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南国の道のり
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緩衝地帯を歩く私たち。今度は馬車も無いので徒歩移動である。目指すは南の国リジェナントだ。
「嬢ちゃんたち、護衛がいるだろ?」
前に立ちはだかったのは髭がもじゃもじゃの男の人だ。ミケは小首を傾げて「んー」と考える振りをした。
「いらなーい。おじさん汚いし、血の匂いがするし?」
「……ちっ」
諦めて去って行く。しばらく歩くと、今度は若い男の人が声をかけて来た。
「これは珍しい! 旅の人たちかな? どう? 良いお酒あるけど、買ってかない? 女の子には割引するよ」
「え、あの、お酒はちょっと」
私がたじたじになっていると、ミケが割り込んで来た。
「あたしはお酒飲まないからいらない。それより売り物はどこにあるわけ?」
「向こうだよ。どう? 見に来ない? ジュースもあるよ」
「えー。遠いからいい。そんなに歩いたら足が痛くなっちゃうもん。売り物ぜーんぶここに持って来てくれるなら、考えてもいいけどぉ?」
「それはー……ちょっとね、難しいかな、量が多いから」
男の人はしどろもどろになって、ミケは「それじゃまた今度ね」と踵を返した。私たちも続いて歩く。
歩き始めて三時間ほど、ずっとこの調子だ。魔物を警戒していても、出てくるのは怪しい人間ばかり。その度にミケが軽くあしらって相手は降参して去って行く。本当に私たちは、というか旅の人間は良いカモとして見られているらしい。ユリスの身なりが良いのも原因だと思うけど。
「貴様はいつまで付いてくるつもりだ」
ユリスがミケを見下ろして言った。ミケは意外そうな顔をして彼を見上げる。
「何、迷惑ってか? でもさぁ、トゥーリエに残るわけにもいかねーじゃん。オレずっと女の振りしなきゃいけないし」
ユリスはミケを警戒しているようだ。疑いの眼差しを向けている。一方ミケはマイペースだ。
「別にあんたらの邪魔するつもりはないよ。今だってちゃーんと仕事してるのに……まあ、どうしてもって言うなら」
こんな緩衝地帯の道中でいなくなったら困る。と考えているとミケと目が合った。ミケはにーっと笑みを浮かべる。
「エコに泣きつこうかなぁ。ねー、エコはどう思う? あたしがいると迷惑?」
「全然迷惑じゃないし、むしろいて欲しい……」
正直に答えると、ユリスに睨まれた。思わず身が竦む。美形の睨みは迫力あるんですよ。自覚して欲しい。
ミケは機嫌が良さそうだ。
「ほらね~! 大体、あたしがいなくてどうやってここ抜けるわけ?」
「あの程度の輩、蹴散らす方法はいくらでもある」
「そうは言うけどね。ここの人たちは仲間意識が強いから、一人殴ったら大勢飛んできてあっという間に身ぐるみ剥がされてお終いだよ? ここじゃ魔物より人間の方が怖いの。本当に。穏便が一番だって」
話を聞いただけで私は怖くなってしまった。無法地帯なだけある。ついミケに身を寄せると、
「どうしたのエコ、そんなにあたしのことが好き?」
「違う! いや違わないけど、ちょっと怖くなってきちゃって」
「そんな照れなくてもいいのにぃ。じゃ、ユリスのことは好き?」
「え!? その、ふ、普通……」
何で今ユリスが関係あるんだ! びっくりして色んな意味で心臓が止まるかと思った。
「普通?」
ユリスが静かに呟く。私を睨んでいる気配がする。私は絶対に無視する。絶対にだ。何も意識したくない。私とユリスの間には何も無かった。そう、ユリスは何も言ってないし私も何も聞いていない!
「普通か」とユリスがまた何か物言いたげ~に後ろで呟いている。私はそ知らぬふりをして歩を進めた。
「嬢ちゃんたち、護衛がいるだろ?」
前に立ちはだかったのは髭がもじゃもじゃの男の人だ。ミケは小首を傾げて「んー」と考える振りをした。
「いらなーい。おじさん汚いし、血の匂いがするし?」
「……ちっ」
諦めて去って行く。しばらく歩くと、今度は若い男の人が声をかけて来た。
「これは珍しい! 旅の人たちかな? どう? 良いお酒あるけど、買ってかない? 女の子には割引するよ」
「え、あの、お酒はちょっと」
私がたじたじになっていると、ミケが割り込んで来た。
「あたしはお酒飲まないからいらない。それより売り物はどこにあるわけ?」
「向こうだよ。どう? 見に来ない? ジュースもあるよ」
「えー。遠いからいい。そんなに歩いたら足が痛くなっちゃうもん。売り物ぜーんぶここに持って来てくれるなら、考えてもいいけどぉ?」
「それはー……ちょっとね、難しいかな、量が多いから」
男の人はしどろもどろになって、ミケは「それじゃまた今度ね」と踵を返した。私たちも続いて歩く。
歩き始めて三時間ほど、ずっとこの調子だ。魔物を警戒していても、出てくるのは怪しい人間ばかり。その度にミケが軽くあしらって相手は降参して去って行く。本当に私たちは、というか旅の人間は良いカモとして見られているらしい。ユリスの身なりが良いのも原因だと思うけど。
「貴様はいつまで付いてくるつもりだ」
ユリスがミケを見下ろして言った。ミケは意外そうな顔をして彼を見上げる。
「何、迷惑ってか? でもさぁ、トゥーリエに残るわけにもいかねーじゃん。オレずっと女の振りしなきゃいけないし」
ユリスはミケを警戒しているようだ。疑いの眼差しを向けている。一方ミケはマイペースだ。
「別にあんたらの邪魔するつもりはないよ。今だってちゃーんと仕事してるのに……まあ、どうしてもって言うなら」
こんな緩衝地帯の道中でいなくなったら困る。と考えているとミケと目が合った。ミケはにーっと笑みを浮かべる。
「エコに泣きつこうかなぁ。ねー、エコはどう思う? あたしがいると迷惑?」
「全然迷惑じゃないし、むしろいて欲しい……」
正直に答えると、ユリスに睨まれた。思わず身が竦む。美形の睨みは迫力あるんですよ。自覚して欲しい。
ミケは機嫌が良さそうだ。
「ほらね~! 大体、あたしがいなくてどうやってここ抜けるわけ?」
「あの程度の輩、蹴散らす方法はいくらでもある」
「そうは言うけどね。ここの人たちは仲間意識が強いから、一人殴ったら大勢飛んできてあっという間に身ぐるみ剥がされてお終いだよ? ここじゃ魔物より人間の方が怖いの。本当に。穏便が一番だって」
話を聞いただけで私は怖くなってしまった。無法地帯なだけある。ついミケに身を寄せると、
「どうしたのエコ、そんなにあたしのことが好き?」
「違う! いや違わないけど、ちょっと怖くなってきちゃって」
「そんな照れなくてもいいのにぃ。じゃ、ユリスのことは好き?」
「え!? その、ふ、普通……」
何で今ユリスが関係あるんだ! びっくりして色んな意味で心臓が止まるかと思った。
「普通?」
ユリスが静かに呟く。私を睨んでいる気配がする。私は絶対に無視する。絶対にだ。何も意識したくない。私とユリスの間には何も無かった。そう、ユリスは何も言ってないし私も何も聞いていない!
「普通か」とユリスがまた何か物言いたげ~に後ろで呟いている。私はそ知らぬふりをして歩を進めた。
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