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【ヤクソ・カクスィウュクスィ-要するに第二十一話-】ドア越しの攻防戦☆彡【プナイネン・ルク-赤の章-02-】※G注意

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 ある日、家に帰るとそれがいました。
 多分、世間一般で一番忌み嫌われる虫です。ヤツです。Gです。
 ただ普通のではなく、人間大の大きさで人間の服を着たヤツです。
 見た瞬間、物凄い勢いで全身に虫唾が走りました。
 学校が終わって家に入ろうとドアを開けたら、目が合いました。
 どろぼうだったら、まだどんなに良かったことか。
 だって、うちには盗まれるようなものないからね。
 ああ、もちろんそっ閉じです。
 玄関のドアをそっ閉じです。そして、ドアを閉めてこちらに来ないようにドアを押さえます。
 だって、逃げても無駄ですよね、相手はあの素早いGですよ?
 まず私がやらなくちゃいけないことは、ぬいぐるみ妖精と合流、そして、他の魔法少女に助けを呼ぶこと!
 身バレしちゃうけど、この際仕方がない。そんなこと言っている場合じゃないですよ!
 命には変えられない。というか、直視したくない!
 スマホの魔法アプリを起動!
 にしても、ヴァルコイネンさんは今、この家の中にいるはずなんですが…… どこ行ってるんですか?
 不意にドアの向こうから物音が!
 ガガガガガガッって床を巨大な何かが走る物音が!
 いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 想像したくない! 想像したくないです!
 人間大のゴキブリがカサカサ動く姿なんて!! 想像したくないですよ!
 なんで、毒電波遮断教団の怪人は、怪人という割には人要素皆無なんですか!
 なんで虫がそのまま大きくなってるだけなんですか!!
 しまいには私、泣きますよ!
 ってか、もう泣いてます!
 終わりです! 私もグリーナリーさん同様に敵に捕まって終わりです!
 ガガガガガッって巨大な何かが歩く音が止まると、絶望している私にドア越しに声を掛けられました。
「毒電波遮断怪人・ゴキブリーダと申すものですぅ、この度は魔法少女のプナイネン・ルージュさんとお見受けし、誠に勝手ながら訪問させていただきましたぁ~」
 なんで物腰柔らかなセールスマン風の口調なのぉ、怪しさ大爆発じゃないですか!
 なにも信用できること皆無ですよ!
「ち、違います! 私、魔法少女じゃないです! 帰ってください!」
「いえいえ、もう確証は取れていますので、ぜひにでも御同行お願いしく思いましてぇ」
 なっな、な、なっ、なんで私の正体ばれてんの! まあ、私はただのコスプレですからね?
 素顔も割れちゃってますからね!
 グリーナリーさんから情報が洩れたら、一番、割り出しやすいの私ですからね!
 くっくそぅ、バイト、こんなバイト辞めてやるんだから!
「いや! Gと一緒なんて絶対に嫌です!」
 人間大のGと御同行とか、絶対に無理です!
 嫌です、無理です! 気絶します!!
「そう言われましても、私もですねぇ、上から申しつけられていましてねぇ、そこをどうにか、御同行いただけないでしょうか?」
 ひぃ、この声もあの巨大なGが声を出してると思うと気持ち悪くて仕方がない!!
 ああ、鳥肌たってきた!!
「なんで、私のところに寄りにもよってGが来てるのぉ!! は、早く助けを呼ばなくちゃ……」
 震える手で魔法のアプリを起動するけど、反応がない。
 え? なんで!? アンテナ立ってるじゃん!! WIFIも入ってるじゃん!!
「無理ですよぉ、結界を張らさせてもらいましたので、わたくしぃ、こう見てぇ、一時的に魔法や電波を使った通信を阻害できるんですよぉ」
「ヒッ、嘘でしょう!」
 WIFIもダメなのかよ!
 どうする? どうする? どうするぅ!?
 ああああああぁああぁぁぁぁ、焦って何も思い浮かばない!!
「ほんとですぅ、ささ、諦めて御同行お願いしたいのですが」
「せ、せめて違う怪人で出直してきてくれませんか? そ、それなら同行しますのでぇ」
 せめてもっと普通の虫にしてぇ! 蝶とかてんとう虫とかそういうのにしてぇ!
「いえいえ、今は人手不足でしてぇ、毒電波遮断戦闘員・ヴァルヨですら足りないのですよぉ」
 う、嘘だ、あいつら、いつもわんさかいるじゃないですか!
「そ、その毒電波遮断戦闘員でいいから! それの後ついていくから!」
「ですから、毒電波遮断戦闘員・ヴァルヨも定員割れをおこしてましてぇ」
「なによ、あんなにいたじゃない!」
「はい、確証が今! 取れましたぁ! あなた、やっぱり魔法少女のプナイネン・ルージュさんですねぇ!」
「ず、ずるい! 誘導尋問じゃん!」
 あぁああぁぁぁぁ、嘘! 今までかまかけてたの!?
 この! この! このぉ!!!
 でも、この怪人、実は力がない?
 ドアを開けようとしてるけど、普通の人間の私でも押し返せる!
「ささ、早くこのドアを開けてください!」
「いぃぃやぁぁぁぁ! それだけはいやぁ!!」
「でしたら、このゴキブリーダ、ここで卵産んじゃいますよぉ?」
「なっ、やめろ! そんなことしたら家に火を放つよ!」
 な、なんてことを言いやがるんだ、この怪人は!
 極悪非道すぎる! あんなでっかいGの卵なんて見たくないですよ!
「アパートなのによろしくないですよぉ? 近所迷惑ですよぉ?」
 それは確かに!
 でも、怪人のおまえには、Gであるおまえには言われたくない!!
「た、頼みますから、違う怪人で出直してきてください! というか、雌なんですか!」
「いいえ、雄ですぅ」
 だ、騙したなぁ!
 こ、このぉ! よくも騙したなぁ!!
「こ、この! 卵なんて産めないじゃないですか!」
「でもでもでもぉ、そのあたりの物適当にかじりついて、うんちしちゃいますよぉ!」
 な、な、な、なんて奴なんだ、やっぱり怪人は悪い奴だ! 酷い奴なんだ!
 だれかー、助けてー!!
「やっ、やめろぉ! そんなことその大きさでしてみろ! 大変なことになるじゃないですか!」
「なら、ドア、開けてくださいよぉ?」
「いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「じゃあ、仕方ないですねぇ、あなたの部屋、漁っちゃいますよぉ! 女子高生のお部屋! 漁っちゃいますよぉ!!」
「やっ、やめろぉ! そ、そんなことしてみろ! ゆ、許さないからな!」
 やだやだやだやだ!
 あんなのに部屋はいられたくない! 漁られたくない!
 な、なんて酷い怪人なんですか!
「どう許さないんですかぁ?」
「さっ、殺虫剤かけてやるからな! 良いのか! G専用の奴だぞ! 強力な奴だぞ!」
「しかし、その殺虫剤、家の中ではありませんかぁ?」
「そ、そうだよ、こんちくしょー! う、うわぁぁぁぁ! ヴァルコイネンの奴はなにやってるのよぉ! 私を守ってくれてるんじゃなかったのぉ!」
 そうだ、あの妖精は私を守るために、うちに来たんでしょう?
 蜂蜜ばっかりペロペロ舐めやがって!
 せめて蜂蜜代くらいは助けてよぉ!
「あー、あの魔法界の妖精ですかぁ、ゴキブリーダの姿を見るや否や、倒れて動かなくなりましてぇ、心配ですよねぇ?」
「ショックで気絶してるだけじゃん! 心配じゃない! 心配じゃないから!! そいつ連れてっていいから! 私、何にも知らないし! 無力だから!」
 なにが守る、だよ!
 速攻でGの姿見て気絶してるじゃん!!
「でもでもぉ、ヘルデスラー大総督のお目当ては、あなた、なんですよぉ! ああ、もちろん、あの妖精も連れて行きますよぉ、安心してください!」
「何一つ安心できるかぁ!」
 く、くそぅ、なんか、対Gグッツは……
 ぜ、全部家の中だぁ……
 な、なんで私こんな目に! なんで私のところにGが来るのぉよ!!



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