13 / 47
第二章 地底都市編
第七話「解き放たれし邪」
しおりを挟む
「…きろ」
誰かが呼びかけている。
「…起きろ!」
その呼びかけでジュドは目を覚ます。
天井には大きな大穴が開き、巨大な黒が空を覆う。
彼らを守った分厚い土の壁は粉々に瓦解しており、神殿一帯は崩落し焦土と化していた。
「全員かなりの重症だが。無事だ」
ぼやける視界の中で、目の前には槍を片手に持った男が立っていた。
「大丈夫ですか、ジュドさん…」
起き上がり、周りを見渡すと自分以外の四人が倒れていた。全員意識はあるようだ。
「何が起こっているんだ、スティングレイ」
全身の負傷が痛む状況でジュドは我に返り、男に状況を問う。
「邪神教がここに来た目的は、この黒石神殿に祀られていた〝黒の石〟に封印されている”邪神”の完全なる顕現だ。俺も邪神というのは太古にこの世界に存在した神…ということくらいしか知らない」
邪神。
小さい頃に呼んだ本の中に登場することはあったが、本当にそんなものが実在しているとはジュドたちは誰も知らなかった。
「恐らく、地底神なら何か知っているだろう。なぜお前たちに黙っていたのかは知らないが」
あまりにも色々な話が出てきて、ジュドたちの理解が追いつかない。
もしかするとこの平穏な世界の裏には重要な何かが隠されているのではないだろうか。
そう感じていた時、耳を劈くような咆哮が辺りに響き渡った。
「上を見ろ」
少し鮮明になった視界を見上げると、そこには巨大な口と隻眼があり、その先端についた瞳がこちらを睨みつけていた。憎悪と怨嗟に染められたその瞳を見て、男は言う。
「太古の邪神、その一角。黒い石の神〝ゴル=ゴロス〟」
蛙のような胴体に六本の大きい手足。先端の頭からは無数の髪が生えており、その一本一本がワームのような形をした触手になっていた。全身は黒いヘドロのようなもので覆われ、発している
禍々しいオーラが天を昏く染めていた。
その圧倒的な存在感は地底神とは別質のものだと五人は直感的に感じた。
「あんなバケモノ…どうやって倒せば…」
ジュドたちは勝ち目がないこと確信し、絶望していた。
スティングレイは絶望した一行に話す。
「一つだけ、手はある」
「このトリシューラは癒えぬ傷を与える。その対象は神ですら等しく同じだ」
ジュドたちは察した。
「まだ動けるか?」
「正直言って五人とも限界だが…お前がやつの喉元に辿り着く時間くらいは稼いでやるよ」
システィ、ダグラス、モーリス、ルシアの四人も頷いた。
全員が再び武器を握りしめ、覚悟を決めた。
スティングレイは禍々しい槍を片手に駆け出す。
その行く手を阻むように無数の触手のような髪が襲い掛かる。
「〈身体強化(ストレングス)〉」
「〈刻印加速(ルーン・アクセラレート)〉」
残り少ない魔力で、モーリスとルシアが同時に唱える。
「行け!スティングレイ!」
ジュドの掛け声と共に、ダグラス、システィーナの二人も傷だらけの体を強化魔術により無理やり動かし、迫り来る触手の注意を逸らす。
防衛陣から漏れた触手が凄まじい勢いで男を追撃してくる。
先頭の2本は持ち前の槍で切り落としたが、撃ち漏らした1本が男の腹部に直撃する。
「…ッ!」
えぐられた腹部からは大量の血が流れ、体を覆う包帯はボロボロと剥がれ落ち始めていた。
男は徐々に体が槍により蝕まれ始めていることに気づきながらも、視線の先に広がる巨躯めがけて全速力で走る。
そして、とうとうその喉元まで辿り着くことに成功した。
―グシャッ!!
山よりも大きい暗黒の巨体に三叉槍が刺さると同時に、目の前の大口が轟音を響かせた。
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
刹那の瞬間、全身に呪詛の紋様が広がり、巨体はみるみるうちに崩れ落ちていく。
しかし…崩れ去るのは巨体だけではなかった。
最後の気力を振り絞り、全身全霊の一撃を放った包帯の男もまた限界だったのだ。
朦朧とする意識の中で、自分と同じように最後の力で道を切り開いた仲間たちの無事を確認し、男は安堵した。
「今度は…助けられた」
暗い地の底へ落ち、過去の後悔、惜別を払拭する、ただそのために力を欲し、禁忌を手にした男の意識が。
―途絶える。
誰かが呼びかけている。
「…起きろ!」
その呼びかけでジュドは目を覚ます。
天井には大きな大穴が開き、巨大な黒が空を覆う。
彼らを守った分厚い土の壁は粉々に瓦解しており、神殿一帯は崩落し焦土と化していた。
「全員かなりの重症だが。無事だ」
ぼやける視界の中で、目の前には槍を片手に持った男が立っていた。
「大丈夫ですか、ジュドさん…」
起き上がり、周りを見渡すと自分以外の四人が倒れていた。全員意識はあるようだ。
「何が起こっているんだ、スティングレイ」
全身の負傷が痛む状況でジュドは我に返り、男に状況を問う。
「邪神教がここに来た目的は、この黒石神殿に祀られていた〝黒の石〟に封印されている”邪神”の完全なる顕現だ。俺も邪神というのは太古にこの世界に存在した神…ということくらいしか知らない」
邪神。
小さい頃に呼んだ本の中に登場することはあったが、本当にそんなものが実在しているとはジュドたちは誰も知らなかった。
「恐らく、地底神なら何か知っているだろう。なぜお前たちに黙っていたのかは知らないが」
あまりにも色々な話が出てきて、ジュドたちの理解が追いつかない。
もしかするとこの平穏な世界の裏には重要な何かが隠されているのではないだろうか。
そう感じていた時、耳を劈くような咆哮が辺りに響き渡った。
「上を見ろ」
少し鮮明になった視界を見上げると、そこには巨大な口と隻眼があり、その先端についた瞳がこちらを睨みつけていた。憎悪と怨嗟に染められたその瞳を見て、男は言う。
「太古の邪神、その一角。黒い石の神〝ゴル=ゴロス〟」
蛙のような胴体に六本の大きい手足。先端の頭からは無数の髪が生えており、その一本一本がワームのような形をした触手になっていた。全身は黒いヘドロのようなもので覆われ、発している
禍々しいオーラが天を昏く染めていた。
その圧倒的な存在感は地底神とは別質のものだと五人は直感的に感じた。
「あんなバケモノ…どうやって倒せば…」
ジュドたちは勝ち目がないこと確信し、絶望していた。
スティングレイは絶望した一行に話す。
「一つだけ、手はある」
「このトリシューラは癒えぬ傷を与える。その対象は神ですら等しく同じだ」
ジュドたちは察した。
「まだ動けるか?」
「正直言って五人とも限界だが…お前がやつの喉元に辿り着く時間くらいは稼いでやるよ」
システィ、ダグラス、モーリス、ルシアの四人も頷いた。
全員が再び武器を握りしめ、覚悟を決めた。
スティングレイは禍々しい槍を片手に駆け出す。
その行く手を阻むように無数の触手のような髪が襲い掛かる。
「〈身体強化(ストレングス)〉」
「〈刻印加速(ルーン・アクセラレート)〉」
残り少ない魔力で、モーリスとルシアが同時に唱える。
「行け!スティングレイ!」
ジュドの掛け声と共に、ダグラス、システィーナの二人も傷だらけの体を強化魔術により無理やり動かし、迫り来る触手の注意を逸らす。
防衛陣から漏れた触手が凄まじい勢いで男を追撃してくる。
先頭の2本は持ち前の槍で切り落としたが、撃ち漏らした1本が男の腹部に直撃する。
「…ッ!」
えぐられた腹部からは大量の血が流れ、体を覆う包帯はボロボロと剥がれ落ち始めていた。
男は徐々に体が槍により蝕まれ始めていることに気づきながらも、視線の先に広がる巨躯めがけて全速力で走る。
そして、とうとうその喉元まで辿り着くことに成功した。
―グシャッ!!
山よりも大きい暗黒の巨体に三叉槍が刺さると同時に、目の前の大口が轟音を響かせた。
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
刹那の瞬間、全身に呪詛の紋様が広がり、巨体はみるみるうちに崩れ落ちていく。
しかし…崩れ去るのは巨体だけではなかった。
最後の気力を振り絞り、全身全霊の一撃を放った包帯の男もまた限界だったのだ。
朦朧とする意識の中で、自分と同じように最後の力で道を切り開いた仲間たちの無事を確認し、男は安堵した。
「今度は…助けられた」
暗い地の底へ落ち、過去の後悔、惜別を払拭する、ただそのために力を欲し、禁忌を手にした男の意識が。
―途絶える。
0
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる
書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。
鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。
だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。
その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。
俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。
ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。
なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
