迷宮探索者シャーリー ~石ころ大好き少女の時を越えた約束~

小日向ななつ

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第3章 負けっぱなしじゃいられない

25:光を失った七色ダイヤ

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◆◆31◆◆

 ダルシオの協力のおかげもあり、シャーリーはもう一度迷宮へ突入する準備が整った。
 彼女はすぐに出発しようとしたが、ダルシオがそれを止める。

「僕も行く。だからちょっと待っててくれ~」
「え? ダルシオさん来てくれるんですか?」
「そういってるだろ~。すぐに準備ができるから待ってて~」

 ダルシオが家の奥へ消えていく。シャーリーは彼を見送った後、ひとまず作り上げたアイテムを確認した。
 体力を回復させるポーションを始め、広範囲に攻撃ができるトゲトゲ爆弾、爆発力を重視したグレート爆弾、暗い迷宮にはうってつけのホタル綿とそろっている。
 この全てを作り上げたシャーリーだが、まだ足りないと考えていた。しかし、これ以上は錬金術に時間をかけたくない。

 迷宮に取り残されたドロシアが待っている。もしかしたら白いモコモコ達をヴァルゴから守っている可能性があった。
 だが、ドロシアは人だ。完璧ではないし、むしろどこか抜けているところもある。
 だからシャーリーはそんなドロシアの背中を守りたい。今まで助けてくれたのだから、そのぐらいの恩返しをしたいと考えていた。

 そんな風にシャーリーが想いを抱いていると準備が整ったダルシオが声をかける。

「お待た~。ちょっと引っ張り出すのに時間がかかっちゃったよ~」

 シャーリーが振り返ると、そこにはジャケットにハーフパンツといった服装をしたダルシオが立っていた。背中には大きめのリュックがあり、胸元にはナイフが備えられている。
 見た限り、オーソドックスな探索着だ。シャーリーがそう思って見ていると、ダルシオはさらにそれを強調するかのようにメットを被った。

「これでよし。じゃあ行こうか」

 先ほどまで見ていたパジャマ姿とは打って変わって、ダルシオはどこか頼りになる姿に変わった。
 シャーリーはそれに内心驚きつつ、ダルシオと一緒に迷宮へ向かう。
 そんな二人をおじさんが「気をつけろよー」と手を振って見送ってくれた。

「待っててみんな。今行くから」

 シャーリーは再びヤビコ迷宮に挑む。
 取り残されたドロシア、そして白いモコモコ達を助けるために飛び込んだのだった。

◆◆32◆◆

 そこは真っ黒だった。
 点々とだが輝いていた星の輝きは消え、迷宮はほとんどが闇に包まれている。
 生えているホタルビリップの輝きは頼りなく、しかしその光を頼りに集まっている生物がいた。
 闇はモンスターの脅威を増させ、その恐ろしさを少しでも紛らわせようと光に集まる。だが、それが格好の狩り場になってしまう。
 その証拠に、何かの悲鳴が響いた。

「グギャアァアアアァァァァァッッッ」

 ホタルビリップの近くで身体を休めていた牛が力なく倒れる。その牛を飼ったゴブリンは、歓喜していた。
 事切れた牛は贅沢な食材となる。それに場合によっては新たな武器を作ることもできるのだ。
 だが、やられたほうは堪らない。恐怖に身体を震わせ、恐怖の中で死んでいく。
 そんな環境では生態系の変化は起き、今までのように維持するのは難しくなる。このままではいずれ、狩りはさらに難しくなるだろう。
 環境変化が起きつつある迷宮に、シャーリーは足を踏み入れた。すっかり闇に包まれた迷宮を見て言葉を失っていると、彼女にダルシオが声をかける。

「なんだか変わったね。ここってこんな所だっけ?」
「ううん、私がさっき入った時は星の明かりもあったんだけど」
「何かが変化を起こしたのか。じゃあその原因を取り除かないとね~」

 シャーリーはこの暗い空間を照らすために、あるアイテムを取り出す。
 それはホタル綿だ。ビンの中に詰めていた光る綿毛をつまんで少しだけ取り出し、放り投げる。
 するとホタル綿は風に乗り、空間に漂い始めた。ほのかな輝きが闇を照らす中、シャーリーは歩き出す。
 ダルシオはシャーリーが作り出したホタル綿に感心しつつ、その後ろを追いかけた。

「ところで、どこに行くか決めてるのかい?」
「はい。ひとまず噴水に行こうかと」
「あ~、七色ダイヤがはめ込まれているあれだね~」

 もしかしたらみんなが待っているかもしれない。そんな期待を胸に抱きつつ、シャーリーは進んだ。
 だが、噴水があるはずの場所は真っ黒に染まっていた。シャーリーは思わず顔をしかめ、ホタル綿を蒔いてみる。
 ほのかな光が闇を払う。そこに浮かび上がったのは光を失った七色ダイヤがはめ込まれた噴水の姿だった。

「これは――」
「光ってないね。なんでだろ?」
「わからないです。でも、嫌な予感がする」

 シャーリーはフィリス達と出会った場所に急ぐ。
 そこにたくさんあった七色ダイヤを確認したいと思ったからだ。
 だが、シャーリー達の行く手を阻む存在が現れた。

「ギギィ!」

 聞き覚えのある声が響く。反射的に振り返ると、ダルシオが割って入った。そのまま腕で攻撃を受け止めると、力いっぱいに蹴り飛ばす。
 だが、何かはその攻撃があまり聞いてないのか元気よく叫び始めた。

「だ、大丈夫ですかっ?」
「どうにかね。たぶん、君を攻撃してきたのはゴブリンだ。だからこの程度で済んだかも」
「すぐに治療をっ」
「そんな時間はないよ。すぐに来る」

 ダルシオの顔が曇っている。おそらく想定以上にダメージを負ったのだろう。
 長引けば後々に響くかもしれない。そう考えたシャーリーは、あるアイテムを使うことを決意した。

「ダルシオさん、ここにいてください」
「がむしゃらに攻撃してもダメだよ。こっちがやられちゃう」
「ならもっとがむしゃらに攻撃します」

 シャーリーはそういってトゲトゲ爆弾を手にしていた。
 それを見たダルシオは目をギョッと大きくさせる。慌ててシャーリーから離れ、噴水の後ろへ隠れた。

 彼女はそれを確認しないままトゲトゲ爆弾を放り投げる。途端に強烈な閃光が広がり、闇に隠れていたゴブリンを炙り出す。
 同時にフレームについていた針がゴブリンへ襲いかかった。それは雨のように一定の範囲を埋め尽くす。

 ゴブリンは逃げようとしたが、遅い。気がついた時には針は目前に迫っており、ゴブリンは悲鳴を上げるしかなかった。

「アギャアァァァァァッッッ!!!」

 針だらけとなったゴブリンは断末魔を上げた。それは傍から見ているととても痛そうであり、ダルシオは思わず同情してしまう。
 そんなとんでもないアイテムを生み出したシャーリーは、小さく拳を強く握りしめた。
 そんな彼女を見て、ダルシオはため息をつく。

「やっぱりライザの子どもだな~」

 みんなを助けるためにも、ドロシアを見つけ出すためにもシャーリーは走り出す。
 暗闇なんてものともせず、ただまっすぐに突き抜けるのだった。
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