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完全無欠の竜と神ならぬ春の来訪神
【Proceedings.82】完全無欠の竜と神ならぬ春の来訪神.05
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「いざ尋常に」
「勝負!」
変わらずに、その言葉で戦いが始まる。
だが、これはデュエルではない。
まさしく真剣勝負だ。
だから、この神刀で切りつけたら、本当に斬り捨てることができる、かもしれない。
天辰葵はそう思いつつも、躊躇などしない。
まだ、人を斬ったことはないが、人ならざる者、人ではなくなった者であれば、斬り捨てたことなど一度や二度ではない。
神宮寺雅という存在を斬ることに臆する理由はない。
だが、天辰葵は警戒する。
あの自分を引き寄せた不可思議な力を。
天辰葵にすら気配を感じさせずに、自分を神宮寺雅の元へと引き寄せたのだ。
まだ、神刀を手にする前だったので、神通力ともいえる不可解な力だ。
だからと言って天辰葵は負ける気はしない。
相手は確かに神の力を受け継いで入るが、神そのものというわけではない。
けれども、侮りもしない。
ただそれだけの事だ。
申渡月子を下がらせて、神刀、月下万象を構える。
そんな天辰葵に向かい神宮寺雅は、二ヤつきながら、今も三人の少女の顔を胸に浮かび上がらせながら、神刀、天道白日を振るう。
無造作に振られた天道白日から、突如、神風が起き、それは真空の刃となって天辰葵に襲い掛かる。
それに天辰葵は見覚えがある。
「これは…… 馬乱十風の……」
確かそんな名前の神刀だったはずだ。
その持ち主の名は、天辰葵は既に忘れたが、その神刀のことは鮮明に覚えている。
使う相手が使う相手なら、非常に厄介で、神風を自在に操れる能力の神刀だ。
迫りくる真空の刃を天辰葵は月下万象を振るい打ち払う。
「その通り。すべての神刀の祖である天道白日は…… いや、違うな。唯一、本物の神刀である天道白日こそが大元だ。枝分かれしていった神刀モドキの力など仕えて当然なのだよ」
神宮寺雅の言うことは通りだ。
天道白日が全ての神刀の祖であるならば、枝分かれした神刀の力を使えても、なんら不思議ではない。
だが、そんなものが自分の中にいつまにかに宿っていたのか、それは天辰葵もわからない。
なので、神宮寺雅が言っている、神宮寺雅が天辰葵に天道白日を宿らせたというのも、あながち嘘ではないのかもしれない。
「今まで闘って来たすべての神刀の?」
そう思うと、天辰葵も警戒せざる得ない。
不可解な能力の神刀も多かった。
また神刀の能力を使われたら天辰葵とて容易にかわし切ることはできない。
だが、それだけではないとばかりに神宮寺雅は笑う。
「違う。俗に、キミらが神刀と呼んでいる刀は無数に存在する。その無数にある中から本人にあった刀が選ばれ、その身に宿り、宿った者がデュエリストとなる。ただそれだけのことだ」
「つまり、私が見たこともない力も扱えると?」
神宮寺雅の言葉を信じるならば、そういう事になる。
無数の神刀が存在し、その中から十二本選ばれ、生徒に宿り、デュエルが、祭りが開催される。
そういう事なのだ。
天辰葵が、知っている神刀はほんの一握りでしかなく、まだ見ぬ神刀が無数に存在するという事だ。
そして、天道白日はその力もすべて使うことが出来る。
たしかに、それなら完全無欠を謳う神刀だけのことはる。
まさに神のごとき万能な力であるのかもしれない。
「その通り。先ほどキミを引き寄せたのもその力の片りんの一つだよ」
「あの時はまだ天道白日を抜いていなかったじゃないか」
神宮寺雅の言葉に、天辰葵は顔を歪めて言い返す。
「天道白日はもともとは未来に、そして、私に、我に宿っていた神刀だ。今はキミに宿っているが、やっと私の、我が元へと、帰って来てくれた。より強い神刀となってね」
未来とは初代絶対少女のことだろう。
今は真宮寺雅の胸の真ん中に位置し、取り込まれたような顔の名だ。
だが、それにより、未来と神宮寺雅が一つになったことで、結果として神宮寺雅にも天道白日が宿ったのだ。
その結果、神宮寺雅は自らに宿る神刀、天道白日の力をその手のしてなくとも使えるのだ。
「自身に宿る神刀の能力を使えるって奴か……」
天辰葵はそう言って、自分に宿っているはずの神刀の力を引き出せない理由だと理解する。
才能も資質も十二分に満たしているのだが、神刀の真の所有者が別にいたせいで、天辰葵は自らに宿る神刀の力を引き出せないでいたのだ。
天辰葵はただ神刀の鞘として、天道白日が力を取り戻す器として、神宮寺雅に利用されただけなのだ。
「そうだとも。それ故に天道白日は完全無欠である」
確かに天辰葵の知っている神刀の能力だけでも厄介な能力が多い。
それ以外にも常識はずれな能力の神刀もあるのだろう。
無数にあるという神刀の力をすべて使えるというのであれば、それはまさに完全無欠であり弱点があるとも思えない。
「知っているのはともかく、知らない神刀の能力は厄介だね」
天辰葵はそう言って警戒する。
「知っていればどうにかできるとでも言いたそうだね」
それに対して、神宮寺雅は天辰葵を笑い飛ばす。
本物の神の力を、本物の神刀の力を馬鹿にするなと。
「ああ、そうだよ」
だが、それは天辰葵にとってもだ。
自分を、この数々の神すらも屠って来た、この神狩りの巫女を馬鹿にするなと。
「ハハ、面白い。では、これはどうかな?」
そう言って神宮寺雅は独特なステップを踏む。
見るものが見れば、それは神楽舞いの足運びだとわかる。
「その足運び、ステップは…… 首跳八跳!?」
天辰葵が慌てる。
首跳八跳という銘の神刀の能力は、八度跳ねれば、相手のその首を問答無用で跳ね落とすという凶悪な物だ。
「これで終わってくれるなよ?」
神宮寺雅はそう言いつつも、刀を、天道白日を、勝利を確信しながら横薙ぎする。
だが、天辰葵はその能力を既に知っている。
「滅神流、呪詛相殺の太刀」
左手で手で印を作り素早く自らの刀の刃、月下万象をなぞる。
そして、神宮寺雅の横薙ぎに合わせるように刀を振るう。
直接、刀同士が触れあったわけではない。
だが、辺りから確かに刀同士が打ち合う様な音が聞こえ響き渡る。
起きたことはそれだけだ。
天辰葵の首が落ちたわけではない。
神宮寺雅が目を見開き心底驚く。
「これは驚いた。不可避の首切りを防ぐとは」
今までそれを防げたものは自分を、神宮寺雅を含めていなかった。
だが、目の前の天辰葵という少女は、それをどういう原理かはわからないが見事防いで見せたのだ。
ついでに、神宮寺雅は首を落とされたところで、どうということはない。
神の力を手に入れている神宮寺雅はその程度、首を落とされた程度では死ぬこともないし、意識を失うこともない。
首が切り落とされたところで拾い、再びくっつければいいだけのことだ。
そして、申渡恭子が負けた理由はそれだ。
首を落としたところでこの決闘は終わらない。
相手の神刀を折るまで、この決闘は終わらないのだ。
「それが呪いの一種ということは気づいていたからね。月子との戦いでも防ごうと思えば防げていたさ」
驚く神宮寺雅に対して、天辰葵は当然とばかりにそう言った。
「ならどうして?」
という疑問は、神宮寺雅からではなく、天辰葵の後方に控える申渡月子から出て来る。
天辰葵と申渡月子が戦った時、天辰葵は申渡月子の首切りをまともに受け続けていたのだ。
かわせるのであれば、あの時もかわせていたはずだ。
「ご褒美じゃないか!」
それに対して、天辰葵は振り返り笑顔でそう言った。
「そっ、そうですか…… 少し複雑な気持ちです」
申渡月子も天辰葵と付き合うようになって、それなりに理解したつもりだったが、その理解が浅かったことを思い知らされる。
天辰葵の愛の深さか欲望の深さかはわからないが、それは底が見えない。
「ならば、これならどうだ?」
そう言って、神宮寺雅が天道白日を振ると、幾人もの神宮寺雅が現れた。
だが、それは天辰葵を苦しめはしたが、特に何度も見て来た能力だ。
「それは本当に見飽きたよ。幻影観力の幻影だろ? なんだかんだで何度も戦ったからね」
恐らく天辰葵が一番戦った神刀は有名百銭だ。
それは戌亥巧観が何度もその神刀を使ってリベンジし連戦したからで、それを除けば幻影観力が、天辰葵にとって一番戦闘経験の多い神刀だ。
天辰葵からすれば、もうそれは飽きるほどにだ。
だから、幻影だけを神速で即座に斬って回って見せる。
そして、月下万象の刃を幻影ではない本物の神宮寺雅に向ける。
「ハハッ、流石もっとも完全無欠に最も近い少女! 凄まじい力だ。キミを贄にできたのであれば、私の、我の、願いはどこまで叶うのかな?」
簡単に幻影を破られたことに対して、神宮寺雅はもう特に驚くこともない。
むしろ、それくらいしてもらわないと、わざわざ外界から呼び寄せた意味はない、とばかりに喜び勇む。
「何を言っている。お前はここで私に倒されて終わりだよ」
天辰葵はそう言うが、神宮寺雅はそんな言葉は聞いていない。
「二番目の贄ではこの学園しか作れなかった。三番目の贄には邪魔され、逆に神刀の修復を余儀なくされた。次はこの学園を取り巻く街でも作ろうと思っていたのにね」
神宮寺雅はそう言って天を仰ぐ。
新しい世界を作ること。
それこそが、新しい神となった自分の使命なのだ。
手始めに学園を創った。
次に作るべきは人々が営む街だ。
やがては国を、そして世界を作り、それを新しい世界とする。
それが神の営みという物だと、神宮寺雅は考えている。
「街づくりのゲームか何かと勘違いしてるんじゃない?」
天辰葵は心底軽蔑した目を神宮寺雅に向ける。
「そうさ。最終的には新しい世界を作る。そのために集められた贄達の学園。それが神宮寺学園だよ。君なら街だけでなく国くらい一気に創造できるのかもしれないね」
軽蔑の視線を気にも留めず、この学園の真実を神宮寺雅は語る。
この学園の生徒は神に捧げるために集められたのだと。
そのための生徒で、学園なのだと。
「少女しか贄にしないのに?」
と、天辰葵は不快そうな表情を隠しもせずに言う。
「私は、我は、神だ。すべての民に平等でなければならないが、神としての儀式がそうなっているだけだ。それも古き世界の因縁。だが、それもいずれ変えよう」
そう言って神宮寺雅は笑う。
「なにそれ、なんかあやふやで曖昧な話だな。ああ、そう言うことか。神とお前自身で意見が割れているんだな?」
だが、天辰葵はそれを見抜き伝える。
「何を言っている。私は、我こそが神だ」
それを神宮寺雅は否定する。
自らが神自身であると。
春を告げる来訪神であると。
「違う。お前は神なんかじゃない。ただの人で、人食いの化け物だよ」
そんな神宮寺雅に対して、天辰葵は真実を告げる。
━【次回議事録予告-Proceedings.83-】━━━━━━━
人食いの化物と言われ激高する神宮寺雅。
数々の神刀の力を使い天辰葵を襲う。
━次回、完全無欠の竜と神ならぬ春の来訪神.06━━━
「勝負!」
変わらずに、その言葉で戦いが始まる。
だが、これはデュエルではない。
まさしく真剣勝負だ。
だから、この神刀で切りつけたら、本当に斬り捨てることができる、かもしれない。
天辰葵はそう思いつつも、躊躇などしない。
まだ、人を斬ったことはないが、人ならざる者、人ではなくなった者であれば、斬り捨てたことなど一度や二度ではない。
神宮寺雅という存在を斬ることに臆する理由はない。
だが、天辰葵は警戒する。
あの自分を引き寄せた不可思議な力を。
天辰葵にすら気配を感じさせずに、自分を神宮寺雅の元へと引き寄せたのだ。
まだ、神刀を手にする前だったので、神通力ともいえる不可解な力だ。
だからと言って天辰葵は負ける気はしない。
相手は確かに神の力を受け継いで入るが、神そのものというわけではない。
けれども、侮りもしない。
ただそれだけの事だ。
申渡月子を下がらせて、神刀、月下万象を構える。
そんな天辰葵に向かい神宮寺雅は、二ヤつきながら、今も三人の少女の顔を胸に浮かび上がらせながら、神刀、天道白日を振るう。
無造作に振られた天道白日から、突如、神風が起き、それは真空の刃となって天辰葵に襲い掛かる。
それに天辰葵は見覚えがある。
「これは…… 馬乱十風の……」
確かそんな名前の神刀だったはずだ。
その持ち主の名は、天辰葵は既に忘れたが、その神刀のことは鮮明に覚えている。
使う相手が使う相手なら、非常に厄介で、神風を自在に操れる能力の神刀だ。
迫りくる真空の刃を天辰葵は月下万象を振るい打ち払う。
「その通り。すべての神刀の祖である天道白日は…… いや、違うな。唯一、本物の神刀である天道白日こそが大元だ。枝分かれしていった神刀モドキの力など仕えて当然なのだよ」
神宮寺雅の言うことは通りだ。
天道白日が全ての神刀の祖であるならば、枝分かれした神刀の力を使えても、なんら不思議ではない。
だが、そんなものが自分の中にいつまにかに宿っていたのか、それは天辰葵もわからない。
なので、神宮寺雅が言っている、神宮寺雅が天辰葵に天道白日を宿らせたというのも、あながち嘘ではないのかもしれない。
「今まで闘って来たすべての神刀の?」
そう思うと、天辰葵も警戒せざる得ない。
不可解な能力の神刀も多かった。
また神刀の能力を使われたら天辰葵とて容易にかわし切ることはできない。
だが、それだけではないとばかりに神宮寺雅は笑う。
「違う。俗に、キミらが神刀と呼んでいる刀は無数に存在する。その無数にある中から本人にあった刀が選ばれ、その身に宿り、宿った者がデュエリストとなる。ただそれだけのことだ」
「つまり、私が見たこともない力も扱えると?」
神宮寺雅の言葉を信じるならば、そういう事になる。
無数の神刀が存在し、その中から十二本選ばれ、生徒に宿り、デュエルが、祭りが開催される。
そういう事なのだ。
天辰葵が、知っている神刀はほんの一握りでしかなく、まだ見ぬ神刀が無数に存在するという事だ。
そして、天道白日はその力もすべて使うことが出来る。
たしかに、それなら完全無欠を謳う神刀だけのことはる。
まさに神のごとき万能な力であるのかもしれない。
「その通り。先ほどキミを引き寄せたのもその力の片りんの一つだよ」
「あの時はまだ天道白日を抜いていなかったじゃないか」
神宮寺雅の言葉に、天辰葵は顔を歪めて言い返す。
「天道白日はもともとは未来に、そして、私に、我に宿っていた神刀だ。今はキミに宿っているが、やっと私の、我が元へと、帰って来てくれた。より強い神刀となってね」
未来とは初代絶対少女のことだろう。
今は真宮寺雅の胸の真ん中に位置し、取り込まれたような顔の名だ。
だが、それにより、未来と神宮寺雅が一つになったことで、結果として神宮寺雅にも天道白日が宿ったのだ。
その結果、神宮寺雅は自らに宿る神刀、天道白日の力をその手のしてなくとも使えるのだ。
「自身に宿る神刀の能力を使えるって奴か……」
天辰葵はそう言って、自分に宿っているはずの神刀の力を引き出せない理由だと理解する。
才能も資質も十二分に満たしているのだが、神刀の真の所有者が別にいたせいで、天辰葵は自らに宿る神刀の力を引き出せないでいたのだ。
天辰葵はただ神刀の鞘として、天道白日が力を取り戻す器として、神宮寺雅に利用されただけなのだ。
「そうだとも。それ故に天道白日は完全無欠である」
確かに天辰葵の知っている神刀の能力だけでも厄介な能力が多い。
それ以外にも常識はずれな能力の神刀もあるのだろう。
無数にあるという神刀の力をすべて使えるというのであれば、それはまさに完全無欠であり弱点があるとも思えない。
「知っているのはともかく、知らない神刀の能力は厄介だね」
天辰葵はそう言って警戒する。
「知っていればどうにかできるとでも言いたそうだね」
それに対して、神宮寺雅は天辰葵を笑い飛ばす。
本物の神の力を、本物の神刀の力を馬鹿にするなと。
「ああ、そうだよ」
だが、それは天辰葵にとってもだ。
自分を、この数々の神すらも屠って来た、この神狩りの巫女を馬鹿にするなと。
「ハハ、面白い。では、これはどうかな?」
そう言って神宮寺雅は独特なステップを踏む。
見るものが見れば、それは神楽舞いの足運びだとわかる。
「その足運び、ステップは…… 首跳八跳!?」
天辰葵が慌てる。
首跳八跳という銘の神刀の能力は、八度跳ねれば、相手のその首を問答無用で跳ね落とすという凶悪な物だ。
「これで終わってくれるなよ?」
神宮寺雅はそう言いつつも、刀を、天道白日を、勝利を確信しながら横薙ぎする。
だが、天辰葵はその能力を既に知っている。
「滅神流、呪詛相殺の太刀」
左手で手で印を作り素早く自らの刀の刃、月下万象をなぞる。
そして、神宮寺雅の横薙ぎに合わせるように刀を振るう。
直接、刀同士が触れあったわけではない。
だが、辺りから確かに刀同士が打ち合う様な音が聞こえ響き渡る。
起きたことはそれだけだ。
天辰葵の首が落ちたわけではない。
神宮寺雅が目を見開き心底驚く。
「これは驚いた。不可避の首切りを防ぐとは」
今までそれを防げたものは自分を、神宮寺雅を含めていなかった。
だが、目の前の天辰葵という少女は、それをどういう原理かはわからないが見事防いで見せたのだ。
ついでに、神宮寺雅は首を落とされたところで、どうということはない。
神の力を手に入れている神宮寺雅はその程度、首を落とされた程度では死ぬこともないし、意識を失うこともない。
首が切り落とされたところで拾い、再びくっつければいいだけのことだ。
そして、申渡恭子が負けた理由はそれだ。
首を落としたところでこの決闘は終わらない。
相手の神刀を折るまで、この決闘は終わらないのだ。
「それが呪いの一種ということは気づいていたからね。月子との戦いでも防ごうと思えば防げていたさ」
驚く神宮寺雅に対して、天辰葵は当然とばかりにそう言った。
「ならどうして?」
という疑問は、神宮寺雅からではなく、天辰葵の後方に控える申渡月子から出て来る。
天辰葵と申渡月子が戦った時、天辰葵は申渡月子の首切りをまともに受け続けていたのだ。
かわせるのであれば、あの時もかわせていたはずだ。
「ご褒美じゃないか!」
それに対して、天辰葵は振り返り笑顔でそう言った。
「そっ、そうですか…… 少し複雑な気持ちです」
申渡月子も天辰葵と付き合うようになって、それなりに理解したつもりだったが、その理解が浅かったことを思い知らされる。
天辰葵の愛の深さか欲望の深さかはわからないが、それは底が見えない。
「ならば、これならどうだ?」
そう言って、神宮寺雅が天道白日を振ると、幾人もの神宮寺雅が現れた。
だが、それは天辰葵を苦しめはしたが、特に何度も見て来た能力だ。
「それは本当に見飽きたよ。幻影観力の幻影だろ? なんだかんだで何度も戦ったからね」
恐らく天辰葵が一番戦った神刀は有名百銭だ。
それは戌亥巧観が何度もその神刀を使ってリベンジし連戦したからで、それを除けば幻影観力が、天辰葵にとって一番戦闘経験の多い神刀だ。
天辰葵からすれば、もうそれは飽きるほどにだ。
だから、幻影だけを神速で即座に斬って回って見せる。
そして、月下万象の刃を幻影ではない本物の神宮寺雅に向ける。
「ハハッ、流石もっとも完全無欠に最も近い少女! 凄まじい力だ。キミを贄にできたのであれば、私の、我の、願いはどこまで叶うのかな?」
簡単に幻影を破られたことに対して、神宮寺雅はもう特に驚くこともない。
むしろ、それくらいしてもらわないと、わざわざ外界から呼び寄せた意味はない、とばかりに喜び勇む。
「何を言っている。お前はここで私に倒されて終わりだよ」
天辰葵はそう言うが、神宮寺雅はそんな言葉は聞いていない。
「二番目の贄ではこの学園しか作れなかった。三番目の贄には邪魔され、逆に神刀の修復を余儀なくされた。次はこの学園を取り巻く街でも作ろうと思っていたのにね」
神宮寺雅はそう言って天を仰ぐ。
新しい世界を作ること。
それこそが、新しい神となった自分の使命なのだ。
手始めに学園を創った。
次に作るべきは人々が営む街だ。
やがては国を、そして世界を作り、それを新しい世界とする。
それが神の営みという物だと、神宮寺雅は考えている。
「街づくりのゲームか何かと勘違いしてるんじゃない?」
天辰葵は心底軽蔑した目を神宮寺雅に向ける。
「そうさ。最終的には新しい世界を作る。そのために集められた贄達の学園。それが神宮寺学園だよ。君なら街だけでなく国くらい一気に創造できるのかもしれないね」
軽蔑の視線を気にも留めず、この学園の真実を神宮寺雅は語る。
この学園の生徒は神に捧げるために集められたのだと。
そのための生徒で、学園なのだと。
「少女しか贄にしないのに?」
と、天辰葵は不快そうな表情を隠しもせずに言う。
「私は、我は、神だ。すべての民に平等でなければならないが、神としての儀式がそうなっているだけだ。それも古き世界の因縁。だが、それもいずれ変えよう」
そう言って神宮寺雅は笑う。
「なにそれ、なんかあやふやで曖昧な話だな。ああ、そう言うことか。神とお前自身で意見が割れているんだな?」
だが、天辰葵はそれを見抜き伝える。
「何を言っている。私は、我こそが神だ」
それを神宮寺雅は否定する。
自らが神自身であると。
春を告げる来訪神であると。
「違う。お前は神なんかじゃない。ただの人で、人食いの化け物だよ」
そんな神宮寺雅に対して、天辰葵は真実を告げる。
━【次回議事録予告-Proceedings.83-】━━━━━━━
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