【徒然妖怪譚】私とトウフの奇妙な共同生活

只野誠

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【第七章】私と人生という名の恐ろしい壁と目覚めてしまった性癖

【第七章】私と人生という名の恐ろしい壁と目覚めてしまった性癖【六十八話】

「えっと…… あれは本当に心霊現象じゃないんですか?」
 このお客様しつこい、そうは思っても相手はお客様です。
 それを口に出してはいけませんし、笑顔を絶やすわけにはいかないですね。
 私、本音が出やすいからね。
 つい口から出てしまうので気を付けないといけません。
「あんな心霊現象ないですよ」
 そう言って笑顔を作ります。営業スマイルだけど、笑顔は笑顔ですよ。

「まあ、それは確かに。じゃあ、あれはなんだったんですか?」
 確かにあんな心霊現象あったことありませんよ。
 なんなんですかね。
「あれは…… なんなんでしょうか? 私にもわかりかねますね」
 心当たりがないわけでもないですが、でも違うんでしょうね。
 私が知っているものとは。
「いい条件の物件だっただけに残念です」
 お客様は本当に残念そうにしていますね。
 私も残念ですよ、本当に。あのアパートの空き部屋を埋めれるチャンスでしたから。
 駅から遠いから、近くの大学に通う人くらいしか借りないんですよ、あそこ。
「本当に。うちがご紹介できる物件では一番お客様の条件に合っていたのですが……」
 うーん、色々とリストを見ますが、やっぱりあの物件より安い場所はないですね。
 大家さんが放任主義で、家賃が上がってないだけで古いアパートとはいえ相場よりもかなり安いんですよ、あのアパート。

「本当に事故物件ではなく?」
 このお客様、やけに事故物件を気にしてきますね。
「それは本当ですよ。過去に事故物件だったこともありません。今までこんなことなかったんですが……」
 私の知る限りは、ですが。
 この不動産で私が働きだす前は知りませんけど。
 そんな話は聞いたことないですね。

「そうですか、大学からも近くてよかったんですが。このあたりで条件に合うのはありますか?」
 そうなんですよ。
 駅からは遠いけど、大学からはちょうどいい距離なんですよ。
 昔は大学生の方がよく使ってくれていたのですが、最近は実物のボロアパートを見ると、若い方は引いちゃいますからね。

「少々家賃が上がってしまいますが、ここなんていかがでしょうか?」
 そう言って築十年のワンルームマンションを勧めます。
 こっちのほうが新しいですが部屋面積とかは狭いんですよね。
「むっ…… 家賃結構上がりますね」
 それと、お客様は気づいていませんが、大学からも結構距離があります。
 徒歩だときつい距離ですね。
「そうですね、でも相場よりは大分安いかと」
 それとお客様には言えないですが、ここの大家さんは少し難ありの方で、あんまりお勧めしたくない物件ですね。
 大家さんがクレーマー気質なんですよね。
 入る時も出るときも大体もめます。

「やっぱりあのアパート、事故物件じゃないんですか?」
 その話を蒸し返しますか。
 本当にしつこい方ですね。
「あのアパートはかなり年季の入った建物ですので。後は…… 大家さんが家賃のつり上げを言ってこないだけで、私も実はもう少し取れるとは思っているくらいの物件だったんですよ」
 けど家賃を上げるのは大変なんですよね。
 借りている人の同意をもらわないといけないので。
 めんどくさい限りですよ。
「それを聞くと更に名残惜しいですね。まあ、あんな奇妙なことあった後では住む気にはなれないですが……」
 本当に残念そうですね。
 まあ、本当にお客様のご希望にピッタリの物件でしたしね。

「ですよね。私のほうでも独自に調べさせていただきますので…… もし原因が分かって解決したらどうなされますか?」
 うーん、調べて解決は……
 できなくはないですね。
 恐らくできるとは思いますが。
「いや、いいですよ。予算が少ない以上にお化けは怖いので」
 ああ、なるほど。しつこく聞いてきたのも、怖がりだからですか。
「そ、そうですか……」
 なら、元々ダメだったかも知れないですね。
 幽霊は住んでいませんが、大家さんがアレですしね。




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