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第二章
04:朝食
しおりを挟む朧唯は綾が雑に詰め込んだ冷蔵庫を整理する。大量に持ってきてくれているのは助かるのだが、詰め込み方が大雑把過ぎるので整理しておかないとどこに何があるのか分からなくなってしまう。
「朧唯~、こっち手伝って」
「ちょ、待って、って、焦げくさいし!」
慌てて冷蔵庫を閉めて駆け寄る。案の定、卵焼きになり損ねたスクランブルエッグが焦げていた。フライパンにもしっかりと焦げ付いていて、後始末を考えて頭が痛い。
「……綾さん、あとは任せてほしいんやけど」
「あんたの負担減らしてあげようと思ったのに」
「いや、手間増えとるから」
見なくても強火だったことがわかる。フライパンを救出し、皿に中身を移す。週に一度、お決まりのやり取りだ。
「もう仕事行きや」
「朔夜の顔見てから行こうと思ったのに」
「ええって。これ見たら来たんはわかるやん」
「やっぱり私の顔は見たくないのかしらね」
「――ま、朋夜にそっくりやしな」
「私が産んだわけじゃないのにねぇ」
ふふ、と笑う綾の顔は、朧唯も直視出来ない。あまりに朋夜と似ているからだ。
「じゃ、仕事行くわね」
「行ってらっしゃい」
手を振る綾を見送る。朧唯はその背を見送ることなく、冷蔵庫の整理に戻った。
――
トーストとサラダ、焦げた卵を見て、朔夜が目を伏せた。
「綾さんの料理か……」
「嫌がんなって。お前のために作りに来たんやで。ところで、麗くんは起こして大丈夫そうなんか?」
「ああ……」
食卓に着いた朔夜に聞けば、寝室をちらっと見る。
「朧唯が判断してくれ」
「それは『どっち』か、わからんってことか?」
「……俺には判断つかない」
動きを見れば、一言でも発すれば、朔夜でも判断は出来る。いいや、誰でもわかるほどに明確な違いがある。しかし、布団にくるまっている現状で区別はつかない。
朔夜からすると、もうひとりの『麗』は説明のつかない異質なものだ。
そして、『それ』と会話することを本能的に恐れている。
「しゃあない。――サクは、先に食べといて」
その恐れは朧唯も理解していた。そして、朔夜に対処が出来ないことも理解している。
「――」
朔夜は朧唯の背を見送り、焦げた卵を口に運んだ。
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