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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの馬事《まこと》騒ぎ~
一回戦から side ケイン
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一回戦が始まった。
それぞれの門から出てきたのは「青き鬣」に所属してはいないただの冒険者である。
真剣にやってはいるのだろうが、僕からしたらどこにも見所はない。
どっちもぜんぜんなっちゃいないね。こんな奴らの戦いを見ても何も得るものなんてないのに。
でも自分の番が来るまではこのつまらない戦いを見ていなければならない。流石に僕にだってこんな所で暴れるようなことをするほど愚かじゃないさ。
それに、そんなことをしようものなら後ろの奴に止められてしまうだろうからね。
「やあ、始めまして」
「……」
「おいおい挨拶くらいは返してほしいな」
後ろから僕のことを見ているのは、副長が言っていたお父さんに匹敵するとかいう噂の剣士だ。
こいつも僕と同じように目の前の試合を見ているけれど、その意識の一部は僕に向けられている。
最初にその姿を捉えられた時から、こいつからの警戒のような視線を感じているんだ。これに気付かないようじゃ戦士としては二流もいいところだろうね。
「目深に被ったそのフードの奥には、一体どんな顔があるんだろうね。ちょっと見せてよ」
「……」
やれやれ、だんまりか。
さっきから話しか掛けたり殺気を向けたりしてるんだけど、どうやっても反応してくれない。
そのせいでこの男について何も分からないのだ。
どうすれば怒るのか、とか。
殺気にはどう反応するのか、とか。
そういった、戦う上で利用できそうなこの男の性質について全く情報がない。
このフード男を倒さないと、僕はクランの長にはなれないのだから。正直優勝には興味がないぐらいである。
「そこまで警戒しないでさ、楽しくお話しようよ。今日はこんなにいい日なんだ、そんなに黙ってばかりじゃ気が滅入っちゃうよ」
そのため、何に反応するかは数を打って確かめるしかなく。
そろそろ決着が着こうとしている一回戦の戦いについての意見を交えつつ、どうにか素性を探ろうと話し掛けるのを続けるのだった。
一回戦。剣士同士の戦いは、僅差でケイン達がいる方の東門の選手が勝利した。
ケインにとっては次の相手が決まったということである。
「さて、いくかな」
一回戦の結果を見届けたケインは自分の初戦である二回戦へ向けて門の方へと向かうことにした。
勝敗が決するまでの間、フード男に話し掛けることを続けたが芳しい結果は得られなかったケインはそれ以上の詮索はやめて直接対決まで出来るだけ情報を与えないようにすることにした。
背後にいたフード男は枯れ木のように静かで、周りの影響などまるで受け付けないようだった。
真っ直ぐに目の間を見据え微動だにしない。
この手の相手に手の内を見せるようなことをすれば例え自分より弱い相手だろうと隙を突かれてしまうだろうことは簡単に想像できる。それが自分と同じかそれ以上の相手ならば、尚更である。
この男が強いというのはその佇まいから理解できたが、どれ程の力量を持っているかなどは分からず仕舞いだ。
武器もそこまで特別な物、ということはないような普通の長剣であることから、正道邪道ありとあらゆる戦い方を想像できてしまう。
まずはその戦力の一端でも見ることができれば、そこから勝ち筋を導くことができるはず。
そのためにも、まずは自分の力をある程度理解してもらおう。
そういった思惑の元、ケインは自分の試合へと望む。対面の門には自分の相手となる者の姿が見えている。相手の武器が槍であることを確認したケインはどうやって戦いを演出するかのプランがおおまかにだが出来上がっていた。
にやりとした笑みを浮かべたケインは、司会の呼び掛けに応じて会場の中央へと進む。
相手との距離がある程度の所まで近づいたので、試合の形式に従い武器を構える。
「それでは第二試合、東ケイン・ガーゼル対西パイク・ヤード。始めぇえ!!」
戦いはすぐに始まった。
十六人という人数のお陰で進行はスムーズに行われる。
最大で十五試合もするのだ、短縮できるところはしようというところか。
ケインは相手が槍を前に構えて突進してくるのに合わせて自身の剣を振るう。突進の速度を乗せた刺突は鋭く、確かに脅威ではあろう。
しかし、それは通常の戦士に限っての話だ。
「はぁっ!……あ?」
「悪いね」
身体強化。
若くしてクラン三位という地位にケインを位置付けている、ただの戦士とは一線を画す力である。
それは体格に勝る相手の渾身の一突きさえ剣の一振りで容易く防ぎ、
「あんたじゃ僕に勝てないよ」
「馬鹿にする――」
ブンっ!!
相手の抵抗を置き去りにし、一瞬にして腹部を拳で打ち付け吹き飛ばす。
驚愕に声を挙げることもできず、突進してきた以上の距離を吹き飛ばされた槍使いは、あまりの衝撃によってそのまま意識を失ってしまった。
その様子に満足したケインは剣を仕舞い、自分が来た方の門へと帰っていく。
「しょ、勝者ケイン・ガーゼル!」
あまりにも早すぎる決着に、どう反応したらいいかと観客は困惑してしまう。
意識を失ったパイクが控えていたギルド員に数名に運ばれていくのを見ながら、住民たちは改めてケインのその実力を認識するのだった。
門から出たケインは選手たちからの視線を気にすることなく、フードの男に向かっていく。
目の前にその男を見据え、ケインは言葉を掛ける。
「あんたと当たるのは準決勝だ。そのときはそのフードの奥、明かしてもらおうか」
フードの男は、それに答えることなく次の自分の試合に向けて門へと歩いていってしまった。
その様子に周りの選手も薄気味悪いものを感じていたが、皆口にだすようなことはなかった。
「ふーん……まあいいや」
ケインとしても、もう言葉でどうこうしようとは考えてはいない。
見せてもらおうか、父に匹敵するという実力を。
ケインはまた、不適な笑みを浮かべ次の試合の観戦を始めるのだった。
それぞれの門から出てきたのは「青き鬣」に所属してはいないただの冒険者である。
真剣にやってはいるのだろうが、僕からしたらどこにも見所はない。
どっちもぜんぜんなっちゃいないね。こんな奴らの戦いを見ても何も得るものなんてないのに。
でも自分の番が来るまではこのつまらない戦いを見ていなければならない。流石に僕にだってこんな所で暴れるようなことをするほど愚かじゃないさ。
それに、そんなことをしようものなら後ろの奴に止められてしまうだろうからね。
「やあ、始めまして」
「……」
「おいおい挨拶くらいは返してほしいな」
後ろから僕のことを見ているのは、副長が言っていたお父さんに匹敵するとかいう噂の剣士だ。
こいつも僕と同じように目の前の試合を見ているけれど、その意識の一部は僕に向けられている。
最初にその姿を捉えられた時から、こいつからの警戒のような視線を感じているんだ。これに気付かないようじゃ戦士としては二流もいいところだろうね。
「目深に被ったそのフードの奥には、一体どんな顔があるんだろうね。ちょっと見せてよ」
「……」
やれやれ、だんまりか。
さっきから話しか掛けたり殺気を向けたりしてるんだけど、どうやっても反応してくれない。
そのせいでこの男について何も分からないのだ。
どうすれば怒るのか、とか。
殺気にはどう反応するのか、とか。
そういった、戦う上で利用できそうなこの男の性質について全く情報がない。
このフード男を倒さないと、僕はクランの長にはなれないのだから。正直優勝には興味がないぐらいである。
「そこまで警戒しないでさ、楽しくお話しようよ。今日はこんなにいい日なんだ、そんなに黙ってばかりじゃ気が滅入っちゃうよ」
そのため、何に反応するかは数を打って確かめるしかなく。
そろそろ決着が着こうとしている一回戦の戦いについての意見を交えつつ、どうにか素性を探ろうと話し掛けるのを続けるのだった。
一回戦。剣士同士の戦いは、僅差でケイン達がいる方の東門の選手が勝利した。
ケインにとっては次の相手が決まったということである。
「さて、いくかな」
一回戦の結果を見届けたケインは自分の初戦である二回戦へ向けて門の方へと向かうことにした。
勝敗が決するまでの間、フード男に話し掛けることを続けたが芳しい結果は得られなかったケインはそれ以上の詮索はやめて直接対決まで出来るだけ情報を与えないようにすることにした。
背後にいたフード男は枯れ木のように静かで、周りの影響などまるで受け付けないようだった。
真っ直ぐに目の間を見据え微動だにしない。
この手の相手に手の内を見せるようなことをすれば例え自分より弱い相手だろうと隙を突かれてしまうだろうことは簡単に想像できる。それが自分と同じかそれ以上の相手ならば、尚更である。
この男が強いというのはその佇まいから理解できたが、どれ程の力量を持っているかなどは分からず仕舞いだ。
武器もそこまで特別な物、ということはないような普通の長剣であることから、正道邪道ありとあらゆる戦い方を想像できてしまう。
まずはその戦力の一端でも見ることができれば、そこから勝ち筋を導くことができるはず。
そのためにも、まずは自分の力をある程度理解してもらおう。
そういった思惑の元、ケインは自分の試合へと望む。対面の門には自分の相手となる者の姿が見えている。相手の武器が槍であることを確認したケインはどうやって戦いを演出するかのプランがおおまかにだが出来上がっていた。
にやりとした笑みを浮かべたケインは、司会の呼び掛けに応じて会場の中央へと進む。
相手との距離がある程度の所まで近づいたので、試合の形式に従い武器を構える。
「それでは第二試合、東ケイン・ガーゼル対西パイク・ヤード。始めぇえ!!」
戦いはすぐに始まった。
十六人という人数のお陰で進行はスムーズに行われる。
最大で十五試合もするのだ、短縮できるところはしようというところか。
ケインは相手が槍を前に構えて突進してくるのに合わせて自身の剣を振るう。突進の速度を乗せた刺突は鋭く、確かに脅威ではあろう。
しかし、それは通常の戦士に限っての話だ。
「はぁっ!……あ?」
「悪いね」
身体強化。
若くしてクラン三位という地位にケインを位置付けている、ただの戦士とは一線を画す力である。
それは体格に勝る相手の渾身の一突きさえ剣の一振りで容易く防ぎ、
「あんたじゃ僕に勝てないよ」
「馬鹿にする――」
ブンっ!!
相手の抵抗を置き去りにし、一瞬にして腹部を拳で打ち付け吹き飛ばす。
驚愕に声を挙げることもできず、突進してきた以上の距離を吹き飛ばされた槍使いは、あまりの衝撃によってそのまま意識を失ってしまった。
その様子に満足したケインは剣を仕舞い、自分が来た方の門へと帰っていく。
「しょ、勝者ケイン・ガーゼル!」
あまりにも早すぎる決着に、どう反応したらいいかと観客は困惑してしまう。
意識を失ったパイクが控えていたギルド員に数名に運ばれていくのを見ながら、住民たちは改めてケインのその実力を認識するのだった。
門から出たケインは選手たちからの視線を気にすることなく、フードの男に向かっていく。
目の前にその男を見据え、ケインは言葉を掛ける。
「あんたと当たるのは準決勝だ。そのときはそのフードの奥、明かしてもらおうか」
フードの男は、それに答えることなく次の自分の試合に向けて門へと歩いていってしまった。
その様子に周りの選手も薄気味悪いものを感じていたが、皆口にだすようなことはなかった。
「ふーん……まあいいや」
ケインとしても、もう言葉でどうこうしようとは考えてはいない。
見せてもらおうか、父に匹敵するという実力を。
ケインはまた、不適な笑みを浮かべ次の試合の観戦を始めるのだった。
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