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目覚めた時、毛布の中には私しかいなかった。何枚も重なった毛布をどかして体を起こす。みんながテーブルを囲んで何か食べているのが見えた。朝食だ。ミケが私を見て笑みを浮かべた。
「お、なんだ腹減って起きたか」
「エコさんっ! エコさんの分もちゃんとあるからね!」
「おはようエコ」
シルフィの頭がぼさぼさだ。まだ眠そうに見える。私は挨拶を返して氷のように冷たい水で顔を洗った。
パンのみという簡単な朝食を終えて、ラウロが出立の準備をしている間に私は言った。
「ユリスさん。ディキタニアの為の農業の仕事って私にも出来ますか?」
世界を救う旅が終われば次に考えるのは普通の生活のことだ。昨日のユリスの話だと、ディキタニアの人たちにメセイルの土地を貸すという話だった。開拓して農業して、ディキタニアの人たちの為に食物を生産する。私も手伝いたいと思ったのだ。
「ちょっとくらいなら食べ物も貰えますよね?」
目の前に座るユリスに言うが、ユリスは渋い顔をして黙っている。
「え、駄目なんですか?」
「エコには無理だろ。肉体労働だぞ」
床でだらけているミケが「無理無理」と手を振った。私はむっとする。
「私、昔おばあちゃんの畑手伝ったことあるし」
「規模が違うだろ規模が」
そう言うミケを睨んでいて気付いた。ミケはこれからどうするつもりなんだろう。この中で出身地が違うのは私とミケだけだ。
「ミケは緩衝地帯に帰るの?」
「オレなあ、どうすっかなー」
「メセイルへ移住する気があるならそれでも構わんぞ」
とユリスが言った。ミケは「あー」と苦々しい顔をする。何か都合が悪いのだろうか。私は後押しをする。
「前にメセイルに住みたいって言ってなかったっけ? いいじゃん。移住しなよ」
「えー……いやー、でもなあ」
「俺の村に来る? 人手が足りないから歓迎してくれると思う」
ハインツが言うもミケはいまいち乗り気では無さそうだ。相変わらず可愛らしい顔で唇を尖らせている。
「まあ、有難いけど出来れば人が少ないところの方が良いかなーオレは」
「僕の家はどう? 師匠と二人で森の中で暮らしてるんだよ」
「その師匠とやらもこんな得体の知れない奴が来たら困るだろ」
シルフィの誘いを断るとはなんてことだ。ミケはうんうん唸りながら床を転がっている。
あ、そうだ。名案が浮かんだ。
「じゃあ私と一緒に住む? それならいいでしょ」
「えっ」
「え!?」
「エコ、一緒に師匠のところに帰らないの?」
「えっ!?」
ミケが驚いてハインツが驚いて、シルフィの発言に私が驚いた。私がレドとシルフィの生活に入るのはちょっと難しいかな。森、魔物多いし。仕事無さそうだし。当然いずれは菓子折りなどを手に挨拶には行きますけれど。社会人として。
四人とも黙った後、ミケが体を起こしながら声を上げた。
「いや~、オレ的にはエコと住めればそりゃ嬉しいけどさ、なあ?」
と半笑いで顔を見回した。なあと言われても。
「エコ様。貴方にはユリス様とのことが」
「馬車の確認をする。行くぞ」
言うなりユリスは外へ出て行ってしまった。ラウロも追っていなくなる。……ユリスは気を使ってくれたのだろうか。ありがとう。またラウロに何か言われたら私は怒って飛び出してたところだ。静かな部屋で、ふうと息を吐く。
「…………誰か一人くらい冗談言う奴いねぇの!?」
ミケが急に叫んだ。叫んでいる内容もよく分からない。
「ど、どうしたのいきなり」
「あのさぁ、ほら、本当に嬉しいには嬉しいんだけど、エコはそうじゃねえだろ?」
「そうじゃない?」
ミケは立ち上がってうろうろした。頭が疑問符まみれの私の前に立って言う。
「オレの相手してる場合じゃないだろって、ことだよ!?」
「なるほど!? え?」
私は気圧されてよく分からないままに返事をした。ミケは一人で頭を抱えたり手を振ったりしている。
「言わないと分かんねぇのかよどんだけ鈍いんだよ、オレどうすりゃいいんだよ、って何でオレ一人でこんなに焦ってんの!?」
「し、知らないけど」
私に聞かれても。ミケは頭を抱えてしゃがんでしまった。私はさっぱりついて行けずにミケを観察する。呻きの合間に押し殺した叫びが聞こえた。
「ああ、もう、いきなりあんなこと言うから無駄に……!」
「うわ耳真っ赤……」
「言うな! こんの馬鹿がよぉ~!」
ミケは私の頭を拳骨で挟むとぐりぐり攻撃してきた。割れる!
「ぎゃー痛い痛い! 頭が!」
「ふざけんな~!」
「ごめんって、何か分かんないけどごめんって!」
ハインツが止めに入る前に止まった。ミケはチッ!! と大きめの舌打ちをすると溜め息を吐く。
「はあ……オレは一人で寂しく緩衝地帯に帰る。だからオレのことは放っとけ」
「そんなこと言うなら」
「エコは喋んな」
「ひ、ひどい」
「もっと考えてから発言しろ」
ミケはまた大きな溜め息を零して床に転がった。何だったんだ一体。ミケは一緒に住んでくれないということだけは分かった。
「お、なんだ腹減って起きたか」
「エコさんっ! エコさんの分もちゃんとあるからね!」
「おはようエコ」
シルフィの頭がぼさぼさだ。まだ眠そうに見える。私は挨拶を返して氷のように冷たい水で顔を洗った。
パンのみという簡単な朝食を終えて、ラウロが出立の準備をしている間に私は言った。
「ユリスさん。ディキタニアの為の農業の仕事って私にも出来ますか?」
世界を救う旅が終われば次に考えるのは普通の生活のことだ。昨日のユリスの話だと、ディキタニアの人たちにメセイルの土地を貸すという話だった。開拓して農業して、ディキタニアの人たちの為に食物を生産する。私も手伝いたいと思ったのだ。
「ちょっとくらいなら食べ物も貰えますよね?」
目の前に座るユリスに言うが、ユリスは渋い顔をして黙っている。
「え、駄目なんですか?」
「エコには無理だろ。肉体労働だぞ」
床でだらけているミケが「無理無理」と手を振った。私はむっとする。
「私、昔おばあちゃんの畑手伝ったことあるし」
「規模が違うだろ規模が」
そう言うミケを睨んでいて気付いた。ミケはこれからどうするつもりなんだろう。この中で出身地が違うのは私とミケだけだ。
「ミケは緩衝地帯に帰るの?」
「オレなあ、どうすっかなー」
「メセイルへ移住する気があるならそれでも構わんぞ」
とユリスが言った。ミケは「あー」と苦々しい顔をする。何か都合が悪いのだろうか。私は後押しをする。
「前にメセイルに住みたいって言ってなかったっけ? いいじゃん。移住しなよ」
「えー……いやー、でもなあ」
「俺の村に来る? 人手が足りないから歓迎してくれると思う」
ハインツが言うもミケはいまいち乗り気では無さそうだ。相変わらず可愛らしい顔で唇を尖らせている。
「まあ、有難いけど出来れば人が少ないところの方が良いかなーオレは」
「僕の家はどう? 師匠と二人で森の中で暮らしてるんだよ」
「その師匠とやらもこんな得体の知れない奴が来たら困るだろ」
シルフィの誘いを断るとはなんてことだ。ミケはうんうん唸りながら床を転がっている。
あ、そうだ。名案が浮かんだ。
「じゃあ私と一緒に住む? それならいいでしょ」
「えっ」
「え!?」
「エコ、一緒に師匠のところに帰らないの?」
「えっ!?」
ミケが驚いてハインツが驚いて、シルフィの発言に私が驚いた。私がレドとシルフィの生活に入るのはちょっと難しいかな。森、魔物多いし。仕事無さそうだし。当然いずれは菓子折りなどを手に挨拶には行きますけれど。社会人として。
四人とも黙った後、ミケが体を起こしながら声を上げた。
「いや~、オレ的にはエコと住めればそりゃ嬉しいけどさ、なあ?」
と半笑いで顔を見回した。なあと言われても。
「エコ様。貴方にはユリス様とのことが」
「馬車の確認をする。行くぞ」
言うなりユリスは外へ出て行ってしまった。ラウロも追っていなくなる。……ユリスは気を使ってくれたのだろうか。ありがとう。またラウロに何か言われたら私は怒って飛び出してたところだ。静かな部屋で、ふうと息を吐く。
「…………誰か一人くらい冗談言う奴いねぇの!?」
ミケが急に叫んだ。叫んでいる内容もよく分からない。
「ど、どうしたのいきなり」
「あのさぁ、ほら、本当に嬉しいには嬉しいんだけど、エコはそうじゃねえだろ?」
「そうじゃない?」
ミケは立ち上がってうろうろした。頭が疑問符まみれの私の前に立って言う。
「オレの相手してる場合じゃないだろって、ことだよ!?」
「なるほど!? え?」
私は気圧されてよく分からないままに返事をした。ミケは一人で頭を抱えたり手を振ったりしている。
「言わないと分かんねぇのかよどんだけ鈍いんだよ、オレどうすりゃいいんだよ、って何でオレ一人でこんなに焦ってんの!?」
「し、知らないけど」
私に聞かれても。ミケは頭を抱えてしゃがんでしまった。私はさっぱりついて行けずにミケを観察する。呻きの合間に押し殺した叫びが聞こえた。
「ああ、もう、いきなりあんなこと言うから無駄に……!」
「うわ耳真っ赤……」
「言うな! こんの馬鹿がよぉ~!」
ミケは私の頭を拳骨で挟むとぐりぐり攻撃してきた。割れる!
「ぎゃー痛い痛い! 頭が!」
「ふざけんな~!」
「ごめんって、何か分かんないけどごめんって!」
ハインツが止めに入る前に止まった。ミケはチッ!! と大きめの舌打ちをすると溜め息を吐く。
「はあ……オレは一人で寂しく緩衝地帯に帰る。だからオレのことは放っとけ」
「そんなこと言うなら」
「エコは喋んな」
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