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従者の名
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私にも何か出来ないかな。昨日受け取った短剣を忘れずジャージに挟んでから思案する。ラウロと同じ部屋のシルフィに話を聞いてこようか。でも動くなと言われてしまったし……。
そもそも探していいのだろうか。探して何になるんだろう。戻って欲しいと頼むのは違う気がする。私だって今会社に戻れと言われたって戻りたくないし、周りがどうこう言ったところで本人にその気が無ければ無意味だ。
ユリスも、もういない人間はどうでもいい風だった。二人はあくまで仕事だけの付き合い、雇い主と労働者の関係なんてそんな程度のものか。本当に必要なら引き留めるはずだ。お互いがお互いに、不要になった。それだけの話。
頭じゃ分かる。でも、本当にあの二人はそれでお終いでいいのか、ぐるぐる考えてしまう。そこで静かに部屋の扉が開いた。思考を中断して、戻って来たユリスに話をしようと立ち上がって、私は固まった。
「え、ラウロ……!?」
「昨日の返事を聞いていないと思いまして」
部屋に入って来たのはユリスではなく、ラウロだった。平然と普通にここにいる。私は目を見張った。
「何で!? い、今ラウロがいなくなったって聞いたのに、え?!」
「あれはユリス様を外へ出す為の方便です。皆さん快く協力してくださいましたよ」
て、敵に回したくない人間ナンバーワン! 私は唖然とラウロの顔を見上げていた。つまり彼はここの兵士を味方にしてこの状況を作り上げたらしい。兵士はラウロがいなくなったと嘘を吐き、わざと混乱している風に見せかけてユリスを連れ出す。上手くいったわけだ。恐ろしい。
「みんなで王子様を騙したりして大丈夫?」
国の抱える兵士ならラウロよりもユリスの方が立場が上のはずだ。ラウロは冗談を言うように肩を竦めた。
「言ったでしょう。あの方は嫌われ者なんですよ」
「そ、そこまで?」
部下が仕事だの立場を放棄して団結するくらいにはユリスは嫌われているらしい。出会ったばかりの頃の彼を思えば分からなくもないけど、さすがに同情してしまう。
私が苦々しい顔をしていると、ラウロは鬱陶しそうに目を細めた。
「貴方はどうしてそんな顔をするんでしょうね。ここは笑うところですよ」
「笑えないよ。冗談でも笑えない」
きっぱり言い切る。ラウロは視線を落とした。
「やはりユリス様の方が良いですか。私よりも」
「何の話?」
「昨日の話ですよ。エコ様。私を愛してくださいますか? ユリス様以上に、いえ、誰よりも。もし頷いてくださるなら、私は貴方の為に生きると誓いましょう。そして、どんな望みでも叶えて差し上げます。ユリス様と仲良くしろと言うならばそうします。盾になって欲しければいくらでも傷付きます。鬱陶しいのなら今すぐに消えます」
連ねられた言葉たちに気圧された。私は彼が何を言っているかよりも、それが本心かどうか分からない不気味さで、ろくな答え方も出来なかった。
「ちょ、ちょっと一回落ち着いて。そんないきなり色々言われても怖いよ」
「私は逃げられなかったんです」
ラウロは悔やむように呟いた。
「昨晩、全てを捨てて逃げるつもりで……しかし出来ませんでした。ユリス様の言う通りです。私は奴隷であることを望んでいたんですよ。逃げて、居場所を失うことが恐ろしくて、動けませんでした」
流れるように語って、黙ってしまった。多分、私に出来ることは一つだ。私はベッドに座って、ラウロにも促した。
「隣座って。話してよ」
「何の話をしますか」
「貴方の話だよ。ラウロの話じゃなくて。本当はそれを聞いて欲しくて来たんでしょ。私みたいな外の、無関係の人間の方が話しやすいから。まず自己紹介してよ」
私はこの世界とも王家とも関係ない外部の人間だ。関係ない人間だから話せることもあるだろう。ラウロは憂鬱そうに表情を曇らせた。少し距離を開けて隣に座ると、
「この話は内密にしていただけますか。私たちの家や王族に関わることですから、当然ユリス様にも決して伝えないでください」
「うん」
話したくて来たのに、話すのはあまり気が進まない、そんな風だった。
そもそも探していいのだろうか。探して何になるんだろう。戻って欲しいと頼むのは違う気がする。私だって今会社に戻れと言われたって戻りたくないし、周りがどうこう言ったところで本人にその気が無ければ無意味だ。
ユリスも、もういない人間はどうでもいい風だった。二人はあくまで仕事だけの付き合い、雇い主と労働者の関係なんてそんな程度のものか。本当に必要なら引き留めるはずだ。お互いがお互いに、不要になった。それだけの話。
頭じゃ分かる。でも、本当にあの二人はそれでお終いでいいのか、ぐるぐる考えてしまう。そこで静かに部屋の扉が開いた。思考を中断して、戻って来たユリスに話をしようと立ち上がって、私は固まった。
「え、ラウロ……!?」
「昨日の返事を聞いていないと思いまして」
部屋に入って来たのはユリスではなく、ラウロだった。平然と普通にここにいる。私は目を見張った。
「何で!? い、今ラウロがいなくなったって聞いたのに、え?!」
「あれはユリス様を外へ出す為の方便です。皆さん快く協力してくださいましたよ」
て、敵に回したくない人間ナンバーワン! 私は唖然とラウロの顔を見上げていた。つまり彼はここの兵士を味方にしてこの状況を作り上げたらしい。兵士はラウロがいなくなったと嘘を吐き、わざと混乱している風に見せかけてユリスを連れ出す。上手くいったわけだ。恐ろしい。
「みんなで王子様を騙したりして大丈夫?」
国の抱える兵士ならラウロよりもユリスの方が立場が上のはずだ。ラウロは冗談を言うように肩を竦めた。
「言ったでしょう。あの方は嫌われ者なんですよ」
「そ、そこまで?」
部下が仕事だの立場を放棄して団結するくらいにはユリスは嫌われているらしい。出会ったばかりの頃の彼を思えば分からなくもないけど、さすがに同情してしまう。
私が苦々しい顔をしていると、ラウロは鬱陶しそうに目を細めた。
「貴方はどうしてそんな顔をするんでしょうね。ここは笑うところですよ」
「笑えないよ。冗談でも笑えない」
きっぱり言い切る。ラウロは視線を落とした。
「やはりユリス様の方が良いですか。私よりも」
「何の話?」
「昨日の話ですよ。エコ様。私を愛してくださいますか? ユリス様以上に、いえ、誰よりも。もし頷いてくださるなら、私は貴方の為に生きると誓いましょう。そして、どんな望みでも叶えて差し上げます。ユリス様と仲良くしろと言うならばそうします。盾になって欲しければいくらでも傷付きます。鬱陶しいのなら今すぐに消えます」
連ねられた言葉たちに気圧された。私は彼が何を言っているかよりも、それが本心かどうか分からない不気味さで、ろくな答え方も出来なかった。
「ちょ、ちょっと一回落ち着いて。そんないきなり色々言われても怖いよ」
「私は逃げられなかったんです」
ラウロは悔やむように呟いた。
「昨晩、全てを捨てて逃げるつもりで……しかし出来ませんでした。ユリス様の言う通りです。私は奴隷であることを望んでいたんですよ。逃げて、居場所を失うことが恐ろしくて、動けませんでした」
流れるように語って、黙ってしまった。多分、私に出来ることは一つだ。私はベッドに座って、ラウロにも促した。
「隣座って。話してよ」
「何の話をしますか」
「貴方の話だよ。ラウロの話じゃなくて。本当はそれを聞いて欲しくて来たんでしょ。私みたいな外の、無関係の人間の方が話しやすいから。まず自己紹介してよ」
私はこの世界とも王家とも関係ない外部の人間だ。関係ない人間だから話せることもあるだろう。ラウロは憂鬱そうに表情を曇らせた。少し距離を開けて隣に座ると、
「この話は内密にしていただけますか。私たちの家や王族に関わることですから、当然ユリス様にも決して伝えないでください」
「うん」
話したくて来たのに、話すのはあまり気が進まない、そんな風だった。
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(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
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