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本編
4日目~咲良side~
しおりを挟む料理部でシフォンケーキを作った。
思ったよりも上手く出来ていて、部活がもうすぐ終わるはずの煌夜を迎えに行こうと、駆け足になった時だ。
前をよく見ていなくて、人にぶつかってしまった。
「きゃっ…!?」
「わっ…!…ごめ、……」
相手は、咲良の顔を見て黙り込んだ。
「こっちこそごめんなさ………」
咲良も同様、相手の顔を見て黙った。
茶髪にピアス、学校指定でないパーカー。校則違反をしまくりの男。
「…智樹くん」
それは、煌夜の親友“だった”男で、咲良の“元恋人”の、瀬尾 智樹だった。
「……ワリ、良く見ないで歩いてた」
「…う、うん、私こそ…」
別れた理由は、長くなる。
別れ話を告げたのも彼から。
見た目はチャラチャラしているし、校則違反しまくりで先生からも呆れられている問題児だけれど、本当は誰よりも優しい人。
いつも人のためを思う人。
咲良と智樹は別れてから、1度もマトモに会話は愚か、挨拶をすることさえもなかった。
この先もずっとそうなのだと思っていたので、いざ目の前にいると何を言えばいいのか分からない。
(…なにか、言わなきゃ…)
そう思うのに、言葉が出てこない。
「…ごめんなさい」
「……俺、咲良ちゃんに謝らないでって言ったよね。…今のは俺がぶつかったから、俺が謝るべきでしょ」
そう言った声は冷たくて、淡々としたものだった。
もう、優しく話しかけてくれる彼はいない。
そりゃそうだ。
だって、私は煌夜を選んで、智樹を傷付けたのだ。それは、きっと今でも生傷のまま残っているだろう。
「………あっ」
思わず声を上げたのは、自分の手元を見てからだ。
せっかく綺麗にラッピングしたケーキが、見事に潰れていた。
「…それ、部活で作ったの?料理部の部室からすっごい甘い匂いしてた」
「あ、うん。シフォンケーキ作って…」
「…アイツに持って行くの?」
「え?あ、…うん」
智樹が言ったアイツとは、きっと煌夜のことだろう。
「潰れたのに?」
「そ、そーだよね、どうしよ…」
「……俺にちょーだい」
「えっ?」
思わず目を丸くする。
それは全く頭になかったからだ。
「いや、その…」
「…嫌だったらいいけど」
「そ、そうじゃなくてっ!潰れたからどうぞって、すごく失礼じゃ…」
「俺が欲しいって言ってんの」
「…えと、…どう、ぞ…?」
「…ありがと」
その一瞬、智樹の表情が柔らかくなった。
(あ、……)
付き合っていた時、私が大好きだった顔。
「…なに?」
「あ、ううん」
「……じゃあ、…」
「あ、うん。ありがと、バイバイ」
「…おう」
久しぶりに話して、やっぱり思った。
智樹は煌夜と似ていて、だからこそ仲が良かったのだろう。そして、似ていたから私も惹かれた。
私のせいで壊れた2人の仲を、また戻したい。
そう思った。
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