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しおりを挟むまだいる。それが何を意味しているのか分かったからこそ、結子は顔を真っ青にした。
「……いる」
「…いる、な」
あれからもう何時間経った?もう夜の九時だ。いくら休日でも、そこまで暇な男じゃなかったと記憶している。
「……いや、多分、私じゃないよ」
「そう思いたいけど」
「だって私が振られたんだよ?振った側ならまだしも…ね?」
「そう、…そうだよな」
よし、行こう。二人で何でもないように、マンションのエントランスに入ろうとした時だ。
「結子!待ってたんだぞ!」
「……えっ」
待って待って、なんで私を呼び止める?
「…なんでここに」
「ったく。お前、俺がずっと待ってたってのに」
「いや、頼んでないよね!?」
昼前と変わらず同じ格好で立つ元彼に何を言うのが正解か分からない。
「え、なんでこの家知って…?」
「あぁ。昨日、心配だったから見送ったんだ」
「……ストーカーって言うんだよ、そういうの…」
「ストーカー?そんな物騒なものじゃないって」
「いや、ストーカーだよね!?」
ワガママだな、なんて口にした元彼がポケットの中へ手を突っ込む。まさか凶器でもーーなんて考えていたら、それよりもヤバイものを渡された。
「ほら、結婚しよう。プロポーズしなかったから怒ってるんだろ?」
「怒ってないよ!?ていうか私、結婚するんだって…」
「分かってる分かってる。ちゃんと、結子の家に挨拶に行ったからさ!」
どうしよう。気持ち悪くて仕方がない。
「おい、コイツ大丈夫か?」
和樹の声に我に帰る。うん、何ていうか。何をするのが正解か分からない。
「…結子?誰だよ、その男」
「だから私の彼氏だよ!!婚約者!!!」
「あぁ、アンタのこと調べたぜ?」
待って。もう気持ち悪いでは言い切れないほどの恐怖なんだけれど、どうするのが正解?
「は?」
和樹の間抜けな声に、元彼は高らかに笑う。
「アンタ、バツイチなんだって?しかも浮気して、その浮気相手に刺されたんだろ?そんな奴に結子と結婚する資格なんかねぇんだよ!」
何言ってんだコイツ。資格とかないし、あったとしても私が決めることだし。
そもそも別れるって言ったのそっちだし、私の言うこと信じなかったのお前だろーが。
そんなことを考えていたら、自然とスマホに手が行っていた。
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