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牛歩

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 次は牛だな。

「牛はいるかー!」

「はーい!」

 な、なんだ? こいつ。怖いくらい隙だらけだ。

「あいつ弱そうだな。よし、ここはオラに任せろ!」

「待て! 土野つちの!! 戻ってこい!!」

「大丈夫だ! あんなやつオラ一人でじゅう……ぶん……だー」

「こ、これは!!」

「私の能力『牛歩』はー、敵の動きや攻撃をものすごーく遅くしちゃうのー。だ・か・ら! あなたたちがこの先に進むことは不可能なのよー!」

 包容力、巨乳、豊満、母性、性格はおっとり。そして能力は減速。はぁ……非の打ち所がないな。

「俺がなんとかしようか?」

「天狗風、お前は待機だ」

「じゃあ、誰が牛娘を倒すんだ?」

水母くらげだ」

「え? こいつにそんなことできるのか?」

「できる。というか、こいつにしかできない」

「そっか。じゃあ、あいつを倒せたら教えてくれ」

「分かった」

 よし、じゃあ、やるか。

水母くらげ

「なあに?」

「今からお前は名子役だ」

「……なるほど。最年少の私の演技があいつを倒す鍵になるんだね」

「そういうことだ。できそうか?」

「余裕」

「そうか。じゃあ、任せたぞ」

「うん」

「あらあら? どうしたの? 泣いてるの?」

「うう……ママー」

「……っ!?」

 さすがだな、アドリブなのにあいつのハートをがっちり掴んでる。

「ママー、ギュッてしてー」

「いいわよー! ほら、おいでー!」

「わーい、ママだーいすきー」

「私もよー。おー、よしよし」

「……はい、隙あり」

「し、しまった……!」

「ごめんね、ママ。でも、あなたはいいママになるよ」

「断言したな」

「まあね。でも、あれで能力解除しちゃうんだね」

「子ども相手だとプロでも躊躇したり油断してしまうからな」

「そうなんだ」

「ああ、そうだ。おーい、天狗風ー、終わったぞー」

「おー」

土野つちのー、次の部屋行くぞー」

「お、おう!」
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