キスだけは断固拒否します!現実に帰りたくないので!~異世界での私は救世主らしいです~

空木切

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船上

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 船に乗ってから四日目。私は寝室で、薄っすら覚醒した。シルフィが何か呟く声が心地よく耳に入ってくる。
「シルフィ?」
 夢か幻か、と思いながら問うと、
「エコ、起きた?」
 とシルフィが答えた。どうやら現実らしい。瞼を持ち上げて顔を向けると、シルフィが私の隣で本を開いていた。
「私……寝てばかりいる気がする」
 昨日はミケと話した後で寝て、更に夜もぐっすり寝て、今だ。いつ寝室に移動したのか記憶にない。まだふわふわしている頭で色々思い出そうとする。すると、シルフィが小さな手で私の頭を撫でた。
「ど、どうしたのいきなり」
「エコ、顔が悲しそうだからね」
 そして今度は床に寝転がると、私の頭をぎゅっと抱きしめた。そのまま撫でる。突然の癒し展開に私の頭は余計ふわふわになった。
「よしよし。エコは良い子だよー」
「照れる……」
「安心した?」
「したした」
 固まっていた心が解れるような心地だ。シルフィ、私の心のオアシス。天国。楽園。
 シルフィは私の頭を解放すると、私の目をじっと見て言った。
「ぎゅってすると安心するよね。魔法使う時、エコがぎゅってしてくれるから、いつも安心するんだ、僕」
「そう、なんだ……」
 嬉しい。大したことはしてないのに、そう言われると役に立てているようで嬉しかった。
「でもシルフィ、何でここにいるの? 私が寝てたから?」
 寝室には私とシルフィしかいない。みんな甲板に出ているようだ。シルフィは少し大人びた表情で答えた。
「エコが寂しいかと思って。僕がいた方がいいって、ミケも言ってたし」
「……そっか」
 昨晩のことを思い出す。昨晩、ハインツがいきなり大声を上げたのも、ミケがわざとやったんだろう。ミケはやっぱり優しい。ちょっと分かりにくいけど。
 後でミケにも礼を言うとして、先にシルフィに言った。
「シルフィ、ありがとうね。元気出たよ」
「エコも一緒に勉強する?」
 シルフィが本に触れながら言った。私は体を起こして首を横に振る。
「ううん。私、ちょっと外の様子を見てくるよ」
「戻ってくる?」
「うん。あー、でもまた寝ちゃうかもしれないし……。シルフィも一緒に外に行こうよ」
 私は片膝を立てた格好でシルフィを促した。しかしシルフィはどこかを見たまま動かない。
「どうしたの? 眠い?」
「僕、もうちょっとここにいたいな。エコと一緒に」
 シルフィは私を上目遣いで見上げた。私は間髪入れずにその場に寝転がる。
「いいよ!!」
 一生ここから出ないというくらいの気持ちになった。


**


 ラウロとユリスと微妙に気まずいまま二日ほど、事件も無く平和な道のりだった。そうして今日、船に乗ってから六日目。
 島が近くにあるので、そこに寄って、王様や城に関しての情報収集をするという。物資の補給も。
 久々の地面に私はテンションが上がっていた。
「地面だ~!」
「エコ、地面好きだよね」
「地に足の付いた生き方が一番なんだよ……」
 シルフィに言ってどうする、ということを私は言って、少しだけ島に降り立った。うろうろしていると怒られそうなので少しだけだ。
 ユリス、ラウロ、ハインツの三人は情報集めと買い物に行ってしまった。残った私たちは船の見張りを兼ねた留守番だ。
 シルフィと二人で船着き場の周りをぐるっと歩いてすぐに船に戻った。甲板で寝そべっていたミケが不思議そうに私たちを見る。
「んあ? 早かったな」
「うん。何かあっても困ると思って」
「そうだな。島の連中にやたら注目されてるしな」
 とミケは溜め息を吐いた。私は首を傾げる。
「注目? そう?」
「え。気付いてなかったのかよ。……一体何が気になるんだかねぇ。船がでかいからか?」
「ああそういえば。ダリアさんが言ってたけど、最近は島を行き来する人があんまりいないんだって。だからじゃない? 珍しいんだよきっと」
「ふーん……」
 ミケは興味があるのかないのか鼻を鳴らして寝返りを打った。
 私はふと島の方に目をやる。道の真ん中に白い髪の少年がいた。少年は、こちらに向けて小さく手を振っている。知り合いがいるのかと思うも、しかしここには私たちの船しかない。
 面白がって振ってるだけかな、と思い私は一応手を振り返した。少年はこくこく頷いて笑みを浮かべる。可愛い子だなあ。お母さんと買い物かなあ。いいなあ。
「何してんだ?」
 私がにやにやしながら手を振っていると、ミケが訝し気に言った。私は一瞬ミケを見下ろして、視線を戻した。
「あそこに可愛い男の子がいて……って、あれ?」
 いない。まさか。
「げ、幻覚? 嘘ぉ」
「大丈夫かよ……つか、エコって、年下が趣味? あたしはどう?」
 ミケは寝転がったまま両手を口元に当て可愛い子ぶる。
「そもそもミケって私より年下なの?」
「全然?」
「私の年知らない癖に……」
 それでもミケは年上だろうなあと何となく思った。一歩間違えればおじさんなのに、少女ぶっても全く違和感がない。恐ろしいことだ。
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