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4時25分
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わたしは身じろぎした。ゆっくり目を開くが、外はまだどっぷりとした闇。けれど、寝室の外――リビングの方から、小さな声が聞こえる。
ひそひそ、ひそひそ、
こっそりと電話をしているかのような声。時間を確認するが、まだ4時10分。子供たちが起きる時間でもなければ、飼い猫が朝ごはんをねだるにも早い。
(気になる……)
もう一度布団をかぶって寝ようとしたが、気になって寝付けない。――本当に子どもが起きて来てるかもしれないし。
そう思い、わたしは夫を起こさないように布団から出た。
足音を出さないようにゆっくりと床に足を下す。
キシッと軋んだが、夫は起きる気配がない。胸を撫で下ろして、リビングへ向かう。
明かりはついていない。外と同じく、どっぷりと深い闇が広がるばかりだ。
ひそひそ、ひそひそ、
闇に、小さな声が混じる。
途切れることなく。
(気味悪い……)
闇の中とはいえ、慣れ親しんだ家の中だ。明かりがなくても歩ける。
リビングのドアノブに手をかける。
ひそひそ、ひそひそ、
ゆっくりと、音を立てないように握り込む。
ひそ、ひそ、ひそ、ひそ、
小さな声。
――ふう、と深呼吸をする。
ひそひそひそひそひそひそ
「っ!!」
思い切って、ドアを開け、電気をつける。
――シン
沈黙。
「――なんだ」
何もいない。
そこにあるのは、いつものように、少し散らかったリビング。
カバーがめくれたこたつ、まっすぐに戻されていない椅子、定位置から外れたティッシュ。積み重なった漫画。真っ暗なテレビ。
猫はケージの中で『んなう』と鳴きながら、寝返りを打っている。
(よかった)
気のせいだった。きっと疲れていたんだろう。
――ふう、
今度は安堵のため息がでた。
リビングの時計を確認する。4時20分。あと2時間は寝られる。
猫にご飯をあげて、お米をセットして、洗濯ものをして、子どものお弁当を作って――。やることは沢山ある。少しでも寝なければ。
わたしはリビングの電気を消して、あくびをかみ殺した。安心したら眠気がやってきた。
キシ、キシ、と床が音を立てる。いくら足音を立てないように、と思っても完全に音を殺すのは難しいものだ。
キシ、キシ、キシ、キシ
暗い中で、わたしの足音がする。
キシ、ペタ、キシ、ペタ
――?
寝室の扉をあける。
夫は少しの寝返りもなく、深く眠っている。
――パタン
扉を閉め、夫の隣に滑り込む。少し冷えた体に、夫の体温が心地いい。
目を閉じる。これならすぐに寝られそうだ。
ひそ、
――?
ひそ、ひそ、ひそ、ひそ
(――――!!)
声が。
――ね、――ね、――?
耳元で……!!
ぞわっと鳥肌が立った。遠かったはずの声が、吐息を感じるほど近くに……!!
――――――――――気付いてるよね?
カチッカチッと、時計の針の音が、その声にかき消された。
***
鮮度抜群の母親の体験談を元にした作品です。今日(11/26)聞かされました。
ひそひそ、ひそひそ、
こっそりと電話をしているかのような声。時間を確認するが、まだ4時10分。子供たちが起きる時間でもなければ、飼い猫が朝ごはんをねだるにも早い。
(気になる……)
もう一度布団をかぶって寝ようとしたが、気になって寝付けない。――本当に子どもが起きて来てるかもしれないし。
そう思い、わたしは夫を起こさないように布団から出た。
足音を出さないようにゆっくりと床に足を下す。
キシッと軋んだが、夫は起きる気配がない。胸を撫で下ろして、リビングへ向かう。
明かりはついていない。外と同じく、どっぷりと深い闇が広がるばかりだ。
ひそひそ、ひそひそ、
闇に、小さな声が混じる。
途切れることなく。
(気味悪い……)
闇の中とはいえ、慣れ親しんだ家の中だ。明かりがなくても歩ける。
リビングのドアノブに手をかける。
ひそひそ、ひそひそ、
ゆっくりと、音を立てないように握り込む。
ひそ、ひそ、ひそ、ひそ、
小さな声。
――ふう、と深呼吸をする。
ひそひそひそひそひそひそ
「っ!!」
思い切って、ドアを開け、電気をつける。
――シン
沈黙。
「――なんだ」
何もいない。
そこにあるのは、いつものように、少し散らかったリビング。
カバーがめくれたこたつ、まっすぐに戻されていない椅子、定位置から外れたティッシュ。積み重なった漫画。真っ暗なテレビ。
猫はケージの中で『んなう』と鳴きながら、寝返りを打っている。
(よかった)
気のせいだった。きっと疲れていたんだろう。
――ふう、
今度は安堵のため息がでた。
リビングの時計を確認する。4時20分。あと2時間は寝られる。
猫にご飯をあげて、お米をセットして、洗濯ものをして、子どものお弁当を作って――。やることは沢山ある。少しでも寝なければ。
わたしはリビングの電気を消して、あくびをかみ殺した。安心したら眠気がやってきた。
キシ、キシ、と床が音を立てる。いくら足音を立てないように、と思っても完全に音を殺すのは難しいものだ。
キシ、キシ、キシ、キシ
暗い中で、わたしの足音がする。
キシ、ペタ、キシ、ペタ
――?
寝室の扉をあける。
夫は少しの寝返りもなく、深く眠っている。
――パタン
扉を閉め、夫の隣に滑り込む。少し冷えた体に、夫の体温が心地いい。
目を閉じる。これならすぐに寝られそうだ。
ひそ、
――?
ひそ、ひそ、ひそ、ひそ
(――――!!)
声が。
――ね、――ね、――?
耳元で……!!
ぞわっと鳥肌が立った。遠かったはずの声が、吐息を感じるほど近くに……!!
――――――――――気付いてるよね?
カチッカチッと、時計の針の音が、その声にかき消された。
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鮮度抜群の母親の体験談を元にした作品です。今日(11/26)聞かされました。
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