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第1章 学園編
第2話 なんか小さくて不可解な少女
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「ねぇ君、迷子? お母さんかお父さんはいるかな?」
みなが見て見ぬふりをする中で、僕だけが見過ごせなかった。
まだ学校にも通っていないような女の子が、拾ってくださいだなんてメッセージを掲げている。どう考えても、普通じゃあなかった。
もしかすると、迷子ではないのかもしれない。両親に捨てられた? それで、この紙を持って立っていろと言いつけられて?
様々な憶測が、浮かんでは消えていく。
そのどれもが、前向きなものではなかったが。
目の前の少女は、キョトンと目を丸くして、驚いたような表情をしていた。
きっと、急に声をかけられたものだから戸惑っているのだろう。無理もない。
このぐらいの歳なら、初対面の人と話せなくとも仕方がない。
「拾ってくれるのか?」
「……え?」
返事が返ってくるだなんて、思ってもいなかった。
この後どうするか、警察に引き渡そうかと考えていた僕は、最初なにを言われたのか聞き取ることが出来なかった。
え? と聞き返すと、彼女はもう一度、今度ははっきりと丁寧に言い直した。
「これを読んだのだろう? 声をかけてくれたということは、つまり拾ってくれるのだと、私は思ったのだが」
見た目も、声も、歳相応の幼いもの。しかし、その言動はどうだ。まるで、大人そのものではないか。
なんなんだこの、不安になるような、脳がバグるような話し方は。
早くも、声をかけたことを後悔していた。
「拾う拾わないじゃなくて、親はその……どこにいますか?」
なぜかかしこまった話し方になってしまう。
「親はいない。そんなことは、どうでもいいんだ。私の望みは――」
そこまで言って、少女はおもむろにお腹を押さえる。
「私の望みは、お腹が空いたから何か食べたい、だ」
「はあ……」
「ここじゃあ、お金というものがなければ、なにも出来ないらしい。さっきも、あそこにいる人間にそう言われた」
そう言って少女が指さしたのは、香ばしい匂いを漂わせているパン屋だった。
なるほど……無一文でパンが買えなかったから、あんな奇行に及んでいた訳か。
だとしても、一人でいる理由となぜ拾ってくださいだなんて文面なのかは、謎のままだが。
それでもなんとなく、うっすらとだが全体像が見えてきた気がした。
「分かった。あのパンを買ってくればいいんだね?」
「……! くれるのか?」
途端、今までつまらなさそうに伏せられたままだった瞳がキラキラと輝き出す。
よっぽどお腹が空いていたのか?
「パンぐらい、別にいいよ。二百ちょっと出せば買えるし」
「パン……パンというのか、あの食べ物は」
驚いたことに、少女はパンの存在を知らないらしかった。
みなが見て見ぬふりをする中で、僕だけが見過ごせなかった。
まだ学校にも通っていないような女の子が、拾ってくださいだなんてメッセージを掲げている。どう考えても、普通じゃあなかった。
もしかすると、迷子ではないのかもしれない。両親に捨てられた? それで、この紙を持って立っていろと言いつけられて?
様々な憶測が、浮かんでは消えていく。
そのどれもが、前向きなものではなかったが。
目の前の少女は、キョトンと目を丸くして、驚いたような表情をしていた。
きっと、急に声をかけられたものだから戸惑っているのだろう。無理もない。
このぐらいの歳なら、初対面の人と話せなくとも仕方がない。
「拾ってくれるのか?」
「……え?」
返事が返ってくるだなんて、思ってもいなかった。
この後どうするか、警察に引き渡そうかと考えていた僕は、最初なにを言われたのか聞き取ることが出来なかった。
え? と聞き返すと、彼女はもう一度、今度ははっきりと丁寧に言い直した。
「これを読んだのだろう? 声をかけてくれたということは、つまり拾ってくれるのだと、私は思ったのだが」
見た目も、声も、歳相応の幼いもの。しかし、その言動はどうだ。まるで、大人そのものではないか。
なんなんだこの、不安になるような、脳がバグるような話し方は。
早くも、声をかけたことを後悔していた。
「拾う拾わないじゃなくて、親はその……どこにいますか?」
なぜかかしこまった話し方になってしまう。
「親はいない。そんなことは、どうでもいいんだ。私の望みは――」
そこまで言って、少女はおもむろにお腹を押さえる。
「私の望みは、お腹が空いたから何か食べたい、だ」
「はあ……」
「ここじゃあ、お金というものがなければ、なにも出来ないらしい。さっきも、あそこにいる人間にそう言われた」
そう言って少女が指さしたのは、香ばしい匂いを漂わせているパン屋だった。
なるほど……無一文でパンが買えなかったから、あんな奇行に及んでいた訳か。
だとしても、一人でいる理由となぜ拾ってくださいだなんて文面なのかは、謎のままだが。
それでもなんとなく、うっすらとだが全体像が見えてきた気がした。
「分かった。あのパンを買ってくればいいんだね?」
「……! くれるのか?」
途端、今までつまらなさそうに伏せられたままだった瞳がキラキラと輝き出す。
よっぽどお腹が空いていたのか?
「パンぐらい、別にいいよ。二百ちょっと出せば買えるし」
「パン……パンというのか、あの食べ物は」
驚いたことに、少女はパンの存在を知らないらしかった。
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