「異世界メスガキカフェ戦記~元教師と二人の美少女社長~」

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EP 2 メスガキカフェ経営戦記:第二章「顧問の判断」

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投票、それは血より冷たい数字だった

「命令を聞かないスタッフには、大粛清が必要なんです♡」

……この女もヤバいやつだな。

「仕事は利益のためにするものです。権力のために動くのは、経営にとって害悪ですよ」

私の言葉に、スタリナは少しだけ落ち着きを取り戻した。

「……ふふっ。もし、あなたが私に協力してくれるなら、ケシなんかより、もっと“上等な見返り”を用意してあげますよ」

何をくれるのかは知らないが、とりあえず頷いて今は目前の業務に集中することにした。

そして、全スタッフによる全体ミーティングが始まった。本店のスタッフと、リモート参加の2号店スタッフが一斉に集合。なんと、休憩室には投票システムまで設置されていた。

巨大なスクリーンの前に立ったケシが、いつもの笑顔で煽りに来る。

「メスガキ諸君~♡ いつもクッッッソ雑魚なおじさんどもと仲良くしてくれてありがと~♡ 今日も最高にヤバい提案、持ってきたから、耳かっぽじって聞きなさいよね♡」

スクリーンに映し出された提案内容:

「売上トップ3人に、地球研修旅行プレゼント♡」

意外にもまともな提案だった。彼女のことだからまたカオスな施策かと思ったが、成功者の風格は隠せない。

続いて前に出たスタリナは、冷静な表情で告げる。

「毎月、成績上位者には報奨金。そして年間トップには、新店舗マネージャー職と売上連動インセンティブを支給します」

段階的な昇進制度による競争型の経営方針。正直、二人とも一長一短で優秀だ。

「顧問さん。あなたの意見も聞かせていただけますか?」

不意打ち気味にケシが振ってきたが、私は動じず返す。

「お二人の提案、どちらも素晴らしいです。ですが、最も大切なのはスタッフの声だと思います」

――どっちにも味方せず、華麗に中立ポジションへ。ケシ、お前は油断ならない。

投票が開始され、私が開票役を担うことになった。

「それでは、投票結果を発表します」

総投票数12票。

ケシ:3票 スタリナ:9票

「な、なんでよぉ~~~!? ひどいひどいひどいっ!!」

ケシの悲鳴をよそに、スタリナはゆっくりと一礼しながら語る。

「皆さんの支持を得られて光栄です。今後も、皆さんの努力に報いる方針を用意していきます」

ケシは私を倉庫に呼び出し、涙目で訴える。

「ひぃぃん……顧問さま、どうしたらいいの……?」

「君の案も悪くなかったよ。ただ、今回はスタッフの心を掴んだのがスタリナだった、それだけだ」

「……うん」

「私から皆に個別に話を聞いてみる。次はもっと良い提案を出そう」

「ファ、ファイト……だねっ」

気まずい空気を断ち切るように、無理やり励まし合って別れた。

私はスタリナのもとへ。

「おめでとうございます。あなたの案が採用されましたね」

「ええ、もちろん。……あなたが私に入れてくれたこと、知ってますよ? ふふっ、ありがとうございます」

囁くように礼を告げた後、スタリナは2号店へ向かっていった。

「さて、本店スタッフとの面談に入りましょうか」

最初に呼んだのはロリ。

「ロリさんは、ここでの勤務歴はどのくらいですか?」

「10ヶ月です。本店では二番目に古株ですね」

「ここで働いてて、一番良かったことは?」

「お給料がいいし、干渉も少ないので気楽で助かってます」

「役職制度や昇給についてはどう思いますか?」

「お給料上がるのは嬉しいですけど、役職つくと面倒なこと増えそうで……私は今のままが一番です」

なるほど。彼女は“自由と安定”を好むタイプらしい。

次に呼んだのは――

「えっと……ボッチュさん、で合ってますか?」

「はいっ」

可愛い服に包まれた華奢な身体、でも声が……

「……男性、ですよね?」

「そうです。でも、こういう声も出せますよ♡」

その一言で確信した。このカフェ、ヤバさの密度が異常だ。

「ボッチュさんは、自分の強みは何だと思いますか?」

「女装できるところ! あと、メスガキコンセプトが面白くて、社長がガチで研究してるから尊敬してます!」

ケシ信者枠、確認。

そのままカフェが開店し、店内は大盛況だった。

「な~に ニヤけてんの♡ 貧乏人のくせにカフェとか背伸びしすぎ~♡」

客が罵倒されて喜んでる姿を見て、私は静かに目を閉じた。世も末だ。

ケシは今日も人気絶頂。ツートンツインテールのちびっ子が大人の心をつかんで離さない。

「女の子待ちで時間潰してんの? 家帰って風呂でも入って寝とけって♡」

ドMなおじさんたちを一掃した彼女の売上は爆発的。今日一日でなんと3000万円超え。

「まさか、こんなに稼げるとは……」

「ぜ~んぶレニア姉から学んだんだよ♡ 私、カフェ労働者のためのパラダイスを作りたいの♡」

「お前、運だけで成功したんじゃないのか?」

「運も実力のうちだよ? かわいい子には運も味方するって、常識♡」

「普通の奴は死ぬ気で働くか、私みたいな運命の寵児に仕えるしかないの♡」

正拳突きたい衝動を抑えながら、私は給料のために頷いた。

「じゃあ、そろそろ帰っていいか?」

「ダメ♡ 今日の初仕事記念に、ごはん&飲みコース、付き合ってもらいますから♡」

……またしても、社長命令に逆らえなかった。

かつて異世界の学校で、校長の理不尽な指示にも耐えてきた日々を思い出す。あの時のように、私は腹を括った。

「ああ··· これからが本番だね」
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