美少女パパと最強娘! ~前世の娘がクラス召喚されてきた!? TS転生者のパパは正体を隠しつつ娘の為に頑張る! その美貌と悪辣さで~

ちりひと

文字の大きさ
11 / 93
第一章. パパは美少女冒険者

011. 父と娘、その別離

しおりを挟む
「レヴィアぁ!!」
「そんな、嘘だろ!?」

 二人は悲鳴を上げつつレヴィアの元へ走る。彼女らは知っているのだ。レヴィアの防御力がそれ程無い事を。
 
「外道のたぐいかと思ったが……それなりにマトモな部分もあったようだな」
「何だか後味悪いよ兄ちゃん……」

 黙祷するように目をつぶる男と、バツの悪そうな顔をする少年。
 
 素性が知れない者たちではあるが、人質を取らなかった辺り卑怯者ではないのだろう。このような結末は彼らにとっても不本意なのかもしれない。
 
「行くぞ。精霊石を見つけねば」
「う、うん」







「あら、どこへ行くのかしら?」







 がばっと後ろを向く襲撃者二人。聞き覚えのある声だった。先ほど煽りに煽ってきた女の声だ。
 
「レヴィア! 無事なの!?」
「ええ。何故か知らないけど助かったみたいですわね」

 つかつかと炎の中を歩いている。ダメージを負った様子は無い。
 
「馬鹿な、無傷だというのか……!」
「それどころか火が効いてないみたいだよ兄ちゃん」

 魔力強化、あるいは水属性魔法で防いでいたとしてもありえない。どちらも熱を完全に遮断する訳ではないのだから。
 
 二人はさらなる警戒心を抱きつつレヴィアを注視する。そして彼女がその姿を現した時――
 
 
 
「「「「ぶっ!?」」」」



 ここにいる全員が噴き出した。それもそのはず。炎の中から出てきたレヴィア。その姿は――
 
 
 
 
 
 
 
 素っ裸だった。
 
 
 
 
 
 
 
「やってくれましたわね。何故かダメージは微塵もありませんが……」
「ちょ、レヴィア!」
「リズ、心配は不要でしてよ。この通り無傷ですから。それよりあの狼藉者どもを始末しなくては」

 目を細め、「わたくしをビビらせた罪は重いですわよ」なんて言いながら男へ飛び掛かる。素っ裸で。
 
「な、ちょ、待て! 近づくな!」
「待てと言われて待つ阿呆はおりませんわ!」

 後ずさりする男。レヴィアはそれを逃さず剣を振るう。何かがぷるんと躍動する。
 
 防御する男の鼻からたらりと赤いものが一筋。左手それを抑えようとするが、どうにも止まらない。不審に思うレヴィア。キーゼルバッハが切れやすいのだろうか。
 
「レヴィア! 服! 服ぅー!!」

 手に布切れを持ったリズが焦ったように駆けてくる。「はぁ?」と疑問に思い下を見てみると……。
 
「なっ!? 何で素っ裸なんですの!?」

 驚きの表情を見せるレヴィア。本気で気づいてなかったらしい。

「わたくしの服は!? ……まさか燃えた? 燃えちゃったんですの!? あの服めちゃくちゃ高かったのに!」

 激怒するも、特に隠すといった行動は見せない。
 
 男であっても股間くらいは隠しそうなものだが、新之助時代から彼女は自分の身体に絶大な自信を持っていた。故に裸を見られて恥ずかしいなどという感情は一切存在しない。恥じるものなど何一つ無いのだ。金は取るかもしれないが。
 
「テオ! 撤退! 撤退だ!」
「えっ。わ、わかった! 乗って兄ちゃん!」

 その隙に鼻を抑えた男はドラゴンの背中に飛び乗り、テオと二人して逃げていった。地上から「テメー弁償しろ!」なんて声援を受けつつ。
 
 こうしてぐだぐだになりつつも危機は去ったのであった。
 
 
 
 だが、とある人物にとっての危機は去っていない。

 
 

 
 
 
「……すごい、ドラゴンをやっつけちゃった!」

 馬車の陰からきらきらとした視線を送るルル。
 
 彼女の中でレヴィアの株は上がりに上がっていた。昨日まででも十分にすごいとは思っていたが、今日のはレベルが違う。
 
 何せ、ドラゴンを退けてしまったのだから。
 
 ドラゴンといえば物語の中で最もポピュラーな魔物だ。時に味方、時に敵と両極端に描かれるドラゴンだが、彼女が知る絵本では悪い魔物という役柄だった。お姫様をさらったドラゴンを正義の騎士が討伐し、お姫様と結婚するというよくあるストーリーだ。
 
 つまりルルの中では『ドラゴン=悪いヤツ』『ドラゴンを倒した人=正義の騎士』という認識だった。実際に殺されてしまうところだったのだから、その認識は間違っていない。そんな悪いヤツからレヴィアは身を挺して自分をかばい、ドラゴンを撃退した。憧れてしまうのも当然の事であった。
 
「お父さん! レヴィアちゃんすごいね! お姫様なのに、騎士様みたいに強い!」

 隣の父へ同意を求める。自分と同じく彼女に救われたのだ。きっと同じような思いを抱いているに違いないと考えたのだ。
 
 しかし、どうにも返事が返ってこない。
 
「お父さん! お父さんってば! ……お父さん?」

 何やら様子がおかしい。不審に思って隣の父を見上げるルル。
 
 そこにあったのは――
 
 
 
 
 
 
 
「全く、やってられませんわ。あの服いくらしたと思ってるんですの」
「知らないわよ。大体あんな恰好で町の外に出ること自体が間違ってるの」

 ぶちぶちと愚痴りつつも着替える。
 
 レヴィアのは燃えてしまったのでネイのものだ。かなり大きいが、つんつるてんになるリズのものよりはマシだ。「うわ、ダサ」と悪態をつきながらボタンをとめる。
 
「けど、何で無事だったんだ? まだ何か隠していたのか?」
「そういう訳じゃありませんけど……。多分、コレのお陰ですわね」

 疑問を呈すネイに対し、着替え終えたレヴィアは焼け跡へと歩く。そして地面から赤いものを拾った。
 
「この石。攻撃が当たる瞬間に光り出したんですの」

 精霊石。あの襲撃者がそう呼んでいたものだ。今は以前と同じく淡い光を放っている。
 
「ほう。その石の。一体何なんだろうなこれは」
「結界みたいな効果があるのかしら。……ってちょっと待って。何でここにあるの? さっき投げてたわよね?」
「あれはニセモノですわ。懐にあったものをテキトーに投げたんですの。億単位の価値があるものを誰が投げるものですか」

 レヴィアの答えに「ああ……」「まあ、そうよね」と納得する二人。あんな勢いで投げれば大抵のものはぶっ壊れる。そんな勿体ないことをレヴィアがするはずがないのだ。

「とにかく危機は去った。さっさと出発しよう。また襲ってこないとも限らん」
「そうね、行きましょ」

 三人は馬車の方へ歩き出す。幸い被害はないようで、ランドとルルも元気そう。かばったかいがあったというものだ。

「ああ皆さん、ご無事で何よりです! 驚きました! まさかドラゴンを撃退してしまうとは!」

 ランドは歓迎するように両腕を開き、すごいものを見たという表情で迎えてくる。
 
「さすがはA級冒険者ですね。ドラゴンが来たときは死を覚悟しましたが……いやあ、本当に驚いた。ありがとうございました」
「いえ、今回の襲撃はこちらの事情によるものでした。なので礼は不要です。むしろ謝らなければなりません」

 頭を下げるネイ。それに対し、ランドは苦笑しつつも言う。

「まあ、それについては思うところが無いわけではありませんが、守ってもらった事実は変わりません。特にレヴィアさんには体を張ってまで守って頂けた。ここまでしてもらっては文句など言えませんよ」
「そうですか。ありがとうございます。残りの道中もしっかり護衛致しましょう」
「よろしくお願いします。ほら、ルルもお礼を言いなさい」

 ランドはルルの頭を下げようと手をやる。
 
 
 
 ……が、何故かすっとよけられてしまう。あれ? と思うランドをよそに、ルルはレヴィアへと駆け寄った。
 
「レヴィアちゃんありがとう! すっごく恰好よかった!」
「あら、ありがとう。ルルも偉いわね。泣いたりしなかった?」
「泣かないよ! 魔物に会ったら泣いちゃダメだって言ってたもん! その…………お父さんが」
「?」

 何やら言葉がしりすぼみになっているルル。後半のテンションの下がりっぷりに一同は首をかしげた。

「はは、目立つと狙われるからな。守られる側は守られるなりに努力しなくては。ルルもよく頑張った」

 ランドは褒めつつも頭をなでようと手をやる……が、またよけられてしまう。
 
 何で? と思い、ルルの顔を覗くと……
 
 
 
 とても嫌そうな顔だった。
 
 
 
「ル、ルル……」
「はい。何か用ですか」
「何で敬語!?」

 訳が分からない。一体何があったのだ。ランドは自問するも答えは出てこない。
 
 そんな風に悩む彼を無視したルルはレヴィアへと近づき、「レヴィアちゃん、ダメ」と言いながら彼女を押し始める。一体なんなのかとレヴィアが問いかけると、ルルは嫌そうな顔のまま口を開いた。
 
「レヴィアちゃん、あんまりお父さんに近づかない方がいいよ」
「どうして? 加齢臭がするから?」
「そうじゃないけど……」

 ルルは何かを思い浮かべているようだ。一瞬ランドを見た後、ぼそりと言う。
 
「パパ、スケベだもん」
「――!」

 ランドは全てを理解した。理解してしまった。

 言い訳をさせてもらえば、男というものは好意のあるなしに関わらず美人を見ると注目するように出来ている。それが目の前で素っ裸になるならガン見せざるを得ない。ちょっと顔がだらしなくなっても仕方ないのだ。つまり男としてのランドに落ち度は無い。
 
 が、父としては別である。娘の前でそういう姿を見せるべきではなかった。まだ幼いからこそ油断していた。例えばルルの姉にそーゆー姿を見せたらどうなるか。考えるまでもない。
 
「ル、ルル……」

 救いを求めるように手を前に出すランド。しかしルルは嫌悪と軽蔑のまなざしで見てくるばかり。その胸中は父親なら誰もが察せるだろう。
 
 
 
『お父さんキモい』
 


 幼児ルル。六歳。
 
 早すぎる父離れの訪れであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...