絶対少女議事録 ~蟹座の私には、フェチニズムな運命を感じられずにはいられない~

只野誠

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揺蕩う竜と運命を招き入れる猿

【Proceedings.65】揺蕩う竜と運命を招き入れる猿.02

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 大変な事となった。
 覚悟してたとはいえ、まさか衣服を溶かす神刀が相手とは月子も考えてなかった。
 いや、考えたくなかった。

 ただ、葵が自分に対して嫌なことをしてくるとも月子には思えない。
 月子にも、それくらいの自負も、葵への信頼もある。

 いや、それ以前にやっぱりバニースーツを着て大勢の前に出ることでさえ、恥ずかしい。
 だが、それでも月子はやらねばならないし、覚悟は決めてきたはずだ。
 すでに少し揺らいではいるが。

 恐らく月子がデュエルで、葵に勝てる見込みがあるのは、夜子の神刀くらいのものだ。
 月子の姉、申渡恭子がデュエルを勝ち上がれたのは、夜子の神刀の力があった影響が大きい。
 それほどの神刀なのだ。

 それに月子としても姉が使っていた神刀を持って葵に挑みたいと思っていた。
 いや、以前から、それはそう決めていたのだ。

 ただ、その条件が、デュエルでバニーガールの衣装を着る、という物だっただけだ。
 月子は自分に、仕方がない、と、そう言い聞かせてきたが、それでも恥ずかしい物は恥ずかしいのだ。

 それでも月子は覚悟を決めたのだ。
 決めたのだが、覚悟がちょっと揺れ動いているだけだ。
 覆ることはない。

「わかった。その条件でなら、私としてもデュエルを断ることなどできない!」
 と、葵は興奮しながらそう言った。
 ついでに綾も興奮している。

 こうなっては、月子も一ミリも傷つけないという葵の言葉を信じるしかない。
 いや、これはデュエルなのだ。
 そんな甘いことを考えている自分を月子は諫める。
 例え、デュエルでバニースーツが全て溶かされようとも怯むことなく葵と戦わなければならない。
 それくらいの覚悟を持って挑まなければならないのだ。
 月子にとって葵に勝つことは第一歩に過ぎないのだから。

 そのことは月子にも十分に分かっている。
 分かっていても恥ずかしい物は恥ずかしいのだ。
 月子は顔を真っ赤にさせながらも、気丈に振舞う。
「あ、ありがとうございます。葵様…… それと」
 月子は気を引き締める。
 そして、まっすぐ葵の目を見る。
 深く、とても深い絶望を抱えながら、決して希望を失わない、その瞳を見ながら。
「なんだい? 月子」

「わたくしが勝ったら、今後一切、わたくしとの関係を断ち、デュエルにも関わらないでください」
 月子がその言葉を発した。

 決して、決してどんな絶望の中でも希望を失わない、天辰葵の目から希望がスッと消えた。
 いとも簡単に消えた。
「え……」
 顔を蒼白にして葵は動かない。
 そんな葵を月子はまっすぐ見る。

「ただ、わたくしに勝てたら、わたくしはあなたの物になります。そう命じてください」
 そして、心の言葉を口にする。
 希望を失った葵の瞳に希望の光が灯る。
 物凄い勢いで灯りだす。
 希望の業火となって全てを燃やし尽くす勢いで灯る。
「そ、それって……」
「わたくしはそれに全力で抗いますよ?」
 葵が何とも言えない嬉しそうな、そうでもないような、そんな訳の分からない表情をしている中、月子はまっすぐに葵を見つめる。

「ついでに、月子ちゃんの姉、恭子が絶対少女になれたのは…… 私の神刀のおかげよん」
 夜子はテーブルに頬杖をついて挑発するように言った。
「そうです。甘く見ないでください、葵様」
 更に月子が、厳しい視線を葵に向け言う。

「か、か、か、勝てば、問題ないんだから、私は勝つよ」
 動揺しながらも葵は自分に勝てばいい、と勝てば何ら問題ないと、そう言い聞かせる。

「葵に力を貸すのやめようかしらね……」
 そんな葵を見て綾はポツリと言葉を漏らす。
「なっ、そ、そうしたら、ひらりに頼みに行くだけだね」
 バイトでお金に余裕もある。
 綾の蛇腹剣、蛇頭蛇腹よりは何倍も使いやすいし、バニーの衣装を傷つける心配もない。
 逆に、葵がそうしようかな、と考え出したとき、
「むっ…… ひらりちゃんを頼るくらいなら、わたしが力を貸すわ……」
 と、綾が先ほどの言葉撤回させた。
 綾としてもできるだけ近くで月子のバニー姿を見ていたいのだ。

 そこで巧観により柱の陰に追いやられた茜が再び顔を出し、
「というところで、お話はまとまりました?」
 と、訪ねて来る。

「はい、明日のお昼でかまいません」
 と、月子がどうせそうなるとばかりにそう言った。
「私も」
 葵も別にそれで構わないと声を上げる。

「あ、ありがとうございます!! 忙しくなる!! 解説役は…… ああ、もう会長でいいか。どうせ他の皆さんも碌に解説してくれませんし」
 茜はそう言い残して、走り去っていった。

「わたしよりあの子の方がストーカーじゃない?」
 綾が茜を見送りながらそう言った。
 実際に最近綾は隠れているわけではないので、その発言も頷けるところがある。

「茜の目的はデュエルの試合だから」
 と、巧観が一応フォローを入れる。
「そういうものなのかしらね……?」
 綾は首を傾けて見せる。

「でも、月子、そんな命令でいいの?」
 葵は月子に確認をする。
 あの気高い月子が自分の物になる、そんな命令をして良いだなんて葵も思ってみなかった。
 それだけ、月子の覚悟が強いという事なのだろうけれども、正直、夜子の神刀がどんな能力であれ、葵は月子に負ける気はしていない。

「わたくしが…… そう望んでいます。半端は嫌いです。これもわたくしの覚悟と思ってください」
 まっすぐに目を見ながら、月子は葵に答えた。
 どちらになっても後悔はしない。
 そんな意志を感じることはできる。
「分かった。月子がそう望むなら……」
 そこまで覚悟が決まっているのなら、と葵も納得する。
 が、顔から自然と笑みがこぼれ落ちている。
 それが恥ずかしいのか葵はそれを手で隠す。それほど嬉しいのだろう。

「わたし…… デュエルアソーシエイトなのに蚊帳の外って奴ね……」
 そんな二人のやり取りを見て、綾はうつむきながらつぶやく。
「綾…… パフェ、おごってあげるから」
 仕方なく巧観が綾の肩を叩きそう言った。
 巧観も綾の気持ちがわからなくもない。
「巧観…… 友情って良いものね」
 綾はそう言って鼻を啜った。




━【次回議事録予告-Proceedings.66-】━━━━━━━


 遂に二人の運命が蠢動し合う。
 その時が来る。


━次回、揺蕩う竜と運命を招き入れる猿.03━━━━━
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