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天舞う完全無欠の竜と地を這う暴れ馬
【Proceedings.07】天舞う完全無欠の竜と地を這う暴れ馬.07
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「これでも決着はつかない? あの刀をへし折らないとダメなんだ?」
天辰葵はそう言ってゆっくりと、大太刀、剛健一實へと、円形闘技場に突き刺さった刀へと歩みだす。
それを追い越すように、我に返った牛来亮が駆け抜け、剛健一實を素早く掴み取る。
天辰葵はそれをわかっていながら悠然と見ているだけだ。
「まだだ、まだ終わりはしない! 絶対少女に僕はなるんだぁ! 絶対少女は僕にこそ相応しい!!」
剛健一實を掴み取った牛来亮は再び自信満々に剛健一實を掲げ上げ、自分を鼓舞するかのように叫ぶ。
「そうだ、亮! お前こそが絶対少女にふさわしいぞぉ!」
牛来亮のその姿を見て丑久保修が残ってた上半身の服を脱ぎ捨て、上半身は黒色のレースとラメに彩られた男気溢れるブラジャーだけの状態で号泣しながら、牛来亮を激励する。
「はぁ…… 絶対少女というものに私は興味ないけれども、キミらに渡すくらいなら私がそれになるよ」
天辰葵はそう言って月下万象を握り直す。
今まではただの様子見だった。
天辰葵も既にデュエルのルールを知った。
ならば、もうチュートリアルは終わりの時間だ。
牛来亮は剛健一實を掲げ上げ、物凄い勢いで駆け込んでくる。
狙いは既に月下万象の刀身ではなく、天辰葵そのものだ。
それはこの決闘、デュエルにおいて無意味なものではあるが、それでもそうしなければ牛来亮の気持ちが収まらなかった。
容易く勝つはずだった。
苦戦などするわけもなかった。
すぐに終わるはずだった。
自分を信じ信頼していたその自信そのものを打ち砕いた天辰葵を牛来亮は許せるはずもなかった。
否、違う。
その認識すべてが間違っている。
そもそも、牛来亮では天辰葵の相手は土台無理な話だったのだ。
初心者? 転校生? デュエルのルールを知らない?
そんなもの天辰葵のハンデになるわけがない。
彼女は、彼女こそが完全無欠なのだから。
彼女には常識以外、何一つ欠けているものなどありはしないのだから。
牛来亮は残った力を全てその一撃に込め、天辰葵に剛健一實を振り下ろす。
「その一撃は中々だよ」
天辰葵は眼前に迫る剛健一實を見てそう言った。
次の瞬間、剛健一實は振り下ろされていた。
このデュエルを見ていた誰もが、悲惨な状況になると想像していた。
だが、そうはならない。
なぜなら、それは天辰葵だからだ。
理由? 原理? そんなものは彼女の前では意味をなさない。
振り下ろされたはずの剛健一實は刀身半ばから切断されていた。
切断された剛健一實の刃は、綺麗に空中で弧を描き闘技場の床に突き刺さる。
そして、天辰葵はいつの間にかに斬り上げた刀を、月下万象を静かに、それでいて優雅に、ゆっくりと地平線に沈む夜明けの月のように降ろした。
「なっ…… 馬鹿な!? 剛健一實を…… 我が筋肉の刀を一刀両断した…… だと?」
そう言って、丑久保修が床に気を失うかのように倒れ込む。
牛来亮は、やはり呆然と断ち切られた刀を見るだけだ。
「そこまで!」
生徒会執行団のトップ、絶対少女議事録を現在保有する戊亥道明が、観客席からそう声を掛ける。
そして、特別席を乗り越え飛び出し、円形闘技場のステージへと優雅に舞い降りる。
天辰葵はその様子を見る。
戊亥道明には注意を払うように。
「おめでとう、天辰葵さん。キミの勝ちだ。ついでにボクは生徒会長の戊亥道明だ」
そう言って握手でも求める様に手を伸ばすが、葵はそれを無視する。
「執行団なのに会長なの?」
そして、握手の代わりとばかりにそのようなことを聞く。
「ハハッ、そこに突っ込むのはやめてくれ。生徒団長というのは語呂が悪いだろう?」
道明はすぐに手をひっこめ、そう言って笑って見せた。
「まあ、それは確かに」
それには葵も同意だ。確かに語呂は悪い。
「さあ、まずは勝者の権利だ」
そう言って道明は亮を指さすが、葵の視線は月子に向いている。
「ああ、それだ。月子。勝ったよ。さあ、私を呼び捨ててほしい」
その美しい頬を桜色にして、月子に跪いて葵は見上げそう言った。
「え? ええ、えーと、葵様? これで良いですか?」
月子は困ったように、それでも約束は守るように葵の名を呼んだ。
「くっ、もっと雑に、ゴミや虫けらを見るような目で呼び捨てて欲しかったが、今はそれで良しとしよう」
葵は立ち上がり、爽やかな笑顔で、例えそれが絶世の美少女だったとしても、気持ち悪い言葉を口にした。
「あー、うん、そっちではなくてね、牛来亮に対してだよ。何を望む?」
そんな葵に対して、道明は笑いながら声を掛ける。
そうしないと、この決闘は終わらない。それもこの円形闘技場のルールだ。
「じゃあ、今後、私に関わらないように」
葵は少し考えた後、牛来が自分に勝てたら、自分を彼女にすると言っていたことを思い出し、そう言った。
その気持ちは単純に付きまとわれても面倒だから、それ以外の意図はなかった。
「ほう、それを望むか。その命令を下すとは流石だね。わかったかい? 生徒会執行部、書記が一人、牛来亮」
その命令に亮は絶望し、道明はにこやかに微笑んだ。
「は、はい、わ、わかりました……」
亮が、牛来亮が、泣きながら、涙を惜しげもなく晒しながら、それを了承する。
「彼はこれで絶対少女への道は絶たれたようなものだ」
そして、それを哀れむように道明がそう言った。
「そうなんだ」
何の気なしの命令だったが、それ以上の意味があったらしいことに葵も気づいた。
「おや、知らずにそう言ったのかい?」
「あいつ、私を彼女にとかのたまわっていたから、もう関わらないようにと思って。なるほどね、再戦も自由ってことなのか」
だが、葵も既にその意味を理解している。
これで亮は葵に関われなくなり、デュエルの再戦もできない。
そう言うことだ。
「その通り。このデュエルはとにかく全員に一度でも勝てばいい。ある意味、早い者勝ちだよ。まあ、月子君のように誰からのデュエルも受けなければ停滞するがね」
そう言って、道明は月子を見る。
月子はその視線に耐えられず視線を外す。
だが、葵は透かさずその視線に自ら割って入り、月子の盾となる。
「ふーん、まあ、どうでもいいよ。絶対少女というものに興味はないから」
そう言いならが、道明の目を見る。
まるで挑発的に、今ここで、決闘をしてもかまわないとばかりに。
だが、道明はその挑発的な視線を受け流す。
その時は今ではないと。
「まあ、好きにやるといいさ。これでデュエルは終わった。この闘技場も時期に水底へと沈む。亮、修を連れて行ってくれ」
「はい……」
生気なく亮が返事をして、とぼとぼと、黒色のセクシーなブラジャーを付け、白目を剥き、泡を噴き出して床に倒れ込む修を抱え退場していった。
「あ、あとこの刀は? 月子に戻した方が…… 消えた?」
刀、月下万象を持て余していた葵がそう道明に聞いた瞬間、月下万象は光となって消えた。
「夢の時間は終わりと言うことさ。キミらも早く闘技場から出たまえ、水底へ沈みたくなければね」
道明はそれを鼻で笑い、自らも円形闘技場から悠々と退場していく。
そして、戌亥道明の持つ絶対少女議事録の表紙の題名が、『疑似禄』から『議事録』へと戻る。
「で、なんで葵様がわたくしの部屋にいるんですか?」
その後、月子は葵と一旦別れ、寮の自分の部屋に戻って来ていた。
疲れたから一休みしようと思っていたのだが、自分の部屋の扉を開け、そこにいた人物への一言がそれだった。
「あの後、生徒会長に頼んだら快諾してくれたよ。意外と良い奴だね」
と、葵は本当に嬉しそうなにこやかな笑顔を月子へと向ける。
「あ、あの方は…… あ、あの、わたくしは、その、同性の方とは…… 無理ですので」
このままではまずい、そう思った月子は葵にちゃんと告げる。
きっぱりと伝えないといけない。月子はそのことを既に知っている。
が、
「ああ、安心して欲しい。大丈夫。私は受けだから。月子に私を求めて欲しいタイプだから! 私が月子を襲ってもせいぜい足を舐めるくらいだから!」
と、月子が予想していなかった答えが、聞きたくもない答えが、葵が嬉々として返ってくる。
そう、天辰葵は完全無欠の少女でありながら業の深い変態でもあるのだ。
「じゅ、十分に身の危険を感じるんですが?」
月子は顔を真っ赤にさせてそう言うしかなかった。
「兄様、なぜあいつの話を受けたんですか?」
戌亥巧観は不機嫌な顔をして、自らの、血のつながった兄、戌亥道明にそう言った。
そう言われた道明は、ただ微笑んで見せる。
「巧観。お前のためだ。お前を、焚きつけるためだよ。天辰葵は恐ろしい使い手だ。亮ではないが、あれに勝つにはデュエルに慣れる前でないと、お前に勝機はないよ」
そう真実を告げる。
そして、それは巧観も実感している。
天辰葵の実力は底が知れない。
巧観には葵の最後の一刀を見切ることはできなかった。
少なくとも、自分の技量ではどうにもならない相手だと言うことはわかる。
「ボクをあんな奴と一緒にしないでください」
だが、巧観にも意地はある。
今はそう言うしかない。
「でもいいのかい? 申渡月子があの子のモノになっても?」
そう道明に言われ、巧観は顔を真っ赤にする。
「かっ、関係ありません。ボクと月子はそんな関係では……」
そう言いつつも、巧観は悔しそうに目を伏せてしまう。
「まあ、幼馴染同士好きにすればいいさ。巧観、お前の好きにな。その時はボクの力を貸してやるから」
そう言って道明はただ面白そうに微笑んだ。
━【次回議事録予告-Proceedings.08-】━━━━━━━
申渡月子に思いを寄せる戌亥巧観は天辰葵に決闘を申し込むのか?
巧観に葵がとった行動とは!?
そして、月子が出した答えとは!? 次回、新章突入!
━次回、戸惑う竜と執行団その猟犬の遠吠え.01━━━━
天辰葵はそう言ってゆっくりと、大太刀、剛健一實へと、円形闘技場に突き刺さった刀へと歩みだす。
それを追い越すように、我に返った牛来亮が駆け抜け、剛健一實を素早く掴み取る。
天辰葵はそれをわかっていながら悠然と見ているだけだ。
「まだだ、まだ終わりはしない! 絶対少女に僕はなるんだぁ! 絶対少女は僕にこそ相応しい!!」
剛健一實を掴み取った牛来亮は再び自信満々に剛健一實を掲げ上げ、自分を鼓舞するかのように叫ぶ。
「そうだ、亮! お前こそが絶対少女にふさわしいぞぉ!」
牛来亮のその姿を見て丑久保修が残ってた上半身の服を脱ぎ捨て、上半身は黒色のレースとラメに彩られた男気溢れるブラジャーだけの状態で号泣しながら、牛来亮を激励する。
「はぁ…… 絶対少女というものに私は興味ないけれども、キミらに渡すくらいなら私がそれになるよ」
天辰葵はそう言って月下万象を握り直す。
今まではただの様子見だった。
天辰葵も既にデュエルのルールを知った。
ならば、もうチュートリアルは終わりの時間だ。
牛来亮は剛健一實を掲げ上げ、物凄い勢いで駆け込んでくる。
狙いは既に月下万象の刀身ではなく、天辰葵そのものだ。
それはこの決闘、デュエルにおいて無意味なものではあるが、それでもそうしなければ牛来亮の気持ちが収まらなかった。
容易く勝つはずだった。
苦戦などするわけもなかった。
すぐに終わるはずだった。
自分を信じ信頼していたその自信そのものを打ち砕いた天辰葵を牛来亮は許せるはずもなかった。
否、違う。
その認識すべてが間違っている。
そもそも、牛来亮では天辰葵の相手は土台無理な話だったのだ。
初心者? 転校生? デュエルのルールを知らない?
そんなもの天辰葵のハンデになるわけがない。
彼女は、彼女こそが完全無欠なのだから。
彼女には常識以外、何一つ欠けているものなどありはしないのだから。
牛来亮は残った力を全てその一撃に込め、天辰葵に剛健一實を振り下ろす。
「その一撃は中々だよ」
天辰葵は眼前に迫る剛健一實を見てそう言った。
次の瞬間、剛健一實は振り下ろされていた。
このデュエルを見ていた誰もが、悲惨な状況になると想像していた。
だが、そうはならない。
なぜなら、それは天辰葵だからだ。
理由? 原理? そんなものは彼女の前では意味をなさない。
振り下ろされたはずの剛健一實は刀身半ばから切断されていた。
切断された剛健一實の刃は、綺麗に空中で弧を描き闘技場の床に突き刺さる。
そして、天辰葵はいつの間にかに斬り上げた刀を、月下万象を静かに、それでいて優雅に、ゆっくりと地平線に沈む夜明けの月のように降ろした。
「なっ…… 馬鹿な!? 剛健一實を…… 我が筋肉の刀を一刀両断した…… だと?」
そう言って、丑久保修が床に気を失うかのように倒れ込む。
牛来亮は、やはり呆然と断ち切られた刀を見るだけだ。
「そこまで!」
生徒会執行団のトップ、絶対少女議事録を現在保有する戊亥道明が、観客席からそう声を掛ける。
そして、特別席を乗り越え飛び出し、円形闘技場のステージへと優雅に舞い降りる。
天辰葵はその様子を見る。
戊亥道明には注意を払うように。
「おめでとう、天辰葵さん。キミの勝ちだ。ついでにボクは生徒会長の戊亥道明だ」
そう言って握手でも求める様に手を伸ばすが、葵はそれを無視する。
「執行団なのに会長なの?」
そして、握手の代わりとばかりにそのようなことを聞く。
「ハハッ、そこに突っ込むのはやめてくれ。生徒団長というのは語呂が悪いだろう?」
道明はすぐに手をひっこめ、そう言って笑って見せた。
「まあ、それは確かに」
それには葵も同意だ。確かに語呂は悪い。
「さあ、まずは勝者の権利だ」
そう言って道明は亮を指さすが、葵の視線は月子に向いている。
「ああ、それだ。月子。勝ったよ。さあ、私を呼び捨ててほしい」
その美しい頬を桜色にして、月子に跪いて葵は見上げそう言った。
「え? ええ、えーと、葵様? これで良いですか?」
月子は困ったように、それでも約束は守るように葵の名を呼んだ。
「くっ、もっと雑に、ゴミや虫けらを見るような目で呼び捨てて欲しかったが、今はそれで良しとしよう」
葵は立ち上がり、爽やかな笑顔で、例えそれが絶世の美少女だったとしても、気持ち悪い言葉を口にした。
「あー、うん、そっちではなくてね、牛来亮に対してだよ。何を望む?」
そんな葵に対して、道明は笑いながら声を掛ける。
そうしないと、この決闘は終わらない。それもこの円形闘技場のルールだ。
「じゃあ、今後、私に関わらないように」
葵は少し考えた後、牛来が自分に勝てたら、自分を彼女にすると言っていたことを思い出し、そう言った。
その気持ちは単純に付きまとわれても面倒だから、それ以外の意図はなかった。
「ほう、それを望むか。その命令を下すとは流石だね。わかったかい? 生徒会執行部、書記が一人、牛来亮」
その命令に亮は絶望し、道明はにこやかに微笑んだ。
「は、はい、わ、わかりました……」
亮が、牛来亮が、泣きながら、涙を惜しげもなく晒しながら、それを了承する。
「彼はこれで絶対少女への道は絶たれたようなものだ」
そして、それを哀れむように道明がそう言った。
「そうなんだ」
何の気なしの命令だったが、それ以上の意味があったらしいことに葵も気づいた。
「おや、知らずにそう言ったのかい?」
「あいつ、私を彼女にとかのたまわっていたから、もう関わらないようにと思って。なるほどね、再戦も自由ってことなのか」
だが、葵も既にその意味を理解している。
これで亮は葵に関われなくなり、デュエルの再戦もできない。
そう言うことだ。
「その通り。このデュエルはとにかく全員に一度でも勝てばいい。ある意味、早い者勝ちだよ。まあ、月子君のように誰からのデュエルも受けなければ停滞するがね」
そう言って、道明は月子を見る。
月子はその視線に耐えられず視線を外す。
だが、葵は透かさずその視線に自ら割って入り、月子の盾となる。
「ふーん、まあ、どうでもいいよ。絶対少女というものに興味はないから」
そう言いならが、道明の目を見る。
まるで挑発的に、今ここで、決闘をしてもかまわないとばかりに。
だが、道明はその挑発的な視線を受け流す。
その時は今ではないと。
「まあ、好きにやるといいさ。これでデュエルは終わった。この闘技場も時期に水底へと沈む。亮、修を連れて行ってくれ」
「はい……」
生気なく亮が返事をして、とぼとぼと、黒色のセクシーなブラジャーを付け、白目を剥き、泡を噴き出して床に倒れ込む修を抱え退場していった。
「あ、あとこの刀は? 月子に戻した方が…… 消えた?」
刀、月下万象を持て余していた葵がそう道明に聞いた瞬間、月下万象は光となって消えた。
「夢の時間は終わりと言うことさ。キミらも早く闘技場から出たまえ、水底へ沈みたくなければね」
道明はそれを鼻で笑い、自らも円形闘技場から悠々と退場していく。
そして、戌亥道明の持つ絶対少女議事録の表紙の題名が、『疑似禄』から『議事録』へと戻る。
「で、なんで葵様がわたくしの部屋にいるんですか?」
その後、月子は葵と一旦別れ、寮の自分の部屋に戻って来ていた。
疲れたから一休みしようと思っていたのだが、自分の部屋の扉を開け、そこにいた人物への一言がそれだった。
「あの後、生徒会長に頼んだら快諾してくれたよ。意外と良い奴だね」
と、葵は本当に嬉しそうなにこやかな笑顔を月子へと向ける。
「あ、あの方は…… あ、あの、わたくしは、その、同性の方とは…… 無理ですので」
このままではまずい、そう思った月子は葵にちゃんと告げる。
きっぱりと伝えないといけない。月子はそのことを既に知っている。
が、
「ああ、安心して欲しい。大丈夫。私は受けだから。月子に私を求めて欲しいタイプだから! 私が月子を襲ってもせいぜい足を舐めるくらいだから!」
と、月子が予想していなかった答えが、聞きたくもない答えが、葵が嬉々として返ってくる。
そう、天辰葵は完全無欠の少女でありながら業の深い変態でもあるのだ。
「じゅ、十分に身の危険を感じるんですが?」
月子は顔を真っ赤にさせてそう言うしかなかった。
「兄様、なぜあいつの話を受けたんですか?」
戌亥巧観は不機嫌な顔をして、自らの、血のつながった兄、戌亥道明にそう言った。
そう言われた道明は、ただ微笑んで見せる。
「巧観。お前のためだ。お前を、焚きつけるためだよ。天辰葵は恐ろしい使い手だ。亮ではないが、あれに勝つにはデュエルに慣れる前でないと、お前に勝機はないよ」
そう真実を告げる。
そして、それは巧観も実感している。
天辰葵の実力は底が知れない。
巧観には葵の最後の一刀を見切ることはできなかった。
少なくとも、自分の技量ではどうにもならない相手だと言うことはわかる。
「ボクをあんな奴と一緒にしないでください」
だが、巧観にも意地はある。
今はそう言うしかない。
「でもいいのかい? 申渡月子があの子のモノになっても?」
そう道明に言われ、巧観は顔を真っ赤にする。
「かっ、関係ありません。ボクと月子はそんな関係では……」
そう言いつつも、巧観は悔しそうに目を伏せてしまう。
「まあ、幼馴染同士好きにすればいいさ。巧観、お前の好きにな。その時はボクの力を貸してやるから」
そう言って道明はただ面白そうに微笑んだ。
━【次回議事録予告-Proceedings.08-】━━━━━━━
申渡月子に思いを寄せる戌亥巧観は天辰葵に決闘を申し込むのか?
巧観に葵がとった行動とは!?
そして、月子が出した答えとは!? 次回、新章突入!
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