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告発

生き延びてこその結果

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食堂にふらつく足取りで現れた私を椅子に座らせたのは彩芽さんだった。
彼女はペラペラと、先ほどまでに起きた一連の出来事を語った。


黒木が医者で、トリカブトにおかされた私を助けたこと。
その上で、毒を酒に入れていた殺人犯(?)だったこと。
彩芽の持ってきた黄金の酒と鳩羽には因縁がありそうだということ。
紫野は私たちが探してた菫だったこと。
そのことが分かるや否や、死んでしまったこと。


いずれも衝撃的な事実だったはずなのに、さほど驚きはなかった。
特に菫については、あの夢を見た時から覚悟していたことだ。

「それだけじゃない」

机の木目から目を逸らせなくなってしまった悠人くんは、そのままの姿勢で私以外にも聞こえるように言った。

「菫は最後にこう言ったんだ。紅丸を殺したのは自分だ、って」

―――んん?

「それはおかしいよね、悠人くん」
「・・・・」

思わず口を突いた私の言葉には悠人くんは一言も返さず、廃人のように項垂れるだけだった。
仮に、それが事実なら、今までの議論は何だったんだ?

今時点でわかっている、紅丸を赤の塔で殺そうとした人物は、3人。
夕方、毒を紅丸の酒に入れた黒木。
その後、赤の塔で眠っている紅丸めがけて像を落とした月白。
最後に、塔に閉じ込めたうえで火をかけた老竹。

3人が「蛭子」と言う人物からの指示に従い、復讐したことを認めている。
その紅丸を菫が殺したというなら、紅丸は毒を飲まなかったことになるし、月白が殺害するよりも前に殺していたと言うことになる。

「なら尚のこと」沈黙を破るのは鳩羽だ。
「自分の部屋にある証拠を見つけられまいと、罠を張った。この推理で確定です」

「そうかなー?」と、呑気な口調で異を唱えたのは、彩芽だった。
「だって紫野・・・菫さん視点だと、自分のことを探しに来た恋人の山吹はるちんと親友のちゃりたそが、部屋に証拠を探しに来るかもって絶対思うわけじゃん?そんな場所にデストラップ仕込まなくない?」

しかし鳩羽は少しだけ考えると「こういうのはどうでしょう」と反論を展開する。
「そもそも呼び出しておいて殺すのが目的だったと考えることもできます。紅丸を殺してしまえばそのまま逮捕されるかもしれない。今夜中に標的を殺すために一か所に集めた」

「だったら最初に私が部屋を探した時点で、罠にかかってたはずだよね」

そう言いながら、私はあの罠を張ったのが誰なのか確信した。
私だからこそ、確信できた。

「鳩羽さん、やっぱりあの罠を仕掛けたのはあなただよ」
「・・・理由を聞きましょうか」
「あの部屋で見つかったトリカブトの中身を抜いたのもあなただし、私たちが菫を探していたのも、そのことで紫野を疑ってたのも、あなたには話したよね」

胸の前で腕を組み、無表情にこちらを見つめていた鳩羽。
全員の視線を注がれて尚、まるでバカげたたわごとだと言いたげに、少しだけ眉を下げている。

「・・・ホントは私じゃなくて悠人くんを狙ったんじゃない?」

その鉄面皮に、ひびが入る。
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