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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの馬事《まこと》騒ぎ~
決勝戦 その2 side ベン
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十六人もいた大会も、とうとう最後の二人になった。
戦いを繰り広げた色々な奴が、それぞれの理由で参加していた。
正直俺がここまでこれたのは運の要素が強いことはまず間違いはない。もっと熱意のある奴もいたが、対戦上あえなく敗退してしまっているからな。
だがそれでも、この場に進めたというのなら不満はない。
あの男と戦えるのなら、あらゆるやっかみは快く受けようじゃねぇか。
俺は歓声が響き渡る会場で、開戦の合図を今か今かと待っていた。
「―――……皆様……遂にこのイナナキ剣闘大会ものこすところ最後の対決なりました。ここまでの激戦を潜り抜け、決勝の場へと駒を進めた二人の戦士。どちらも下馬評を覆す、およそここにいる全ての方の予想から外れた結果となっております。
まずは東門、その正体はフードの奥に隠され不明。しかしその圧倒的な実力は隔絶したもの。どんな攻撃も彼に膝を着かせることはありませんでした。
最後まで完勝となるか!! 不倒不明の剣士、ジョン・ドゥニーム!!!」
司会の掛け声に応えるようにして、相変わらず静かな佇まいで会場へと入ってきた。
結構な消耗があったはずだが、見掛けの上ではそのような感じはしない。この短い間で回復ができたのか、それとも痩せ我慢ということなのだろうか。
少しでも情報を得ようと、俺は奴の動きを隅々まで観察していた。足取りなんかに乱れはない。疲労で集中できていない感じでも無さそうだ。
両腕はだらりと脱力している。ケインの時みたく事前に構えをしていないのは……握力に問題でもあるのかね。それともまた別の問題があるか、か。
大体見た感じこの位かね、分かるってか考慮できるのは。
「そして西門より現れますのは、我らがイナナキの街の頼れる男。クラン「青き鬣」所属、ベン・ブリッチ!!
数年前の事故によって負傷していた彼ですが、それを感じさせない動きを今大会で見せています! また、冒険者として活動してきた人読みによってここまでの戦いを優位に進めてきました。はたして準決勝で惜しくも敗れてしまったケイン選手の仇を討てるか!!」
いや、そういうことはいっちゃあかんだろあんた。
そういうことをばらすのはいかんだろうが。いくら本当だといってもそういう、その、地域限定の強みを明かすんじゃねぇよ。外様っぽいこの男相手に不利だっていってるようなものじゃねぇかよ。
司会からのまさかの扱いに恨む気持ちはありつつも、まるで動じていませんよって顔で堂々と会場に入る。ここで挫けるような神経はしてないんでな。
俺はジョンの奴に向けて腕を胸の前で組んで強きな目線で対峙する。
「両雄、決戦の準備は十分といったところ。この勝負に勝った方がはれてこの大会の優勝者となり、ギルドからの報酬とイナナキ最強の戦士であることが証明されます。この戦いがその称号に相応しいものたなるのは皆様の目にも明らかでございます。
さあ、挨拶はここまでにして始めましょう! イナナキ剣闘大会、最終戦決勝!!
―――始めぇええええええ!!!」
これまでと同じように、始まりはとてもスムーズだった。宣言と同時に沸き上がる観客の声に後押しされるように、俺は率先して攻めることから始める。
抜き放った長剣を下斜めに構え、ジョンの奴に向かって走り寄る。
ジョンは相変わらず待ちの体勢だ。剣も抜いていない。となれば……、
「……っだよなぁあ!!」
当然、カウンターであろう。
奴の攻撃範囲に入ったところ、まるでコマ落としのように目の前の空間を剣が凪いでいた。
予測ができてはいたが、その速度はまさしく脅威である。何とか踏み止まり攻撃を受けることはなかったが、どうじてもそこからの動き出しに遅延ができちまう。
切り返しの一撃を、地面に転がることで何とか回避する。そのままの勢いで足払いを仕掛けるが、反対側に移動され軽く避けられてしまう。
が、しかし。
「色々試させてもらおうじゃねぇか!!」
「……っ!」
折角だ、想定してないような攻撃ってやつに晒されてもらおう。
俺は地に転げたことを利用して、相手より遥かに低いところからの攻撃を開始した。
片手を支えとし、四足獣のできそこないのような姿の俺はジョンの足を執拗に攻撃する。
「ああきっついなおい! 避けんじゃねぇよ当たんねぇだろうが俺をこれ以上苦しめんでくれや!!」
軽口混じりの台詞を吐きつつ、攻めの手は緩めない。俺もこの姿勢はきついのだが、対応するために奴も無理な姿勢での攻撃をせざるを得ない。
相手もまだまだこの動きに対応するのはまだできていないようで、さらに俺に足を捕まれる可能性があることから剣での攻撃以上にそれを警戒した動きをしている。
もし捕まれでもしたら体力の消耗が激しいこいつにはそれを振りほどくようなことはできないはず。
どうだ、対策第一弾「格下」は。
「足元に気を着けるんだぜ!! 汚い戦いは俺の土俵なんだからよおおおお!!!」
さて、どこまで体力を削れるか。限界までやってやろうじゃねぇの。
なんたってこれは、次の策までの下準備なんだからな。
戦いを繰り広げた色々な奴が、それぞれの理由で参加していた。
正直俺がここまでこれたのは運の要素が強いことはまず間違いはない。もっと熱意のある奴もいたが、対戦上あえなく敗退してしまっているからな。
だがそれでも、この場に進めたというのなら不満はない。
あの男と戦えるのなら、あらゆるやっかみは快く受けようじゃねぇか。
俺は歓声が響き渡る会場で、開戦の合図を今か今かと待っていた。
「―――……皆様……遂にこのイナナキ剣闘大会ものこすところ最後の対決なりました。ここまでの激戦を潜り抜け、決勝の場へと駒を進めた二人の戦士。どちらも下馬評を覆す、およそここにいる全ての方の予想から外れた結果となっております。
まずは東門、その正体はフードの奥に隠され不明。しかしその圧倒的な実力は隔絶したもの。どんな攻撃も彼に膝を着かせることはありませんでした。
最後まで完勝となるか!! 不倒不明の剣士、ジョン・ドゥニーム!!!」
司会の掛け声に応えるようにして、相変わらず静かな佇まいで会場へと入ってきた。
結構な消耗があったはずだが、見掛けの上ではそのような感じはしない。この短い間で回復ができたのか、それとも痩せ我慢ということなのだろうか。
少しでも情報を得ようと、俺は奴の動きを隅々まで観察していた。足取りなんかに乱れはない。疲労で集中できていない感じでも無さそうだ。
両腕はだらりと脱力している。ケインの時みたく事前に構えをしていないのは……握力に問題でもあるのかね。それともまた別の問題があるか、か。
大体見た感じこの位かね、分かるってか考慮できるのは。
「そして西門より現れますのは、我らがイナナキの街の頼れる男。クラン「青き鬣」所属、ベン・ブリッチ!!
数年前の事故によって負傷していた彼ですが、それを感じさせない動きを今大会で見せています! また、冒険者として活動してきた人読みによってここまでの戦いを優位に進めてきました。はたして準決勝で惜しくも敗れてしまったケイン選手の仇を討てるか!!」
いや、そういうことはいっちゃあかんだろあんた。
そういうことをばらすのはいかんだろうが。いくら本当だといってもそういう、その、地域限定の強みを明かすんじゃねぇよ。外様っぽいこの男相手に不利だっていってるようなものじゃねぇかよ。
司会からのまさかの扱いに恨む気持ちはありつつも、まるで動じていませんよって顔で堂々と会場に入る。ここで挫けるような神経はしてないんでな。
俺はジョンの奴に向けて腕を胸の前で組んで強きな目線で対峙する。
「両雄、決戦の準備は十分といったところ。この勝負に勝った方がはれてこの大会の優勝者となり、ギルドからの報酬とイナナキ最強の戦士であることが証明されます。この戦いがその称号に相応しいものたなるのは皆様の目にも明らかでございます。
さあ、挨拶はここまでにして始めましょう! イナナキ剣闘大会、最終戦決勝!!
―――始めぇええええええ!!!」
これまでと同じように、始まりはとてもスムーズだった。宣言と同時に沸き上がる観客の声に後押しされるように、俺は率先して攻めることから始める。
抜き放った長剣を下斜めに構え、ジョンの奴に向かって走り寄る。
ジョンは相変わらず待ちの体勢だ。剣も抜いていない。となれば……、
「……っだよなぁあ!!」
当然、カウンターであろう。
奴の攻撃範囲に入ったところ、まるでコマ落としのように目の前の空間を剣が凪いでいた。
予測ができてはいたが、その速度はまさしく脅威である。何とか踏み止まり攻撃を受けることはなかったが、どうじてもそこからの動き出しに遅延ができちまう。
切り返しの一撃を、地面に転がることで何とか回避する。そのままの勢いで足払いを仕掛けるが、反対側に移動され軽く避けられてしまう。
が、しかし。
「色々試させてもらおうじゃねぇか!!」
「……っ!」
折角だ、想定してないような攻撃ってやつに晒されてもらおう。
俺は地に転げたことを利用して、相手より遥かに低いところからの攻撃を開始した。
片手を支えとし、四足獣のできそこないのような姿の俺はジョンの足を執拗に攻撃する。
「ああきっついなおい! 避けんじゃねぇよ当たんねぇだろうが俺をこれ以上苦しめんでくれや!!」
軽口混じりの台詞を吐きつつ、攻めの手は緩めない。俺もこの姿勢はきついのだが、対応するために奴も無理な姿勢での攻撃をせざるを得ない。
相手もまだまだこの動きに対応するのはまだできていないようで、さらに俺に足を捕まれる可能性があることから剣での攻撃以上にそれを警戒した動きをしている。
もし捕まれでもしたら体力の消耗が激しいこいつにはそれを振りほどくようなことはできないはず。
どうだ、対策第一弾「格下」は。
「足元に気を着けるんだぜ!! 汚い戦いは俺の土俵なんだからよおおおお!!!」
さて、どこまで体力を削れるか。限界までやってやろうじゃねぇの。
なんたってこれは、次の策までの下準備なんだからな。
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