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南国の道のり
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私とシルフィはのんびりと砂浜まで歩く。
「何だか面白い話だったねえ」
「僕も欲しいな、セレン」
「いつか貰えるといいね」
シルフィは足を止め、じっと私を見上げた。私も見返す。大きい目が海みたいにきらきらしてて可愛いぞ。
「エコは……」
「何?」
「やっぱり何でもない! ねえ、海って何でずっとうねうねしてるの?」
「波のこと? うーん。何で? 何でって……何で?」
そういえば何でだろう。学生時代に勉強したような気がしないでもない。私がうんうん唸っているのでシルフィが先に歩き出した。私も付いて行く。
倉庫をぐるっと回り込んで、砂浜に到着。シルフィは早速波打ち際に駆け寄るとしゃがんだ。すぐに声を上げる。
「うぇっ、しょっぱい! エコー! この水飲めない!」
「飲めないよ! 海の水はしょっぱいの」
「えーそうなの? 何で?」
「何で? ……何で……え、塩分が含まれてるから……? でも何で塩分が?」
まずい。私、何も分かってない! シルフィはこの世界に来たばかりの私に色々教えてくれたというのに、私は海のことすら教えられない。な、情けない。
「海って変なんだね」
「そ、そうだね。本当、変なんだよね……ごめんシルフィ……」
不出来な大人で申し訳ない。その後は海を眺めて、大きな波が立つ度にお互い教え合っていると、
「あの波大きいよ! ねっ、あっちの」
「エコ様」
「わっ! びっくりした!?」
すっかり気が抜けていて後ろにラウロがいたのに気付かなかった。振り向くと、ラウロは困った顔をしていた。
「驚かせてすみません」
「いいよいいよ、私こそごめん。それでどうしたの? 何かあった?」
「実は少し相談がありまして。まず、精霊の居場所が分かりました」
「え、いいことじゃん!」
「ですが。少し特殊な場所にあるらしく海流が複雑で、普通の手段で行くのは難しいそうです」
しかし。この国の王様は年に一回は精霊のところへ訪れて儀式をするのだという。その為、恐らく王様なら行く手段を知っている。
「じゃ、じゃあ結局またお城へ行かなきゃいけないと」
「そうなります。ここから大分離れた場所だそうです」
気が遠くなってきた。ラウロも眉間に皴が寄っている。そう簡単にいかないとは思っていたけどやっぱり簡単じゃない。
「はは……ところで相談って? これが相談?」
「いいえ。相談はですね、買った船がとても小さいんです」
「あーそうなんだ」
ダリアさんたちの使っている船を売ってもらったわけだから文句は言えない。
「数日間に及ぶ航行などは想定されていないらしく、城のある場所までこの船で行くのは不可能だそうです。そこで、二つ選択肢があります」
「悩みが多いね……」
「まだ未完成品だという船が完成するまで待つか、もしくは、今の小さな船で先へ進み、道中で大きな船を購入するか。どちらがいいと思いますか? ちなみにダリア様の話では、船を買う人は滅多にいない為、作る人間もほぼいないだろうということですが」
ダリアさんは貴重な船大工らしい。
未完成の船というのは、一週間ほど待って欲しいと言われた船のことだろう。完成まで一週間か、それ以上かかるかもしれないと。その間私たちは動けずひたすら待つことになる。
そして道中で船を買うなら、時間は無駄にならないけど、代わりに船を買える確実な保証がない。そうなると。
「私はダリアさんから買った方がいいと思うけどな」
「ええ。ですが、道中で買う船の方が物が良いかもしれません。それに、ダリア様の船が本当に完成するかどうかも不明です。完成品が見えない以上、貴族相手だからと高価で貧相な物を売りつけられる可能性もあります」
「そ、それは無いと思うけど。でも私は、ダリアさんの船が良いかな。ダリアさん、船を作るのが好きなんだろうし、そういう人が作る船って良さそう」
未完成の船も、趣味で作ってる、とか言ってたはずだ。趣味で船を作るくらいだからきっと好きなのだろう。
「でも最終的にはユリスが決めるんだよね。私の意見じゃ参考にならないんじゃない?」
「いいえ、そんなことはありませんよ。……それでは行きましょうか。ユリス様を迎えに」
「何だか面白い話だったねえ」
「僕も欲しいな、セレン」
「いつか貰えるといいね」
シルフィは足を止め、じっと私を見上げた。私も見返す。大きい目が海みたいにきらきらしてて可愛いぞ。
「エコは……」
「何?」
「やっぱり何でもない! ねえ、海って何でずっとうねうねしてるの?」
「波のこと? うーん。何で? 何でって……何で?」
そういえば何でだろう。学生時代に勉強したような気がしないでもない。私がうんうん唸っているのでシルフィが先に歩き出した。私も付いて行く。
倉庫をぐるっと回り込んで、砂浜に到着。シルフィは早速波打ち際に駆け寄るとしゃがんだ。すぐに声を上げる。
「うぇっ、しょっぱい! エコー! この水飲めない!」
「飲めないよ! 海の水はしょっぱいの」
「えーそうなの? 何で?」
「何で? ……何で……え、塩分が含まれてるから……? でも何で塩分が?」
まずい。私、何も分かってない! シルフィはこの世界に来たばかりの私に色々教えてくれたというのに、私は海のことすら教えられない。な、情けない。
「海って変なんだね」
「そ、そうだね。本当、変なんだよね……ごめんシルフィ……」
不出来な大人で申し訳ない。その後は海を眺めて、大きな波が立つ度にお互い教え合っていると、
「あの波大きいよ! ねっ、あっちの」
「エコ様」
「わっ! びっくりした!?」
すっかり気が抜けていて後ろにラウロがいたのに気付かなかった。振り向くと、ラウロは困った顔をしていた。
「驚かせてすみません」
「いいよいいよ、私こそごめん。それでどうしたの? 何かあった?」
「実は少し相談がありまして。まず、精霊の居場所が分かりました」
「え、いいことじゃん!」
「ですが。少し特殊な場所にあるらしく海流が複雑で、普通の手段で行くのは難しいそうです」
しかし。この国の王様は年に一回は精霊のところへ訪れて儀式をするのだという。その為、恐らく王様なら行く手段を知っている。
「じゃ、じゃあ結局またお城へ行かなきゃいけないと」
「そうなります。ここから大分離れた場所だそうです」
気が遠くなってきた。ラウロも眉間に皴が寄っている。そう簡単にいかないとは思っていたけどやっぱり簡単じゃない。
「はは……ところで相談って? これが相談?」
「いいえ。相談はですね、買った船がとても小さいんです」
「あーそうなんだ」
ダリアさんたちの使っている船を売ってもらったわけだから文句は言えない。
「数日間に及ぶ航行などは想定されていないらしく、城のある場所までこの船で行くのは不可能だそうです。そこで、二つ選択肢があります」
「悩みが多いね……」
「まだ未完成品だという船が完成するまで待つか、もしくは、今の小さな船で先へ進み、道中で大きな船を購入するか。どちらがいいと思いますか? ちなみにダリア様の話では、船を買う人は滅多にいない為、作る人間もほぼいないだろうということですが」
ダリアさんは貴重な船大工らしい。
未完成の船というのは、一週間ほど待って欲しいと言われた船のことだろう。完成まで一週間か、それ以上かかるかもしれないと。その間私たちは動けずひたすら待つことになる。
そして道中で船を買うなら、時間は無駄にならないけど、代わりに船を買える確実な保証がない。そうなると。
「私はダリアさんから買った方がいいと思うけどな」
「ええ。ですが、道中で買う船の方が物が良いかもしれません。それに、ダリア様の船が本当に完成するかどうかも不明です。完成品が見えない以上、貴族相手だからと高価で貧相な物を売りつけられる可能性もあります」
「そ、それは無いと思うけど。でも私は、ダリアさんの船が良いかな。ダリアさん、船を作るのが好きなんだろうし、そういう人が作る船って良さそう」
未完成の船も、趣味で作ってる、とか言ってたはずだ。趣味で船を作るくらいだからきっと好きなのだろう。
「でも最終的にはユリスが決めるんだよね。私の意見じゃ参考にならないんじゃない?」
「いいえ、そんなことはありませんよ。……それでは行きましょうか。ユリス様を迎えに」
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