AIと十字館の殺人

八木山

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序章

探索

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・・・まずはこの場所の手掛かり探しだよな、だよな。
状況がまるで見えないし。

ドアは押しても引いても叩いても、うんともすんとも言わない。
白い機械はボタンの類もなく、触っても滑らかな平面をこちらに向けているだけだ。
取り付く島もない、とはこのことだろう。
他をあたることにする。


壁に埋め込まれている本棚、あれは嫌でも目に入るよ。
俺は、本棚を近くで見ようと立ち上がる。

たったの3段しかなく、上下の段に並べられた本の中には肩を寄せ合っているものもある。
サイズも装丁もジャンルさえもばらばらな本たちの背表紙には、題名が書かれている。
ざっと見ても30冊以上はあるし、題名が英語のものまで混じっている。
速読家でもない限り、全部に目を通すのは骨が折れそうだ。

一方空っぽの真ん中の段は、白いものばかりのこの部屋でズケズケと鮮やかな青色をしていた。



振り返ると、腰かけていたベッドの床板の下には引き出しが付いていた。
シーツか何かを入れているのだろうか。
あるいは、何かの罠かもしれない。

そういえばこのベッド、はっきり言って自宅のベッドよりもはるかに快適な寝心地だった。
それこそ、ずっと寝たきりにしておくための罠と言われても、特に驚かないだろう。
それなりにいいものに違いないと思うと同時に、どこか寂しいような、不安なような気持にもなる。
そういうことか、白すぎてデザインに乏しいんだ、これ。


壁からせり出したテーブルの上には、白いノートとペンケースが置かれている。
ノートをペラペラとめくってみたが、生憎すべて白紙だった。
ペンケースの中身はボールペンと、穴あけパンチが一つ。
何とも妙な組み合わせだ。

ペンがまだ使えるのかを見るために、とりあえずノートにペンを滑らせる。
「釘パンチって実質穴あけパンチってことじゃね?」
うん、調子は良さそうだ。

ノートの下には、白いカードが一枚。
裏返すと青い文字で「タナミチ チナミ 4」と書かれている。


さて、色々と試せそうなことはあるが・・・
やっぱり重要なのは、俺の名前の入ったカードだよな。
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