リーズ・ナブルは此れにて御免 ~ 元軍人付与士は冒険者として成り上がる~

アゲインスト

文字の大きさ
85 / 109
ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの馬事《まこと》騒ぎ~

決勝戦 その2 side ベン

しおりを挟む
 十六人もいた大会も、とうとう最後の二人になった。
 戦いを繰り広げた色々な奴が、それぞれの理由で参加していた。
 正直俺がここまでこれたのは運の要素が強いことはまず間違いはない。もっと熱意のある奴もいたが、対戦上あえなく敗退してしまっているからな。
 だがそれでも、この場に進めたというのなら不満はない。
 あの男と戦えるのなら、あらゆるやっかみは快く受けようじゃねぇか。
 俺は歓声が響き渡る会場で、開戦の合図を今か今かと待っていた。
 
 
 
 
 
 
 
「―――……皆様……遂にこのイナナキ剣闘大会ものこすところ最後の対決なりました。ここまでの激戦を潜り抜け、決勝の場へと駒を進めた二人の戦士。どちらも下馬評を覆す、およそここにいる全ての方の予想から外れた結果となっております。
 まずは東門、その正体はフードの奥に隠され不明。しかしその圧倒的な実力は隔絶したもの。どんな攻撃も彼に膝を着かせることはありませんでした。
 最後まで完勝となるか!! 不倒不明の剣士、ジョン・ドゥニーム!!!」
 
 司会の掛け声に応えるようにして、相変わらず静かな佇まいで会場へと入ってきた。
 結構な消耗があったはずだが、見掛けの上ではそのような感じはしない。この短い間で回復ができたのか、それとも痩せ我慢ということなのだろうか。
 少しでも情報を得ようと、俺は奴の動きを隅々まで観察していた。足取りなんかに乱れはない。疲労で集中できていない感じでも無さそうだ。
 両腕はだらりと脱力している。ケインの時みたく事前に構えをしていないのは……握力に問題でもあるのかね。それともまた別の問題があるか、か。
 大体見た感じこの位かね、分かるってか考慮できるのは。
 
「そして西門より現れますのは、我らがイナナキの街の頼れる男。クラン「青き鬣」所属、ベン・ブリッチ!!
 数年前の事故によって負傷していた彼ですが、それを感じさせない動きを今大会で見せています! また、冒険者として活動してきた人読みによってここまでの戦いを優位に進めてきました。はたして準決勝で惜しくも敗れてしまったケイン選手の仇を討てるか!!」
 
 いや、そういうことはいっちゃあかんだろあんた。
 そういうことをばらすのはいかんだろうが。いくら本当だといってもそういう、その、地域限定の強みを明かすんじゃねぇよ。外様っぽいこの男相手に不利だっていってるようなものじゃねぇかよ。
 司会からのまさかの扱いに恨む気持ちはありつつも、まるで動じていませんよって顔で堂々と会場に入る。ここで挫けるような神経はしてないんでな。
 俺はジョンの奴に向けて腕を胸の前で組んで強きな目線で対峙する。
 
「両雄、決戦の準備は十分といったところ。この勝負に勝った方がはれてこの大会の優勝者となり、ギルドからの報酬とイナナキ最強の戦士であることが証明されます。この戦いがその称号に相応しいものたなるのは皆様の目にも明らかでございます。
 さあ、挨拶はここまでにして始めましょう! イナナキ剣闘大会、最終戦決勝!! 
 
 ―――始めぇええええええ!!!」
 
 
 これまでと同じように、始まりはとてもスムーズだった。宣言と同時に沸き上がる観客の声に後押しされるように、俺は率先して攻めることから始める。
 抜き放った長剣を下斜めに構え、ジョンの奴に向かって走り寄る。
 ジョンは相変わらず待ちの体勢だ。剣も抜いていない。となれば……、
 
「……っだよなぁあ!!」
 
 当然、カウンターであろう。
 奴の攻撃範囲に入ったところ、まるでコマ落としのように目の前の空間を剣が凪いでいた。
 予測ができてはいたが、その速度はまさしく脅威である。何とか踏み止まり攻撃を受けることはなかったが、どうじてもそこからの動き出しに遅延ができちまう。
 切り返しの一撃を、地面に転がることで何とか回避する。そのままの勢いで足払いを仕掛けるが、反対側に移動され軽く避けられてしまう。
 が、しかし。
 
「色々試させてもらおうじゃねぇか!!」
「……っ!」
 
 折角だ、想定してないような攻撃ってやつに晒されてもらおう。
 俺は地に転げたことを利用して、相手より遥かに低いところからの攻撃を開始した。
 片手を支えとし、四足獣のできそこないのような姿の俺はジョンの足を執拗に攻撃する。
 
「ああきっついなおい! 避けんじゃねぇよ当たんねぇだろうが俺をこれ以上苦しめんでくれや!!」
 
 軽口混じりの台詞を吐きつつ、攻めの手は緩めない。俺もこの姿勢はきついのだが、対応するために奴も無理な姿勢での攻撃をせざるを得ない。
 相手もまだまだこの動きに対応するのはまだできていないようで、さらに俺に足を捕まれる可能性があることから剣での攻撃以上にそれを警戒した動きをしている。
 もし捕まれでもしたら体力の消耗が激しいこいつにはそれを振りほどくようなことはできないはず。
 
 どうだ、対策第一弾「格下」は。
 
 
「足元に気を着けるんだぜ!! 汚い戦いは俺の土俵なんだからよおおおお!!!」
 
 
 さて、どこまで体力を削れるか。限界までやってやろうじゃねぇの。
 なんたってこれは、次の策までの下準備なんだからな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...