浮気癖夫が妻に浮気された話。

伊月 慧

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 ゆっくりと部屋の中へ入った結子の真っ青な顔に気が付いた和樹が声をかける。

「どうした?干さないのか?あ、手伝う…」
「いる」
「…は?なにが?Gでも出た?」
「違う。元カレ、そこにいる」
「………は?」

 しばらくの沈黙の後に、和樹はベランダの外を見た。

「どこ?」
「共同玄関のとこ」
「……いるな」

 明らかに挙動不審な男。中をチラチラと伺っている。

「新しい家教えたのか?」
「まさか!教えるわけないじゃない!」
「…どうやって知ったんだ?ストーカーかよ…」

 昨日に結子の母から連絡があったこともあり、ストーカーという言葉はやけにしっくりきた。

「…え、どうしよう」
「警察に連絡するか?」
「も、もしかしたら待ってるのは、ここに住んでる知り合いかも…」
「俺もそう思いたいけどさ」

 それに大事にはしたくないし。警察なんて呼んだらそれこそ、取り返しのつかないことになりそうで。

「…取り敢えず、無視しておけばいい」
「そう、だね」
「それ、俺が干しておく。お前は部屋の中に入ってろ」
「ありがとう」

 こんなにも和樹の存在が安心させてくれるなんて、知らなかった。
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