103 / 109
ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの???~
リーズ・ナブルと赤毛の闘士ユリアナ
しおりを挟む
店の中央にて顔を付き合わせる俺たち。
相手は見た目からはそうとは伺えない、女性の冒険者。赤毛と獣のような眼光が相まって好戦的な性格であることを言葉にせずともその佇まいで物語っている。
少年と勘違いする貧相な胸部の代わりに鍛え上げられた四肢があり、顔と言わず至るところにある古傷がその戦歴を想像させた。
「お前かぁ、俺らに喧嘩売ってきてんのは。で、そいつらが連れか……」
「ああ、そっちのチンピラどもよかよっぽど未来がある優秀な後輩君たちさ。羨ましいだろ」
「そうだな、確かに羨ましいよ。ありもしねぇ未来に希望を持てるんだ、その能天気さが羨ましい」
「どうだろうなぁ……案外できちまうかもしれねぇぞ? 何たってあいつらには俺がついているし、何よりお前らと戦っているわけじゃあないんでな」
「……はは、はははははは!!!! そいつはスゲー自信だ!! お前がいりゃ初心者集団も立派な攻略者ってか? いやいやお前……―――笑わせんなよ」
バシィ!!!
と音を立てて、彼女の拳が俺の掌に突き刺さる。下腹部を狙った鋭い一撃、前動作を省略した虚を突く拳打であった。反応できたのも偶然に近い。
嘲笑を浮かべていた顔から表情が抜け落ち、冷たい無表情が殺気を伴って拳以上の力を俺に向けてくる。
「……なめてんじゃねえよ。たかだか銅級の初心者集団がダンジョンを攻略できるとでも思ってんのか? みすみす死なすことになる……それが分からねぇとはいわせねぇぞ」
「案外熱い性格してんのな。後輩思いのいい先輩だ」
「ほざけ」
さらに力を込められた拳が俺の体を吹き飛ばす、後ろに数歩たたらを踏みながらも体勢を立て直して相対する。
「厳しいねぇ……だったら、やるかい?」
「あ?」
「力試し、的な?」
懐を探り銅貨を一枚取り出す。そしてこれ見よがしにそれを見せつけて、俺は言う。
「ラッシュの速さ比べといこうか。知能比べとなるかはそっち次第だが……単純な方が分かりやすいだろ?」
「……何がしたいんだ、お前?」
「随分と実力に自信がおありのようなので、それならそういうだけのものを見せてもらわにゃこっちも納得できんだろうってことさ。上に弾いた硬貨を先に掴んだ方の勝ち、俺が勝ったら口出しはよしてもらおうか」
「俺が勝ったら?」
「まあ、諦めるさ。俺だけじゃなくとも協力してくれる奴がいるならそいつらにライドたちは任せる。そしたら俺は大人しくここを去るさ。そして、俺は負けるつもりはない。絶対にな」
「……おもしれぇ」
俺の見え見えの挑発にあえて乗る、というとでもいうつもりか俺を招くかのように指を動かす。
それに従うようにして、俺は硬貨を弾きながら近寄っていく。
「てめぇ名前は?」
「リーズ・ナブル、階級は魔鉄」
「そうか、俺はユリアナ。鋼級の冒険者だ」
あっそ。
別に相手がどんな階級だろうが関係のなかった俺は、開始の合図代わりに一段と高く硬貨を弾いた。
回転しながら二人の間を上昇し、頂点に差し掛かかる。落下してくるまで三秒もないだろう高さに至り、降下と同時に勝負は始まった。
「おらっ!!」
「シャアっ!!」
お互いに硬貨が落ちてくる線上へと拳を繰り出す。硬貨に触れようとすれば腕を叩いて弾き、掴みそうになれば逸らして妨害する。
「だりゃぁあ!!」
「ショオラっ!!」
拳打の速度は加速を続け、位置の取り合いで足が床を叩く音が鳴り響く。硬貨は落下の軌道から外れ拳打の中を踊っている。
「そこっ!!」
「甘いっ!!」
取り合いではらちが明かないと、拳が捉える対象は相手の体へと移行する。それは硬貨を取ると見せ掛けての妨害や体勢を崩すための小細工などにまで至り、勝利するためには相手を打倒しなければならないという結論を頭が導き出す。
「しゃらくせぇ!!」
大きく体を屈ませたユリアナは下から掬い上げる、と見せ掛けてリーズへの攻撃を繰り出した。素早い踏み込みによってリーズの懐に入り込んだユリアナは自分の体を使って硬貨をリーズの視界から失わせる。
そしてそのまま至近距離での肘打ちへと繋げたユリアナは、踏み込みの勢いを利用して体ごとリーズへとぶちこんでくる。
「…っ!? おっも!?」
が、しかし。
しっかりとその攻撃を受け止めたリーズはユリアナの体を抱き抱え後ろへと投げ飛ばした。
いつの間に立ち位置が入れ替わっていたのか、投げ飛ばされた方向はガラドルの戦士団が観戦している方であった。
突如始まった戦いに沸き上がっていた連中もこれには驚いたのか慌てて退避している。
「うげぇあ!?」
「あぶねぇ!!」
テーブルを破壊しつつ床に叩きつけられたユリアナは背中への衝撃で一瞬意識が飛んでしまう。
痛みを堪えつつも立ち上がろうとすれば、その視界には荒い息を吐きつつも無事な様子のリーズがユリアナを見据えていた。
リーズは足元に落ちていた硬貨を爪先で弾き、その手中へと納める。
「……見ての通りだ。これで認めてもらえるな?」
リーズが示す勝利の証しを苦々しげに見つめるユリアナ。
そんな二人を仲裁するようにして出てきたのはこの集団のボスであろうあの男だった。
意味ありげな表情で出てきた男が何を言い出すのか。リーズは少し身構えて彼が口を開くのを待つのだった。
相手は見た目からはそうとは伺えない、女性の冒険者。赤毛と獣のような眼光が相まって好戦的な性格であることを言葉にせずともその佇まいで物語っている。
少年と勘違いする貧相な胸部の代わりに鍛え上げられた四肢があり、顔と言わず至るところにある古傷がその戦歴を想像させた。
「お前かぁ、俺らに喧嘩売ってきてんのは。で、そいつらが連れか……」
「ああ、そっちのチンピラどもよかよっぽど未来がある優秀な後輩君たちさ。羨ましいだろ」
「そうだな、確かに羨ましいよ。ありもしねぇ未来に希望を持てるんだ、その能天気さが羨ましい」
「どうだろうなぁ……案外できちまうかもしれねぇぞ? 何たってあいつらには俺がついているし、何よりお前らと戦っているわけじゃあないんでな」
「……はは、はははははは!!!! そいつはスゲー自信だ!! お前がいりゃ初心者集団も立派な攻略者ってか? いやいやお前……―――笑わせんなよ」
バシィ!!!
と音を立てて、彼女の拳が俺の掌に突き刺さる。下腹部を狙った鋭い一撃、前動作を省略した虚を突く拳打であった。反応できたのも偶然に近い。
嘲笑を浮かべていた顔から表情が抜け落ち、冷たい無表情が殺気を伴って拳以上の力を俺に向けてくる。
「……なめてんじゃねえよ。たかだか銅級の初心者集団がダンジョンを攻略できるとでも思ってんのか? みすみす死なすことになる……それが分からねぇとはいわせねぇぞ」
「案外熱い性格してんのな。後輩思いのいい先輩だ」
「ほざけ」
さらに力を込められた拳が俺の体を吹き飛ばす、後ろに数歩たたらを踏みながらも体勢を立て直して相対する。
「厳しいねぇ……だったら、やるかい?」
「あ?」
「力試し、的な?」
懐を探り銅貨を一枚取り出す。そしてこれ見よがしにそれを見せつけて、俺は言う。
「ラッシュの速さ比べといこうか。知能比べとなるかはそっち次第だが……単純な方が分かりやすいだろ?」
「……何がしたいんだ、お前?」
「随分と実力に自信がおありのようなので、それならそういうだけのものを見せてもらわにゃこっちも納得できんだろうってことさ。上に弾いた硬貨を先に掴んだ方の勝ち、俺が勝ったら口出しはよしてもらおうか」
「俺が勝ったら?」
「まあ、諦めるさ。俺だけじゃなくとも協力してくれる奴がいるならそいつらにライドたちは任せる。そしたら俺は大人しくここを去るさ。そして、俺は負けるつもりはない。絶対にな」
「……おもしれぇ」
俺の見え見えの挑発にあえて乗る、というとでもいうつもりか俺を招くかのように指を動かす。
それに従うようにして、俺は硬貨を弾きながら近寄っていく。
「てめぇ名前は?」
「リーズ・ナブル、階級は魔鉄」
「そうか、俺はユリアナ。鋼級の冒険者だ」
あっそ。
別に相手がどんな階級だろうが関係のなかった俺は、開始の合図代わりに一段と高く硬貨を弾いた。
回転しながら二人の間を上昇し、頂点に差し掛かかる。落下してくるまで三秒もないだろう高さに至り、降下と同時に勝負は始まった。
「おらっ!!」
「シャアっ!!」
お互いに硬貨が落ちてくる線上へと拳を繰り出す。硬貨に触れようとすれば腕を叩いて弾き、掴みそうになれば逸らして妨害する。
「だりゃぁあ!!」
「ショオラっ!!」
拳打の速度は加速を続け、位置の取り合いで足が床を叩く音が鳴り響く。硬貨は落下の軌道から外れ拳打の中を踊っている。
「そこっ!!」
「甘いっ!!」
取り合いではらちが明かないと、拳が捉える対象は相手の体へと移行する。それは硬貨を取ると見せ掛けての妨害や体勢を崩すための小細工などにまで至り、勝利するためには相手を打倒しなければならないという結論を頭が導き出す。
「しゃらくせぇ!!」
大きく体を屈ませたユリアナは下から掬い上げる、と見せ掛けてリーズへの攻撃を繰り出した。素早い踏み込みによってリーズの懐に入り込んだユリアナは自分の体を使って硬貨をリーズの視界から失わせる。
そしてそのまま至近距離での肘打ちへと繋げたユリアナは、踏み込みの勢いを利用して体ごとリーズへとぶちこんでくる。
「…っ!? おっも!?」
が、しかし。
しっかりとその攻撃を受け止めたリーズはユリアナの体を抱き抱え後ろへと投げ飛ばした。
いつの間に立ち位置が入れ替わっていたのか、投げ飛ばされた方向はガラドルの戦士団が観戦している方であった。
突如始まった戦いに沸き上がっていた連中もこれには驚いたのか慌てて退避している。
「うげぇあ!?」
「あぶねぇ!!」
テーブルを破壊しつつ床に叩きつけられたユリアナは背中への衝撃で一瞬意識が飛んでしまう。
痛みを堪えつつも立ち上がろうとすれば、その視界には荒い息を吐きつつも無事な様子のリーズがユリアナを見据えていた。
リーズは足元に落ちていた硬貨を爪先で弾き、その手中へと納める。
「……見ての通りだ。これで認めてもらえるな?」
リーズが示す勝利の証しを苦々しげに見つめるユリアナ。
そんな二人を仲裁するようにして出てきたのはこの集団のボスであろうあの男だった。
意味ありげな表情で出てきた男が何を言い出すのか。リーズは少し身構えて彼が口を開くのを待つのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる