浮気癖夫が妻に浮気された話。

伊月 慧

文字の大きさ
44 / 102

44

しおりを挟む


「ーーえ?」

 あまりにもさらりと言い過ぎて、陽一の処理能力が追い付いていないようだ。

「あのね、おかしいなってずっと思っていて。それで、もしかしたら赤ちゃん出来てるかもって…」

 陽一が口を開けたまま何も言わないので不安になってしまう。もしかすると、陽一はあまり子供が好きではないのかもしれない。

「えっと……つまり、えっと……妊娠してるってことか…?」
「うん…」

 どうしよう。ーーなんていう心配はどうやら、いらなかったようだ。

「マジで!?え、俺の子が出来たの!?女の子!?男の子!?」
「よ、陽一、」
「なんでもっと早く言わないんだよ!」
「ごめ…」
「やばい嬉しい!」

 嬉しい。そう言われた瞬間が、私も嬉しい。


「お義母さんとお義父さんには言ったのか?」

 冷静になってきた陽一が笑いながら尋ねてくる。

「まだ…。陽一に言ってからにしようって思って」
「なら明日、俺の仕事終わったら一緒に報告に行こう!」
「え、電話でいいでしょ?」
「ダメだって!こういうのはちゃんと行かないと!」
「ウチより先に、陽一の実家ね」
「え?なんで?」

 何でって。…お義母さん達はいい人だけれど、それでも私は初婚ではないのだ。その事でやはり引っ掛かる所もあるだろう。
 けれど喜んでくれると思う。陽一が喜んでいる以上に。「孫の顔が早く見たい。陽一と香織ちゃんの子供ならきっと賢い子が生まれるよ、陽一は見た目だけ似ればいいかな」なんて言ったお義母さんの顔を思い浮かべる。

「とにかく。明日行くっていうのは陽一の実家にちゃんと連絡しておいてね」
「えー…」
「分かった?」
「わ、分かったよ…」

 これでようやく、私も『母親』になれるのだろうか。子供は欲しかったけれど、いざお腹にいると思うと不思議な感覚。けれど。

「次からは俺も検診についていくから」

 陽一がそばで守って、手助けしてくれる。きっとそれだけで私は十分なのだ。

「仕事は?」
「ちょっと抜けるだけ」

 この人と結婚して、出会えて、愛してもらえて。本当によかった。
 心から、そう思えた。 


***


「嫌ねぇ、気の多い人は」
「母さん?」
「どうして香織さんがいたの。それにもう再婚したんですって?」

 その言葉に和樹は詰まった。

「本当、嫌ねぇ」

 母親が何故か焦っているように見えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。 ※他サイト様にも載せています。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

処理中です...