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「つっ……! 落ち着きなさい二人とも!!」
シェナは我に返った。痛みはない。意識もある。死んでいない。
瞼を持ち上げると、フレイドが苦悶の表情をしていた。両手には刃が一つずつ握られている。一つはシェナの手にしている剣、もう一つはテオのナイフだ。彼の手の平に刃が食い込んで、血の筋がいくつも零れ落ちていった。
シェナは驚きのあまり剣を手放した。
「ふ、フレイド様! 私の所為で怪我を……」
「君の所為じゃない」
「そうだ、お前が悪いんだよフレイド!」
テオがナイフをさらに押し込もうとし、フレイドは呻いた。溢れる血が痛々しい。シェナはたまらず叫んだ。
「テオやめて!」
「何言ってるんだよシェナ。大丈夫、すぐに……」
「もうやめて! 私の話も聞いてよ……! お願いだから……!」
シェナの頬を涙が零れていく。テオは青ざめてすぐにナイフを放した。血だまりにナイフが落ちる。
「フレイド様、治療しないと、手が」
シェナは震えていた。涙が止まらない。自分の所為でフレイドを傷付けてしまったと、深く悔やんでいた。
「シェナ、すまない」
「ど、うして謝るんですか」
フレイドの腕がシェナの体を包んだ。フレイドは苦笑しながら言う。
「服も髪も、私の血で汚してしまうだろうから先に謝ったんだ。無事で良かった」
「どうしてそんなこと……私が悪いのに……」
「さっきも言ったけれど、君は何も悪くないよ。君はただ一生懸命だっただけだ。私はそんな君に救われた。だから今度は私が君を救いたかったんだ。生きて欲しい、これからも。一緒に」
フレイドの言葉も温もりもじんわりとシェナの中に染み込んでいく。
「私、は、生きていてもいいんですか」
誰に問うでもなくシェナは呟いた。過去の自分に、かつての自分に問いかけているのかもしれない。
「……当たり前だろ」
答えたのはテオだった。
「シェナの命は僕のだ。僕の命もシェナと共にある。勝手に死んだりしたら、地獄でも天国でも絶対に追いかけていくからな」
「ちょ、ちょっと怖いよテオ。でも……ありがとう」
シェナはテオを見上げる。彼は少し辛そうな顔をしていた。緑の目を、フレイドに向ける。
「フレイド、シェナを安全な場所に。僕はリーゼロッテ様を屋敷へ連れて帰ります」
「分かった。助かる」
「それと。昨日の話、受けます。貴方のところで雇ってください。僕とシェナは一緒ですから」
「……待ってるよ。行こうかシェナ。さすがに手が痛い」
「テオ、絶対来てよ。待ってるから」
テオは、大人しくなったリーゼロッテを抱えながら小さく呟いた。
「必ず行く。シェナ……ごめん」
テオを見送り、シェナはフレイドと共に彼の屋敷へ行った。血相を変えた使用人たちにフレイドが介抱されている間、シェナも暖かく出迎えられた。また少しだけ、シェナの目から涙が零れた。
シェナは我に返った。痛みはない。意識もある。死んでいない。
瞼を持ち上げると、フレイドが苦悶の表情をしていた。両手には刃が一つずつ握られている。一つはシェナの手にしている剣、もう一つはテオのナイフだ。彼の手の平に刃が食い込んで、血の筋がいくつも零れ落ちていった。
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「ふ、フレイド様! 私の所為で怪我を……」
「君の所為じゃない」
「そうだ、お前が悪いんだよフレイド!」
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シェナの頬を涙が零れていく。テオは青ざめてすぐにナイフを放した。血だまりにナイフが落ちる。
「フレイド様、治療しないと、手が」
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「シェナ、すまない」
「ど、うして謝るんですか」
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「どうしてそんなこと……私が悪いのに……」
「さっきも言ったけれど、君は何も悪くないよ。君はただ一生懸命だっただけだ。私はそんな君に救われた。だから今度は私が君を救いたかったんだ。生きて欲しい、これからも。一緒に」
フレイドの言葉も温もりもじんわりとシェナの中に染み込んでいく。
「私、は、生きていてもいいんですか」
誰に問うでもなくシェナは呟いた。過去の自分に、かつての自分に問いかけているのかもしれない。
「……当たり前だろ」
答えたのはテオだった。
「シェナの命は僕のだ。僕の命もシェナと共にある。勝手に死んだりしたら、地獄でも天国でも絶対に追いかけていくからな」
「ちょ、ちょっと怖いよテオ。でも……ありがとう」
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「必ず行く。シェナ……ごめん」
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