こじらせ悪役ループ中、異国の皇子に甘く口説かれる

ひがらく

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〈ツガイ〉4*

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「転生者……?」

 ぱちりと、驚いたように瞬いた白銀の瞳に見つめられる。
 思わず、ふっと苦笑がこぼれた。

「俺はもともと別の世界の人間です。気づいたらこの世界に転生していました。ティラン・ヴァレンスとして」
 
 俺もまた、この世界にとってイレギュラーな存在だ。
 時間の檻に囚われたのがクロヴィスではなく俺の方だったのも、それが原因かもしれない。むしろそのせいで、この世界のどこかで歪みが生じた可能性もある。

「信じてもらえないかもしれませんが、前世の俺の世界では、この世界は物語として書かれていました」
 
 今思えば、俺はほとんど固定観念のように、ずっとシナリオ通りに動いてしまっていた。
 物語の外の世界へ少しも目を向けようともせず、カナトに固執して、何度も何度も同じような時間を繰り返してしまった。

「ティラン・ヴァレンスは性悪な人物です。俺はそんな彼の人生を、型を当てはめられたかのように生きてきた。俺は、病のせいで25歳には必ず死ぬ運命です。それを救うことができるのは聖女であるカナトだけだった。それに固執して、立ち振る舞っていた……それが、何度も時間を繰り返してしまう原因だったのかもしれない」

 もっと周りを見ようとしなかった。
 自分の意思で、人生を生きようとしなかった。
 俺は、ずっと今まで自分自身の首を締めていたんだ。

「はっきりとわかってしまえば、情けのない話ですね……」

 情けなさすぎて、乾いた笑いしか出てこない。
 
 最初の方で気づくべきだったんだ。
 前世という余計な知識があったからこそ、変な方向に思考が捩じれてしまった。
 もっと早く東国を訪れていたなら、クロヴィスとの約束を放り出していなければ、俺から会いに行こうとしていれば、ティラン・ヴァレンスに拘らず、カナトに固執していなければ。
 後になってみれば、反省すべきことだらけだ。

 ……でも、それはもう全て終わったことだ。
 
 俺はクロヴィスと〈ツガイ〉になって、ループから抜け出した、らしい。
 曖昧に思うのは、体感的に何か変わったのかといわれても、まだよくわからなかったからだ。ただ、俺の中の魔力はいつもより穏やかに流れているようで、こうしてクロヴィスと触れ合っているだけで、心地がいい。
 
 クロヴィスのあたたかい体温に擦り寄り、甘くて優しい香りを吸い込むと、じんわりと安心感に満たされていくのを感じる。

 本来だったら命を落とすはずの俺を生かしたのは、クロヴィスの選択だったんだ。一度目の人生でクロヴィスが俺を〈ツガイ〉に選んでくれたから。それで例えこの長いループに巻き込まれたとしても、俺は――……
 
 ――違う、それだけじゃない、だろ。

 選んだのは、クロヴィスだけじゃない。
 『ぼくといっしょにたくさんいきる?』
 そう問いかけられたときに、俺が、望んだんだ。
 『生きたい』って。
 それにクロヴィスが応えてくれた。

 俺はただ、巻き込まれただけじゃない。
 
 俺自身が、望んだんだ。
 
 そのことにはっと気づいて、クロヴィスを見る。
 
「クロヴィス、俺は」
「……先生の二面性って、そこからくるものだったんだ」

 ぽつりと呟かれたその声は、何かに気づいたようだった。

「……え?」
「普段は穏やかなのに、感情が揺れて表に出たときは、振る舞いや口調が崩れたりしていた。もしかして――そっちが、素?」

 くい、と顎を指先で持ち上げられ、自然とクロヴィスを見上げる形になる。
 首をわずかに傾げながら、瞳の奥まで覗き込むように見つめられる。白銀の瞳がゆっくりと細まり、思わず背筋がぞわりとした。

「な……なんですか」
「ナカ、見せて」

 再び押し倒されて、身体がベッドにぽすんと沈む。大きく開いた脚の間にクロヴィスの身体がするりと入り込み、腰を引き寄せられた。
 柔らかくなっているそこに、熱をぴたりと押し当てられ、再び捩じ込ませようとしてくる。

「クロヴィスっ、今は大事な話を……っ」
「ずっと不思議だったんだ。いつもは理性的で静かな大人なのに、感情が溶けたときの先生はすごく可愛くて、素直で、愛らしくて。もっと知りたいって」
「あっ、んぅっ」

 ぬぷんと、硬く膨張した熱がナカに挿入ってくる。あんなに欲を吐き出したはずなのに萎えることもなく、肉壁を擦りながら潜りこんできた。
 さっきまであれほどしてたんだ。ふやけたように柔らかいし、ぐちゃぐちゃに掻き回されて濡れているし、クロヴィスの形も覚えてしまっている。
 また、ぞわぞわと熱がぶり返してきそうだった。
 
「く、くろ……んっ、っあぁ」
「ねぇ、先生。教えて。ナカの名前はなんていうの? 僕に、全部ちょうだい」

 それだけは、絶対にだめだ。
 
 「ティラン・ヴァレンス」だけでなく、「オレ」まで明け渡してしまったら、もう取り返しのつかないことになりそうで、逃げられなくなる。
 この世界での出来事を俯瞰して見ていた意識。それが俺の精神を唯一守ってくれるテリトリーだった。それが俺を冷静にさせていた。向こうの「オレ」は無関係なんだ。
 それを奪われるのは、怖い。

「教えて」
「だめだっ、それは、……いえな、っぁん……!」

 首を横にふると、ぐちゅんと強く奥を突かれて、体がびくりと震える。

「あぅっ……! だめ、んっ、おくは、だめ……っ」
「どうして教えてくれないの」

 また激しく腰を打ち付けるように、ぱちゅ、ぱちゅと揺さぶってくる。
 それだけじゃない。最奥のさらに奥の方、入ったら絶対にダメな所をこじ開けようと、圧をかけてきた。ずりずりと弱いしこりを押し潰しながら、奥へ、奥へと抉るように先端がノックをしてくる。
 ひくりと、喉が鳴った。

「〈ツガイ〉は魂の契約だ。あなたが転生していようと関係ない。その魂は、もう僕のもの」
「横暴……っ! だぁ、から、おく、ぁんっ、だめだって、いってる、だろっ……!」
「ああ、ほら。口調が崩れてる。ふふ、かわいいね。もっと知りたいな、ホントの姿」
「だぁ、め、んぅっ……むりっ……ん、ンッ、んんっ」
「無理じゃない、ね? お願い。隠さないで」

 片膝を抱えられて、少しだけ身体が横に傾く体勢に変わる。そのままぐぐっ、と体重を乗せられ――

「僕にぜんぶ、見せて」
「ァっ、それ、だ、めッ」

 ――ずちゅんッ、と押し潰すように奥をこじ開けられた。

「ひっ、ぁッ、……――っ!」

 今までに入ったことのない深さを貫かれ、背中がしなり、頭が真っ白になる。ちかちかと視界が明滅し、身体中が耐えられないほどの激しい快感に襲われて、息ができない。
 
「……あはっ、イちゃった? 奥、すごい熱くて、ひくひくして、締め付けてくる。気持ちいいんだね」
「あっ、……ぁッ、……っ」
「少し刺激が強すぎたかな。ゆっくり動くね」
「っや、ぁっ、うごくっ、あぁッ」

 イくのが、とまらない。
 気持ちよすぎて、頭がぐちゃぐちゃになっている。
 ぐぷ、くぷと奥まったひだをひっかけるような抜き差しに、思わずぎゅっとナカに力が入ってしまう。強く締め付けてしまったのか、クロヴィスの動きがぴたりと止まり、彼の長い睫毛がふるりと震えた。

「ん……そんなに焦らなくても、ちゃんと奥までたっぷり注いであげる」
 
 どくりと、腹の奥に迸った白濁の熱さに、また「ぁっ」とイってしまう。すべてが敏感になってしまって、何をされても達してしまう。今まで感じたことのない気持ち良さと辛いほどの快楽に、ずっと堕とされ続けている。

 休む間も与えられず、クロヴィスはまたゆっくりと腰を動かしはじめた。ぐちゅりとナカを少し擦られただけで、びりびりした甘くて辛い刺激が全身に走る。思わずその背に爪を立て、痕が残るほどに強く縋りついた。
 
「あっ、いっ、ぁあっ……くる、し、んぁっ」
「お腹がいっぱいで苦しい? たくさん美味しそうに飲み込んでくれたから、きっとナカは僕ので溢れてるね。ほら、いってみて。もっと欲しいって、気持ちいいって」
「っぁ、んあっ、ぁあっ、きも、ち……いっ?」
「そう、素直でいい子だね。もっとたくさん、一緒に気持ちいいことしようね。ここもハジメテだから、ゆっくり慣らしていこうね」

 涙に揺れる視界の向こうで、クロヴィスは嬉しそうに微笑んでいた。
 頬は赤く染まり、額には小さな汗がにじんでいる。解けかけた髪は乱れ、余裕のない表情を浮かべながらも、理性を保っていた。けれど、欲情を隠しきれない濡れた瞳で、俺をじっとみつめている。
 こんな状況でも彼を綺麗だと思ってしまうのは、惚れた弱みなのかもしれない。

 熱に浮かされ、とろけたその顔がゆっくりと近づいてくる。強すぎる刺激にびくびくと震える俺をあやすように、そっと唇を重ねた。

「ねぇ、先生の全部、僕にちょうだい?」
「んぅっ……んぁっ、ぁあっ、む、りっ、だって」
「だーめ。全部くれるまで、終わってあげないよ」

 腰を掴む手も、頭を撫でる手も、優しいはずなのに、どうしようもなく強引で、逃げ場を与えてくれない。
 快楽にゆるゆると身体を揺さぶられ、抗うこともできず、ただ縋りつくしかできなかった。
 
「だから、ね、教えて? ナカの名前」
「……あっ、ぁっ、ッ、……あぁっ、……ッ」

 押し寄せる快楽が強すぎて、思考が溶けていく。何を喋ればいいのかもわからず、もう言葉なんて出てこなかった。
 それでも首を横に振り続けていると、涙でぐしゃぐしゃになった俺の顔を見つめながら、クロヴィスは小さく笑った。

「飛ばしちゃったかな……でも、観念して欲しいな。僕がどれだけあなたを愛し尽くしたいのか。まだわからないのなら、これからたくさん教えてあげるね」

 時間はたっぷりあるのだと、耳元で甘く囁かれて。

 俺はただこの優しくて強引なぬくもりに、ただ溺れることしかできなかった。
 
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