79 / 97
79:お幸せに!(3)
しおりを挟む
「い、いきなり、何を。そんなわけ――」
「ああ」
激しく狼狽える私の前で、悠紀くんはあっさり肯定した。
「……………………へ?」
シリアスな空気がどこかへ吹っ飛び、私は口を半開きにして悠紀くんを見つめた。
目が点になる。
いま、この人、何て言いました?
「多分、出会った時からずっと好きだった。だから、神谷さんの気持ちには応えられない。ごめん」
フリーズしている私を放置して、悠紀くんは神谷さんに頭を下げた。
「ううん。いい。それがあたしじゃなかったのは悲しいけど、戸川さんといると日向くんはよく笑うから。そのまま、幸せなままでいて。誰に何て言われても、日向くんには全力で愛してくれる味方がいるんだから。傷つく必要なんてないよ。忘れないで」
「ありがとう。そうする」
悠紀くんは微笑んだ。
……ええと? あれ?
まだ理解が追い付いてないんですけど、さっきの台詞って、どういうこと?
「ほら。戸川さんのことになると笑うの。悔しいなあ。だからあたしは戸川さんのことが嫌いよ……世界で一番大嫌い」
神谷さんはハンカチではなく、手の甲で涙を拭った。
さっき悠紀くんが言った言葉が頭の中をぐるぐる回り、思考回路が処理落ちしてしまいそうだ。
脳から煙を噴き上げている私を置いて、二人の会話は進む。
「そんなこと言うなよ。俺、神谷さんと戸川さんなら仲良くなれるんじゃないかなって思ってたよ」
「はっ。バッカじゃないの、あんたの目は節穴なの!? どう見たってあいつとあたしじゃ相性最悪でしょ!」
神谷さんは鼻で笑い、濡れた目をきっ、と尖らせた。
いつもの調子を取り戻してきたようだ。目に力がある。
「信じらんない。バカ。鈍感。この際だから言っとくけど、SNSで絡んでた『のあ』って、あたしだから」
「え、神谷さんが『のあ』だったのか。それは……いつもお世話になってます?」
恐らく本人は至って本気なのだろうが、悠紀くんの台詞はとぼけたように聞こえる。
全く同じ感想を抱いたらしく、神谷さんは口元を押さえて噴き出した。
「何それ、もう、ほんとにバカ! なんであたしが『のあ』って名乗ってたのかもわかんないんでしょ! そのままずーっと一生考えてろ、ばーかっ! あんたみたいな鈍感男なんて、こっちから見捨ててやるわよ!」
神谷さんは泣きながら笑って、次に私に顔を向けた。
「戸川さん。同居を解消して退学しろって言ったの、あれ、全部嘘だから」
「……嘘で終わらせていいの?」
魂が宇宙へ飛んでいた私はその言葉で我に返り、居住まいを正した。
「当たり前でしょ。本気なわけないじゃない。そんなことしたら日向くんに恨まれるわ」
「ちょっと待て。どういうことだ? 何の話?」
悠紀くんの眼差しが険しくなる。
「ああ、やっぱり怒った。ほんと、戸川さんのことになるとこれだから……ふん、もういいわよ!」
神谷さんはもう一度目元を拭ってから、すくっと立ち上がった。
「日向くんの無事は確認できたし、邪魔者は退散するわ! 日向くんは名実ともにあんたのものよ、おめでとう! お幸せに!!」
神谷さんは怒鳴るように言って、保坂くんの腕を掴んだ。
「玲央も行くわよ! あんたをここに残していったら絶対面倒なことになる! わかってるんだからね!」
「えー、なんで。そんなことないのに」
「いいから行くの! 空気読め!!」
神谷さんは保坂くんを連れ、騒々しい嵐のように保健室を出て行った。
「ああ」
激しく狼狽える私の前で、悠紀くんはあっさり肯定した。
「……………………へ?」
シリアスな空気がどこかへ吹っ飛び、私は口を半開きにして悠紀くんを見つめた。
目が点になる。
いま、この人、何て言いました?
「多分、出会った時からずっと好きだった。だから、神谷さんの気持ちには応えられない。ごめん」
フリーズしている私を放置して、悠紀くんは神谷さんに頭を下げた。
「ううん。いい。それがあたしじゃなかったのは悲しいけど、戸川さんといると日向くんはよく笑うから。そのまま、幸せなままでいて。誰に何て言われても、日向くんには全力で愛してくれる味方がいるんだから。傷つく必要なんてないよ。忘れないで」
「ありがとう。そうする」
悠紀くんは微笑んだ。
……ええと? あれ?
まだ理解が追い付いてないんですけど、さっきの台詞って、どういうこと?
「ほら。戸川さんのことになると笑うの。悔しいなあ。だからあたしは戸川さんのことが嫌いよ……世界で一番大嫌い」
神谷さんはハンカチではなく、手の甲で涙を拭った。
さっき悠紀くんが言った言葉が頭の中をぐるぐる回り、思考回路が処理落ちしてしまいそうだ。
脳から煙を噴き上げている私を置いて、二人の会話は進む。
「そんなこと言うなよ。俺、神谷さんと戸川さんなら仲良くなれるんじゃないかなって思ってたよ」
「はっ。バッカじゃないの、あんたの目は節穴なの!? どう見たってあいつとあたしじゃ相性最悪でしょ!」
神谷さんは鼻で笑い、濡れた目をきっ、と尖らせた。
いつもの調子を取り戻してきたようだ。目に力がある。
「信じらんない。バカ。鈍感。この際だから言っとくけど、SNSで絡んでた『のあ』って、あたしだから」
「え、神谷さんが『のあ』だったのか。それは……いつもお世話になってます?」
恐らく本人は至って本気なのだろうが、悠紀くんの台詞はとぼけたように聞こえる。
全く同じ感想を抱いたらしく、神谷さんは口元を押さえて噴き出した。
「何それ、もう、ほんとにバカ! なんであたしが『のあ』って名乗ってたのかもわかんないんでしょ! そのままずーっと一生考えてろ、ばーかっ! あんたみたいな鈍感男なんて、こっちから見捨ててやるわよ!」
神谷さんは泣きながら笑って、次に私に顔を向けた。
「戸川さん。同居を解消して退学しろって言ったの、あれ、全部嘘だから」
「……嘘で終わらせていいの?」
魂が宇宙へ飛んでいた私はその言葉で我に返り、居住まいを正した。
「当たり前でしょ。本気なわけないじゃない。そんなことしたら日向くんに恨まれるわ」
「ちょっと待て。どういうことだ? 何の話?」
悠紀くんの眼差しが険しくなる。
「ああ、やっぱり怒った。ほんと、戸川さんのことになるとこれだから……ふん、もういいわよ!」
神谷さんはもう一度目元を拭ってから、すくっと立ち上がった。
「日向くんの無事は確認できたし、邪魔者は退散するわ! 日向くんは名実ともにあんたのものよ、おめでとう! お幸せに!!」
神谷さんは怒鳴るように言って、保坂くんの腕を掴んだ。
「玲央も行くわよ! あんたをここに残していったら絶対面倒なことになる! わかってるんだからね!」
「えー、なんで。そんなことないのに」
「いいから行くの! 空気読め!!」
神谷さんは保坂くんを連れ、騒々しい嵐のように保健室を出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る
ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。
義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。
そこではじめてを経験する。
まゆは三十六年間、男性経験がなかった。
実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。
深海まゆ、一夜を共にした女性だった。
それからまゆの身が危険にさらされる。
「まゆ、お前は俺が守る」
偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。
祐志はまゆを守り切れるのか。
そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。
借金の取り立てをする工藤組若頭。
「俺の女になれ」
工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。
そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。
そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。
果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【電子書籍化・1月末削除予定】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる
大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】
多くの方にお読みいただき感謝申し上げます。
感想たくさんいただき感謝致します。全て大切に読ませていただいております。
残念ですが、この度電子書籍化に伴い規約に基づき2026年1月末削除予定です。
よろしくお願いいたします。
-----------------------------------------------------------
大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。
「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」
死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。
国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!?
「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」
エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって……
常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。
※どんな形であれハッピーエンドになります。
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる