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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの馬事《まこと》騒ぎ~
ドイル、目覚めるも理解が追い付かない
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―――深い暗闇に漂っているような感覚があった。
意識という意識を保てない。
ふわふわととしたものの中にいるような感覚。
何時からそこにいるのか、考えようとしても思考がほどけてしまい何も考えられないでいた。
どのくらいその感覚に身を浸していたのだろうか。
ある時、不意に重力を感じた。
落ちていく時のそれではない。下にではなく上に引っ張られていくような感覚は、ここにいる間ついぞ感じることのなかったものである。
しかし、それが何であるかなどその時の自分には理解することができるわけがなく、浮上に似た重力を感じるままに任せるままであった。
ゆっくりと浮上していく感覚がどのくらい続いたか。
ここでまた、この暗闇の世界に存在しないはずもものが登場する。
光だ。
何となくだが、そういったものが浮き上がる先から感じたと思えば急激に浮上の速度が上がりどんどんと光が強くなる。
針の先ほどの大きさだった光が視界を満たし、私は―――
「―――……い。おいあんた!! っさっさと目を覚ませこの野郎!!」
暗闇から浮上したんだと認識した私は、耳が捉えた声に反応して閉じていたらしい瞼をあけようとする。
その簡単な動作が何故だか億劫で、ひどく時間を掛けて薄目を開けることしかできなかった。
「……開いた。開きましたよ、目を開けました!!」
「よし!! 呼び掛け続けろ! 意識が落ちたら元も子もない!」
「分かりました! ドイルさん! ドイルさん!? 聞こえますか!? ハリマです! 副長のハリマです!!」
ハリマ?
ああ、あいつか……何だそんなに叫んで。
私は無事だ、問題ない。
そう答えようとしたのだが、全く声が出せないことに気が付いた。
どうやっても言葉にならない。そこで始めて自分の体がおかしいことに思い至った。
「呼吸が乱れてる? トトン先生、これは大丈夫なんですか!?」
「おそらく喋ろうとしてるんでしょう。問題ありません」
トトンもいるのか、ということはここは治療院?
いやしかし、それにしては聞き慣れない声の主がいたな。
この街では聞いたことのない声だったし……一体誰なんだ。
「意識が戻ったんならこっちのもんだ! 引き続き作業を継続する! 気を抜くなよ二人とも!!」
「体力的な消耗は想定範囲内です。このままで大丈夫かと」
「そちらのことに私は手が出せん! リーズ殿! 私はこれを続ければいいのか!?」
「安心しろ! 防音処理のしてある部屋だからいくらでもうるさくしてくれて構わねぇよ!」
「分かった!! ドイルさん! 今あなたを助けますからね! 絶対に、絶対にあなたを助けてみせますから! どうかそのまま意識を保っていてください!」
何をしているのか分からないが、どうにも私はここまでしてもらわないといけないほどの事態に陥っているようだ。
そして―――「リーズ」という人物。
ハリマの発言で名前が分かったがどうやらこの人物の主導で二人は動いているらしい。
しかし、助ける?
いや、そもそも私はどうしてこんなことに……?
あの暗闇に沈むまえにやっていたことと言えば―――
叫ぶように語り掛けてくるハリマの声や、トトンとリーズという人物が話すのを聞きながら、私はできるだけ最近のことで思い出せることはないかと鈍い思考で考え始めるのだった。
「―――……とまあ、目覚めたらそんな感じでな。最初はわけがわからなかったんだよ。リーズって誰? って思ってたし」
「リーズ……リーズって何であの野郎が!?」
ドイルから聞かされた真相の一部、それはあくまでドイル本人の視点で語られている。
そのためにどうしてリーズがそんなことをしているのかとか、ドイルの復活にどう関わっているかなど、ベンにとっては理解のできないことばかりである。
しかも、協力者までいるというのだから驚く他ない。
「副長も! トトンさんだって!」
一体何がどうなっているのか。
ベンには全く理解ができなかった。
あのリーズが、ケインとの戦いを拒否していたはずのリーズがどうしてあいつや俺たちのためになるようなことをしているのだ。
「一体何がどうなっているんですか!! どこから、どこからあいつは動いていたっていうんですか!」
ベンの疑問の声に、それまで沈黙を保っていたトトンが代わりにといった感じで口を開く。
ドイルの話の中でも彼はリーズとの連携が取れているようなことが語られていた。トトンが某かの取り決めをリーズとの間にやっていなければそういった動きはできないだろう。
「それについては自分の方からお話いたしましょう。とは言っても実を言うと私が彼の計画で動いたのはドイルさんたちのことだけでして。治療のことについてならお話できますが、他のことについてはハリマさんからお話していただくことになります」
そう言われてハリマの方に顔を向ければ、ハリマは頷いてそれを認めた。
「私は大会の開催についてであろう。あの男、裏で色々動いていたみたいでな。その全貌については私も正確には把握できておらんのだ。今はまだここには来ていないが、まだ二人ほど関係者がいる。トトン殿、もうそろそろではなかったでしょうか」
「そうですね。彼女たちが付いていますし、リーズさんの処置が終わったのなら問題なくここに連れてきてくれるでしょう。彼女もここには来たがっていましたからね」
冷静に会話をする二人が無性にイラつくのはなんでであろうか。
というか、さらに増えるというのか。ベンは驚きすぎて疲れるというのをこの時始めて経験していた。
トトンが語る二人とは誰か。
さらに拡がりを見せるリーズの関係者。
またもや謎が深まり困惑するベン。
リーズが仕掛けた計画。真相は更なる展開の先にある。
意識という意識を保てない。
ふわふわととしたものの中にいるような感覚。
何時からそこにいるのか、考えようとしても思考がほどけてしまい何も考えられないでいた。
どのくらいその感覚に身を浸していたのだろうか。
ある時、不意に重力を感じた。
落ちていく時のそれではない。下にではなく上に引っ張られていくような感覚は、ここにいる間ついぞ感じることのなかったものである。
しかし、それが何であるかなどその時の自分には理解することができるわけがなく、浮上に似た重力を感じるままに任せるままであった。
ゆっくりと浮上していく感覚がどのくらい続いたか。
ここでまた、この暗闇の世界に存在しないはずもものが登場する。
光だ。
何となくだが、そういったものが浮き上がる先から感じたと思えば急激に浮上の速度が上がりどんどんと光が強くなる。
針の先ほどの大きさだった光が視界を満たし、私は―――
「―――……い。おいあんた!! っさっさと目を覚ませこの野郎!!」
暗闇から浮上したんだと認識した私は、耳が捉えた声に反応して閉じていたらしい瞼をあけようとする。
その簡単な動作が何故だか億劫で、ひどく時間を掛けて薄目を開けることしかできなかった。
「……開いた。開きましたよ、目を開けました!!」
「よし!! 呼び掛け続けろ! 意識が落ちたら元も子もない!」
「分かりました! ドイルさん! ドイルさん!? 聞こえますか!? ハリマです! 副長のハリマです!!」
ハリマ?
ああ、あいつか……何だそんなに叫んで。
私は無事だ、問題ない。
そう答えようとしたのだが、全く声が出せないことに気が付いた。
どうやっても言葉にならない。そこで始めて自分の体がおかしいことに思い至った。
「呼吸が乱れてる? トトン先生、これは大丈夫なんですか!?」
「おそらく喋ろうとしてるんでしょう。問題ありません」
トトンもいるのか、ということはここは治療院?
いやしかし、それにしては聞き慣れない声の主がいたな。
この街では聞いたことのない声だったし……一体誰なんだ。
「意識が戻ったんならこっちのもんだ! 引き続き作業を継続する! 気を抜くなよ二人とも!!」
「体力的な消耗は想定範囲内です。このままで大丈夫かと」
「そちらのことに私は手が出せん! リーズ殿! 私はこれを続ければいいのか!?」
「安心しろ! 防音処理のしてある部屋だからいくらでもうるさくしてくれて構わねぇよ!」
「分かった!! ドイルさん! 今あなたを助けますからね! 絶対に、絶対にあなたを助けてみせますから! どうかそのまま意識を保っていてください!」
何をしているのか分からないが、どうにも私はここまでしてもらわないといけないほどの事態に陥っているようだ。
そして―――「リーズ」という人物。
ハリマの発言で名前が分かったがどうやらこの人物の主導で二人は動いているらしい。
しかし、助ける?
いや、そもそも私はどうしてこんなことに……?
あの暗闇に沈むまえにやっていたことと言えば―――
叫ぶように語り掛けてくるハリマの声や、トトンとリーズという人物が話すのを聞きながら、私はできるだけ最近のことで思い出せることはないかと鈍い思考で考え始めるのだった。
「―――……とまあ、目覚めたらそんな感じでな。最初はわけがわからなかったんだよ。リーズって誰? って思ってたし」
「リーズ……リーズって何であの野郎が!?」
ドイルから聞かされた真相の一部、それはあくまでドイル本人の視点で語られている。
そのためにどうしてリーズがそんなことをしているのかとか、ドイルの復活にどう関わっているかなど、ベンにとっては理解のできないことばかりである。
しかも、協力者までいるというのだから驚く他ない。
「副長も! トトンさんだって!」
一体何がどうなっているのか。
ベンには全く理解ができなかった。
あのリーズが、ケインとの戦いを拒否していたはずのリーズがどうしてあいつや俺たちのためになるようなことをしているのだ。
「一体何がどうなっているんですか!! どこから、どこからあいつは動いていたっていうんですか!」
ベンの疑問の声に、それまで沈黙を保っていたトトンが代わりにといった感じで口を開く。
ドイルの話の中でも彼はリーズとの連携が取れているようなことが語られていた。トトンが某かの取り決めをリーズとの間にやっていなければそういった動きはできないだろう。
「それについては自分の方からお話いたしましょう。とは言っても実を言うと私が彼の計画で動いたのはドイルさんたちのことだけでして。治療のことについてならお話できますが、他のことについてはハリマさんからお話していただくことになります」
そう言われてハリマの方に顔を向ければ、ハリマは頷いてそれを認めた。
「私は大会の開催についてであろう。あの男、裏で色々動いていたみたいでな。その全貌については私も正確には把握できておらんのだ。今はまだここには来ていないが、まだ二人ほど関係者がいる。トトン殿、もうそろそろではなかったでしょうか」
「そうですね。彼女たちが付いていますし、リーズさんの処置が終わったのなら問題なくここに連れてきてくれるでしょう。彼女もここには来たがっていましたからね」
冷静に会話をする二人が無性にイラつくのはなんでであろうか。
というか、さらに増えるというのか。ベンは驚きすぎて疲れるというのをこの時始めて経験していた。
トトンが語る二人とは誰か。
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