38 / 95
010-⑦ 儀式!?
しおりを挟む「サベラにも様々な種族のサベラがいる。ニンゲンだって、オメガだってそうだろ」
慰められてる?
いや、そうは言っても俺は明らかに見た目で彼らより見劣りしてると思う。ウィルって目が悪いのかな……。
「お前だってもっと落ち着きのある奴の方がいいって言ってただろ」
「そうは言っていない。お前みたいな奴が想定外だったというだけだ。成人してるくせに小さいのも気になるし……?」
「これでもお前より三つ年上ですけど!?」
俺がムキになると、ウィルが笑う。広い空間に快活な笑い声が響く。
ウィルの俺への気持ちを確認してるみたいになってるじゃないか。恥ずかしいな。
「年を食えば三つ違いは誤差だろ。そんなところに拘るなんて変な奴だな。そういう文化圏にいたのか?」
「俺はまだ若い。お前もだ。変な奴って。お前にその言葉そっくり返してやるよ、王子様」
「王子様。相手が王子様なら普通は喜ぶものじゃないのか。お前の世界にもいるだろ、王子様が」
「普通って何だよ。俺は男だよ。王子様と結婚するのは女だよ」
「それは何故だ」
「何故?」
御伽話だって、薄幸な女の子が王子様に嫁いで幸せになるのは王道展開。
「カイ。お前にはもっと早い段階で伝えておくべきだったが、更に結婚を嫌がられると思って言わなかった」
突然、ウィルが声のトーンを変えた。嫌がられている自覚があったのか……。
「後継問題があるんだ。兄夫婦には今、子供がいない。できないんだ」
「………」
「俺は地位や名誉に興味がない。だが、国を傾けるわけにいかない。お前が俺の子供を産むまでは解放しないつもりだ」
「……うわあ」
ウィルはこの辺を躊躇わない。
「ハッキリ言ったな、お前」
「前から言ってるだろ」
「それがお前の責務? 弟だっているんだろ。そんなの別にお前が背負うことじゃなくないか?」
ウィルがまた高笑いだ。今日はよく笑うな。緊張からの反動か?
「そうだ。言い訳だ」
「え?」
「俺は『かわいい』お前を完全に俺のものにしたい」
「!?」
ウィルの糖度がここに来て倍増だ!
俺の肩を抱いてくるので、ウギャッとなった。顔が近い。
「こ、こら、離せ。枢機卿が来たら見られる」
「王に公認されたんだ。式の前に番になってもいいんだぞ」
「え、……ええ!?」
あれで公認されたの? 番になるってどういう……。
ま、まさか。ア、アレをするということ?
ウィルが顔を近づけてくる。鼻の頭が触れる。
「あ」
相手は犬だぞ! ときめくな! 俺!
まだ知り合ってから一ヶ月程度の関係なのに。
「や、やめろ、ウィル……」
ウィルが俺の襟を剥いて、首筋を甘噛みしてくる。俺はウィルの胸を叩くが全然離れてくれない。
そこへ。
「ウィルバード王子」
呼ばれてウィルがパッと振り返った。
「規律が乱れます。教会内ではおやめください」
ここに来て、初めて見た。
「お待たせして申し訳ございません」
「いや」
いよいよお出ましである。
「初めまして、新しいヴァンダラー。お会いできて光栄です」
「あ、どうも……」
ウィルと俺は椅子から立って、俺だけが間抜けな挨拶をする。
そこにいるのは鳥人間だ。
大きな背中の翼は隠しきれないようで、上半身には布を巻いたようなアシンメトリーな服を着ていた。
「明日からはしばらく雨が降るようです。今日の移動は賢いですね」
「ああ」
英語。俺にもわかるように話してくれている。
「こちらへ」
三人で長椅子の間を歩いて行って、祭壇の前の段を上がる。
鳥人間が振り返る。
鷲だ。威嚇してくるような目に、鋭い嘴。翼は制御されて綺麗に畳まれている。
神の使い……。
「儀式は慣例に基づいて行われます。神はいつも見ておられます。そのような浮ついた気持ちで信仰を止めないでください。王子。ヴァンダラー。あなたがたは伴侶を得る幸運に恵まれました。それは素晴らしいことです。あなたがたにとっても、この世界にとっても。これで現国王の御代は安泰です」
「………」
口調とは裏腹に、鳥人間は全然笑っていなかった。
ウィルは実につまらなそうな顔をしていた。グランバーグに来てから、というかこれまで見たことのない表情である。
この二人、仲悪い?
その後、別の若い鳥人間がやってきて、抱えていた三つの椅子を祭壇前にササッと並べて去っていった。
「それでは、始めましょう」
そう言って、鳥人間はおもむろに指し棒を取り出した。
そして、俺とウィルは日が暮れるまで鳥人間の枢機卿から説法を聞かされたのだった。
婚約、成立……。
15
あなたにおすすめの小説
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
2026/01/09 加筆修正終了
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
転生したら猫獣人になってました
おーか
BL
自分が死んだ記憶はない。
でも…今は猫の赤ちゃんになってる。
この事実を鑑みるに、転生というやつなんだろう…。
それだけでも衝撃的なのに、加えて俺は猫ではなく猫獣人で成長すれば人型をとれるようになるらしい。
それに、バース性なるものが存在するという。
第10回BL小説大賞 奨励賞を頂きました。読んで、応援して下さった皆様ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる