キスだけは断固拒否します!現実に帰りたくないので!~異世界での私は救世主らしいです~

空木切

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城と王子と従者と精霊

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 緊迫したやり取りに私は顔を上げ、周りを見回して、びっくりした。ゴーレムというのだろうか、土塊で出来た無骨な人型があちこちにいて、更には鳥型やライオン型の土塊もある。その全てに私たちは囲まれていた。上を見ると、先ほどのヴェールがふわふわと浮かんでいる。
「な、何か色んな物に囲まれてるんですけど大丈夫なんですか王子様!?」
「その呼び方はやめろ。不愉快だ」
 頭上から悲鳴のような黒板を引っ掻くような音がして耳にキーンとくる。
「痛い、頭痛い」
「叩き起こされて不満のようだな」ユリスは呟いて頭上を見上げた。どうやら浮いているヴェールが精霊らしい?
「エコ様、先ほど精霊は何と言っていましたか?」
 ラウロさんがゴーレムたちに向かって水の剣を構えながら言う。本当に私にしか分からなかったのか。
「守らなければならない、ってそれだけ聞こえましたけど」
「……我々が危害を加える存在と認識されてしまったんでしょうか」
「エコ、僕の後ろに!」
「あ、うん!」
 シルフィに応えようとするも、やはり離してもらえなかった。
「貴様は動くな。私に従えと言っただろう」
 ユリスは相変わらず偉そうに言い、例の十字型の石を取り出した。
「ついでだ。試してみよう」
 ユリスは一番近くの人型ゴーレムを睨みつけた。向こうも反応したのか膠着状態が解け、一体が動き出したのを皮切りにどやどやとゴーレムたちが襲い掛かって来た。動きは遅いが動く度に地面から振動が伝わって来る。はっ! 私はともかくシルフィが危ない。彼にはもう魔力が無いのだ。
「ラウロさん! シルフィをお願いします! 魔力がほぼ残って無いんです!」
「承知しました」
 ラウロさんに任せておけば安心、と胸を撫で下ろしたところでまた不快な感覚が体を襲う。魔力が持っていかれているのだ。見ると、ユリスは十字型の石を銃のように構えて鳥型のゴーレムを次々撃ち落としていた。それにしても銃弾の威力がすごい。まるでライフルである。
 人型のゴーレムも迫って来る。ユリスはすぐに石の先に刃を作るといとも簡単に切り伏せた。その間私はユリスの腕の中でひたすら振り回される。せめて持ち上げてくれればいいもののあっちへこっちへぐいぐい引っ張られたり押されたりで体が圧迫されて気持ち悪い。ただでさえ魔力が持っていかれる感覚が嫌なのに、もう本当に最悪的に気分が悪くてもう最悪。
「あのすみません。もうちょっと優しい感じでお願いできませんか? 色々、気持ち悪くて、もう最悪なんですけど」
「この私が使ってやってるのだから良いだろう。貴様の身を守る為でもあるんだからな。……しかし数が多いな。増えているのか? どちらにせよ全て始末するだけだが」
 ユリスは全く息切れもすることも無く最小限の動作でゴーレムたちを次々地に沈めていった。私を振り回しながら。私はこれを新たなアトラクションとでも思い込むことにして何とか気持ちを保つ。わー嫌なアトラクション。命名、傲慢地獄。
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