛ける。
「ハンス! あとよろしく! ちょっと用事があるからツケといてくれ!」
「・・・お嬢ちゃんに免じて許してやる!」
「ありがとな!」
そこでちょっとだけ悪戯心が働いた俺は、わざとらしく自分の目元を指差してやる。
それを見たハンスは疑問げな表情をするが、ニヤリとした俺の顔になにかあるのかと手を止める。
「目尻赤いぜ」
「なっ・・・!」
じゃあな。と手を振りながら、慌てたように目元を隠すハンスの元を後にする。
先に外に出て待っていたリティアの元に向かう。
「何をやっていたのだ?」
「いや、ハンスに挨拶をな。後、ちょっとした釘刺し」
「? ・・・まあいい。私の家まで少し遠い、一旦城まで戻るぞ」
「あいよー」
盗み聞きしてもらい泣きしていたハンスに、そんなことするんじゃねぇぞという意味を込めてバレバレだってことを教えてやったのだ。
まあ、個室の様子が気になって来たけれど、入るに入れずそのまま聞き続けてしまったんだろうが、誤魔化すならもうちょい上手くするんだな。
そんなことを考えながら王城まで行こうとしたら、歩き出す俺たちの前に、どうみても貴族御用達としか見えないような高級仕様の馬車が止まる。
城下町の奥にくるような代物ではないそれには、これまた立派な紋章が取り付けてあり。
不意に御者が駆け寄り扉が開いた思えば、そこには威厳に溢れた白髪混じりのオールバックの男が、鋭い眼光でこちらを見つめてくるのだった。
「・・・御父様」
「探したぞ、リティア」
なんの脈絡もなく現れたこの御仁は、信じられないことなのだが、リティアの反応を見る限り、どうにもそういうことらしい。
リティアの父親であり、ラインホード家現当主。
言うなればラスボスが奇襲を仕掛けてきたみたいに、俺たちの前に現れたのだった。
俺とリティアが友達になり、彼女の助けになることを約束した、それからの話だ。
気が緩んでしまったのか、彼女は大いに泣いてしまい、それを慰めるのにとても大変だった。
女性を慰めるなんて経験はないもんだから、どうにも小さい子供を泣き止ませるみたいにしてしまった。突然のことに慌ててしまったこともあってそれなりに時間が掛かったが、何度も声をかけ体を擦ってやり、どうにか泣き止ませることができたのだった。
そして改めて、俺たちは話をするのだった。
目元を赤く腫らしたリティアは先ほどの自分の醜態が恥ずかしいのか、テーブルの上に上半身をベッタリと伏せてしまっている。隙間からブツブツと、小声で何やら呟いているがきちんとした文章でないようで意味がわからない。
「気にするなよ。ここには俺しかいないし、誰にもしゃべらないからよ」
「そういう問題ではない!!」
勢いよく体を起こしてこちらに、きっ! っと視線を向けてくる。
俺の度重なる慰めが逆に働いてしまったのか、羞恥に染まった顔にさらに怒りをブレンドさせて逆上させてしまった。
「恥ずかしいことじゃないって、そのくらい年頃の娘なら全然珍しくない立派な葛藤だった。いい感情の発露だった」
「だがっ! だが・・・ううぅ・・・!!!」
とても貴族の娘とは思えないような身の振る舞い。頭をかきむしり髪を振り乱し、取り乱すというのが相応しい有り様であった。
貴族の仮面を投げ捨てた、年相応の、可愛らしい反応である。
「ほら、もういいだろ。機嫌直せよ」
グリグリと頭を撫で回し、気分を落ち着かせるようにしてやれば徐々におとなしくなっていき、かきむしっていた手を下ろす。
「・・・すまない」
「いいよ」
お互いに冷静になったところで、話をこれからのことに移す。真剣な顔をするこちらの様子に、彼女も座りを直して聞く体勢になった。
「さて、どうするんだ。俺は君のやりたいことに、全力で協力するぜ?」
いつもであれば面倒だなんだといって逃げるのだが、こと今回においてそんな無責任なことはしたくない。焚き付けたのは俺自身なのだ。最後まで付き合うのが妥当なところだろう。
「・・・お前のいう通りだと、私は思う。確かに私は見えていなかった。知ろうとしなかった。一人で空回っていただけなのかもしれない。
実際に、本当のことを聞いたわけではないのだ。思い込んでいただけかもしれない。本当はお前のいったような真実が、私の家族にはあったのかもしれない」
だから。
「頼む、リーズ。真実に立ち向かう勇気のない私を、どうか支えてほしい」
それまでの葛藤を拭い去り、毅然とした態度できっぱりと言ってのけた。そこには一点の曇りのない、実に晴れやかな瞳でこちらを見つめる、少女から一段成長したレティアの真っ直ぐな表情。
勇気のないと語る彼女は、しかし、確かな覚悟をその身に宿したのだった。
その姿に、俺はもう心配する必要がないことを確信する。
「リーズ。私はこれから父の居る家へといくつもりだ。そこには姉もいるだろう。二人から真実を聞きにいく。そこにお前もついて来てくれないか」
「合点承知だ、付き合うよ。まあ、ついてくるなと言われても、ついていくつもりだったがな」
「ふん。もしそんなことをしたら家の兵士に捕縛されてしまうぞ?」
「そんときはこういうさ。『俺はお宅のお嬢様の友達なんです』ってな」
「なるほど。それなら助けないわけにはいかないな。なにせ友達だからな」
「ああ、友達だからな」
そうやって、おかしくなって二人して笑いだす。
ふふふ。
あはは。と。
そして腹を抱えてひとしきり笑いあったら、合図をすることもなく同時に立ち上がった。
「行くぞ」
「あいよ」
そうして彼女を先頭に、俺たちは個室の扉を開いて表を目指す。
聞こえてくる喧騒が、多くの客が来ていることを知らしてくれる。そのくらいには時間が経っていることをここで理解した。
奥から出てきた俺たちに集まる視線をよそに、俺は厨房で鍋を振るうハンスに向かって呼び掛ける。
「ハンス! あとよろしく! ちょっと用事があるからツケといてくれ!」
「・・・お嬢ちゃんに免じて許してやる!」
「ありがとな!」
そこでちょっとだけ悪戯心が働いた俺は、わざとらしく自分の目元を指差してやる。
それを見たハンスは疑問げな表情をするが、ニヤリとした俺の顔になにかあるのかと手を止める。
「目尻赤いぜ」
「なっ・・・!」
じゃあな。と手を振りながら、慌てたように目元を隠すハンスの元を後にする。
先に外に出て待っていたリティアの元に向かう。
「何をやっていたのだ?」
「いや、ハンスに挨拶をな。後、ちょっとした釘刺し」
「? ・・・まあいい。私の家まで少し遠い、一旦城まで戻るぞ」
「あいよー」
盗み聞きしてもらい泣きしていたハンスに、そんなことするんじゃねぇぞという意味を込めてバレバレだってことを教えてやったのだ。
まあ、個室の様子が気になって来たけれど、入るに入れずそのまま聞き続けてしまったんだろうが、誤魔化すならもうちょい上手くするんだな。
そんなことを考えながら王城まで行こうとしたら、歩き出す俺たちの前に、どうみても貴族御用達としか見えないような高級仕様の馬車が止まる。
城下町の奥にくるような代物ではないそれには、これまた立派な紋章が取り付けてあり。
不意に御者が駆け寄り扉が開いた思えば、そこには威厳に溢れた白髪混じりのオールバックの男が、鋭い眼光でこちらを見つめてくるのだった。
「・・・御父様」
「探したぞ、リティア」
なんの脈絡もなく現れたこの御仁は、信じられないことなのだが、リティアの反応を見る限り、どうにもそういうことらしい。
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