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26:距離が縮まりました(2)
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「いいなー私も見たいなー。なんで私には見えないんだろう」
窓の外、さきほど悠紀くんが見ていた辺りに目をやるけれど、私には何の異常も見つけられない。
ただ美しく手入れされた庭の風景が広がっているだけだ。
ふと視界の端に映ったものに興味を惹かれて、私は視線を悠紀くんに戻した。
悠紀くんは小さく笑っていた。
「気味悪がられたり、馬鹿にされることはあったけど。羨ましがられたのは初めてだ。俺はあの橋の上でも『なんでこんなものが見えるんだろう』って思ってたのに」
悠紀くんは口元の笑みを隠すようにグラスに口をつけ、カフェオレを飲んだ。
「この際だから打ち明けるけど。俺、出会った日の夜、戸川さんのおばあさんから戸川さんのことを頼まれた」
「ええええええ!!!?」
私は素っ頓狂な声で叫んで立ち上がり、テーブルに手をついて身を乗り出した。
「頼まれたって――おばあちゃんの幽霊に!? 会ったの!?」
「ああ。孫をよろしくお願いしますって頭を下げられた。戸川さんの身元を調べるために調査員を雇ったのも本当だけど、詳しい事情はおばあさんから聞いた。いくら調査員が優秀でも、近所に住んでた犬の名前まで俺が知ってるのはおかしいと思わなかった?」
「やけに詳しいな、とは思ったけど……まさかそんな裏事情があったなんて……」
呆然と呟き、崩れ落ちるように椅子に腰を下ろす。
突きつけられた事実に理解が追い付かず、私は酷く戸惑い、片手で頭を抱えた。
「誤解しないでくれ」
私がショックを受けたと勘違いしたのか、珍しく焦ったように、悠紀くんがいつもより早口で言った。
「おばあさんに頼まれたから戸川さんを引き取ったわけじゃない。順序が逆だ。俺が戸川さんのことを気にして、兄貴や父さんに相談したのは頼まれるより先。戸川さんをこの家に呼んだのは俺の意思。俺がここにいて欲しいと思ったんだ」
殺し文句に心臓が跳ねる。
悠紀くん、そんなこと思っててくれたんだ。
「中野家で虐げられて、声が出なくなるほどのストレスを抱えていながら、それでも戸川さんは俺を気にかけてくれた。純粋に凄いと思った。尊敬すらしたよ」
黒曜石のような瞳でまっすぐに見つめられて、胸の奥がざわめく。
一言一句聞き逃したくない。
私は高鳴る胸を押さえ、全神経を耳に集中させた。
「俺が戸川さんの立場だったら、あの状況で他人を気遣うなんて無理。自分のことだけで手一杯だ。でも、戸川さんは俺を見て足を止めた。雨の中、俺に向かって笑顔で手を振った。あの笑顔が強烈に印象に残ってて……」
いつになく熱心に話していた悠紀くんは、急に声のトーンを落とした。
隣の席から注がれる生暖かい視線を意識してしまったようだ。
「…………」
悠紀くんは顔をしかめて口を閉じ、
「……まあ、ともかく。そんな感じ」
なんとも大雑把に締めくくった。
「どんな感じ!?」
力が抜けたようにかくんと肩を落とした後、亜紀くんがテーブルを両手で叩いて喚いた。
「なんだよもー、いまいいところだったじゃん! オレずっと空気を読んで黙ってただろ!? オレのことは置物だと思っていいから続きを! 続きを是非!!」
「お前は存在そのものがうるさいんだよ。いいから黙れ」
悠紀くんは冷たく言ってそっぽ向いた。
自分の言動を思い出して恥ずかしいのか、形の良い耳が赤くなっている。
窓の外、さきほど悠紀くんが見ていた辺りに目をやるけれど、私には何の異常も見つけられない。
ただ美しく手入れされた庭の風景が広がっているだけだ。
ふと視界の端に映ったものに興味を惹かれて、私は視線を悠紀くんに戻した。
悠紀くんは小さく笑っていた。
「気味悪がられたり、馬鹿にされることはあったけど。羨ましがられたのは初めてだ。俺はあの橋の上でも『なんでこんなものが見えるんだろう』って思ってたのに」
悠紀くんは口元の笑みを隠すようにグラスに口をつけ、カフェオレを飲んだ。
「この際だから打ち明けるけど。俺、出会った日の夜、戸川さんのおばあさんから戸川さんのことを頼まれた」
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呆然と呟き、崩れ落ちるように椅子に腰を下ろす。
突きつけられた事実に理解が追い付かず、私は酷く戸惑い、片手で頭を抱えた。
「誤解しないでくれ」
私がショックを受けたと勘違いしたのか、珍しく焦ったように、悠紀くんがいつもより早口で言った。
「おばあさんに頼まれたから戸川さんを引き取ったわけじゃない。順序が逆だ。俺が戸川さんのことを気にして、兄貴や父さんに相談したのは頼まれるより先。戸川さんをこの家に呼んだのは俺の意思。俺がここにいて欲しいと思ったんだ」
殺し文句に心臓が跳ねる。
悠紀くん、そんなこと思っててくれたんだ。
「中野家で虐げられて、声が出なくなるほどのストレスを抱えていながら、それでも戸川さんは俺を気にかけてくれた。純粋に凄いと思った。尊敬すらしたよ」
黒曜石のような瞳でまっすぐに見つめられて、胸の奥がざわめく。
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「俺が戸川さんの立場だったら、あの状況で他人を気遣うなんて無理。自分のことだけで手一杯だ。でも、戸川さんは俺を見て足を止めた。雨の中、俺に向かって笑顔で手を振った。あの笑顔が強烈に印象に残ってて……」
いつになく熱心に話していた悠紀くんは、急に声のトーンを落とした。
隣の席から注がれる生暖かい視線を意識してしまったようだ。
「…………」
悠紀くんは顔をしかめて口を閉じ、
「……まあ、ともかく。そんな感じ」
なんとも大雑把に締めくくった。
「どんな感じ!?」
力が抜けたようにかくんと肩を落とした後、亜紀くんがテーブルを両手で叩いて喚いた。
「なんだよもー、いまいいところだったじゃん! オレずっと空気を読んで黙ってただろ!? オレのことは置物だと思っていいから続きを! 続きを是非!!」
「お前は存在そのものがうるさいんだよ。いいから黙れ」
悠紀くんは冷たく言ってそっぽ向いた。
自分の言動を思い出して恥ずかしいのか、形の良い耳が赤くなっている。
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