美少女パパと最強娘! ~前世の娘がクラス召喚されてきた!? TS転生者のパパは正体を隠しつつ娘の為に頑張る! その美貌と悪辣さで~

ちりひと

文字の大きさ
16 / 93
第一章. パパは美少女冒険者

016. アーサーの女神

しおりを挟む
 上品に微笑むレヴィアを見て目を細めるアーサー。
 
 アーサーは安心していた。下手したら泣かれるかもしれないと思っていたからだ。
 
 何せ、貴族に招かれたのだ。貴族に招かれる平民という図式はそこまで珍しくないが、今回は内容が内容である。不埒ふらちな事をされると勘違いされてもおかしくなかった。出来るだけ誠実に伝えたとガウェインは言ってはいたが、それでも不安はあった。


 アーサーは思い出す。
 
 最初は、ガウェインの行動から始まった。何やら広場で迷惑行為が行われているので注意したいとの事だった。真面目な彼らしい発言だ。自身の護衛中ではあったが、ここまで来れば危険も無いだろう。そう思い快く承諾した。
 
 相手が誰だろうが彼ならば問題なく対処する。なので、大した興味はなかった。ただ、ふと窓の外を見ただけ。
 
 
 ――衝撃。
 
 
 あれほどの衝撃を受けたのは、記憶にある限り初めての事だった。
 
 初めて戦場に赴いた時。父母が死んだ時。ケイに伯爵位を譲られた時。どれも記憶に残る出来事ではあったが、今回のは種類が違う。胸が痛む。胸が苦しい。だけど嫌な痛みではない。こんなのは初めてだ。
 
(天使だ……)
 
 貴族として様々な事を学んだアーサーだが、天使というありがちな表現しかできない。
 
 ふと、天使と目が合う。少しだけ見つめ合うも、恥ずかしくなり目をそらしてしまう。ガウェインが戻り、馬車が動き出してから後悔。もっとあの姿を見ていたかった。
 
(この感情は一体……?)
 
 想像はつく。想像はつくのだが、何というか自分らしくない。
 
 幼き頃より、アーサーは努力を重ねてきた。自分は次男だ。兄のスペアであり、恐らくは他家へと婿入りする事になるだろう。そんなのは御免だ。かといって尊敬する兄を害するなどなお考えられない。だから一人でも生きていけるよう努力した。女など二の次だった。
 
 様々な出来事の末、結果として家を継ぎ領主となってしまったのだが、灰色の青春を送ったせいかどうも女というものにピンと来ない。縁談は山ほど持ち掛けられる。しかし何となく気が進まない。とはいえ、いつかは受けねばならぬとも思っていた。そんな矢先の出来事だった。
 
 その出来事をとある部下に相談した結果――
 
『ついに旦那にも春が! 旦那、それは恋ですぜ!』
 
 やはりそうか。そうなのか。
 
 三十半ばにしての初恋。しかも相手は学生。年齢も自分の半分ほどだろう。順調に結婚していれば自分の子供と同じくらいの年である。加えて貴族と平民という地位の差もある。叶えてはいけない恋だ。
 
 そう思い諦めようとしていたのだが、部下はそう思わなかったようだ。相談相手の部下は他の騎士たちに根回しし、この場を作り上げてしまった。当然叱りつけたのだが――
 
『アーサー様の為ならば』
『やっと旦那に来た春だもんなぁ』
『問題ですが、力を合わせれば何とかなりましょう』
 
 何とも頼もしく、素晴らしい部下たちだった。「すまん」というのが精一杯だった。それ以上言葉を紡げば目から大量の汗が流れそうだったからだ。
 
 彼らの調べによると、天使の名はレヴィア・グラン。学生ではなく、牡丹一華というA級冒険者パーティの一員らしい。
 
 冒険者事情には詳しくないが、A級といえば十二騎士クラスの者もいるという話だ。あれほど美しいのに強くもあるとは……天は彼女に何物与えられたのか。
 
 
 そして叶った逢瀬。馬車から降りてきた天使――いや、女神。
 
 昨日のラフな格好も良かったが、今日のは…………もう、女神としか例えようがない。
 
 その振る舞いは女神らしく高貴そのもの。これが平民の訳が無い。貴き家のご令嬢としか思えない。
 
 同行したガウェインによると、騎士の家系だという。グランという家名は聞いたことが無いが、単なる騎士爵ではあるまい。恐らくは没落した高位貴族だろう。
 
 だとすると都合がいい。没落したとて歴史ある家ならば周囲を納得させやすい。気になるのは絶縁している理由だが、そこまで突っ込めなかったらしい。あまり話したくない様子だったとの事だ。何か複雑な事情があるのだろう。まあアーサーとて人に言えない事は幾つもある。徐々にお互いを理解し合えば良い。

 仮に実家が出張ってきたとしても、こちらは王国でも有数の力を持つペンドラン伯爵家だ。義理の実家として配慮はするし、必要なら自分が頭を下げる事もいとわないが、それでも反対されるなら粛々と対処するだけだ。
 
 そんな事を考えた後、女神と会食する。平民でも食しやすいメニューを指示したのだが、無駄な気遣いだったようだ。一応用意しておいた何種もの食器カトラリーを正しく用いている。先ほどの考察はやはり正しかったらしい。
 
 ならばこの場は貴族らしい上品な話をするべきか。アーサーは共通の話題を考え始める。
 
 絵画、音楽、演劇……貴族としてそういった教養は身に着けている為、話すことに問題はない。が、どれが適切なのかが分からない。

 いつもなら何気ない話をしながら相手の興味関心を推察するのだが、緊張しているせいか頭と口が回らないのだ。テンプレートのような誉め言葉と、事前に考えていた事を話すのでやっとだった。こんなのはホストとして失格である。女神に呆れられてしまう……。
 
 だが、女神は女神だった。
 
 こちらの緊張を見抜いたのか、積極的に話し手に回ってくれたのだ。自分の話をしつつもところどころで質問を投げかけ、退屈させない。内容も面白おかしく、貴族なら絶対に話さないだろう失敗談も平気で話す。
 
 良い意味で庶民的な会話に癒され、いつの間にか自分の緊張も無くなっていた。それどころか本心から笑顔になってしまっている。

 そしてそれは自分だけでなく、周りにまで伝染していた。客の前で笑うのは使用人失格だろうが、何というか許される雰囲気なのだ。

(私だけでなく周りの心までつかんでしまったか。仕方あるまい。こうも無邪気なのではな。緊張するのも馬鹿らしくなってくる)

 ころころ変わる表情がまるで子供の様だ。絶世の美女であるのにも関わらず、それを感じさせない邪気の無さ。お高く留まっている貴族の女とは大違いだ。本人の性格もあるだろうが、市井で暮らしている事でこうなったのだろう。
 
 最初は容姿に惚れたアーサーだったが、次第にその性格にも惹かれていく。この人が伴侶になってくれればどれほど素晴らしいだろうか。公私ともに自分の助けになってくれるに違いない。温かい家庭を築き、幸せな毎日が待っている事だろう。子供は三人欲しいが、彼女が望むのであればもっと多くてもいい。
 
(フフフ、我ながら気が早い。だが、そうなれば良いな……)

 目じりを下げながら明るい未来を想像するアーサー。これは想像にすぎないが、彼には予感があった。自分と彼女なら実現できる、と。
 
 
 しばらくの時間が経ち、話がひと段落。レヴィアは少し疲れたようなため息を吐いた。

「ふう、ちょっぴり疲れてしまいました。アーサー様、少し休めそうな場所はありません?」
「な……! や、休む……?」
「うふふ、いやらしい意味ではありませんわ。ただ、ちょっと楽な姿勢を取りたいだけしてよ。アーサー様のエッチ」
「なっ、こ、これは失礼。そ、そうだな、応接室にいいソファーがある。そちらで話そう」

 顔を真っ赤にしつつも執事へと目くばせ。執事に導かれ、二人は応接室へ向かう。護衛のガウェインも一緒だ。
 
 部屋に着くと、アーサーは片側のソファーへと移動。向かい側へ向けて「どうぞ座ってくれ」と言葉をかけた。
 
 しかしレヴィアはそれに従わず、アーサーと同じ側へ来てしまった。何だろうと疑問に思っていると……
 
「あちらはお客様の席でしょう? 家族になるかもしれないのですから、こちらに座るべきかと思いましたの」

 ……確かに。
 
 ここは賓客と話し合う為に作られた場所だ。よほど真剣な話題でなければ家族内で使う事はない。テーブルを挟んで座ってしまうと、先ほどよりも距離が遠くなる。家族の距離ではない。
 
 そういう事ならと喜んで了承する。しかし、実際に座ってアーサーは気づいた。隣り合って座るという事は――
 
(ぬおおおお! やばい! いい匂いがするううう!)

 近い。近すぎる。
 
 実際は人一人分くらい間隔が空いていたのだが、何せ相手は意中の女なのだ。近すぎると感じてもおかしい事ではない。

 思わず鼻をくんかくんかしてしまいそうになるが、強靭な意思でそれを押さえつけ、何事もないかのように話をしようとする。が、上手くいかない。先ほどまでは平気だったのに。

 対するレヴィアも少し話し辛いようだ。もじもじとしており、目が合うと頬を赤くさせながらも小さく笑いかけてくる。アーサー同様、実際座ってみると距離が近すぎる事に気づいたらしい。ちょっぴり恥ずかしがっている様子。

(可愛いいいいい! レヴィア殿可愛いいいいい! ダメだ! やめてくれ! 死んでしまう!)
 
 顔を反らしつつも口を抑え、にやける顔を隠す。これほど可愛い生き物は見たことが無い。ちょっと待って。この子がお嫁さんになるの? 嬉しすぎない?
 
「アーサー様?」

 ドア横にいるガウェインの怪訝な声。自分の様子を不審に感じたらしい。色々と鈍いヤツである。既に分かっていた事ではあるが。
 
 何でもないと片手を振る事で返答。そうして気をそらした瞬間――
 
「えいっ」

 可愛らしい声。それと共に伝わる柔らかい感触。見れば、女神が自分の左半身に寄りかかっていた。
 
「な、慣れねばなりませんものね。こういうのも」


 ――あっ、死んだ。


 女神の照れた表情。死んだ。萌え死んだ。心臓が収縮しすぎて破裂するところだった。戦場で死を覚悟した事は幾度かあったが、まさかこんな場所で死にかけるとは思わなかった。

「す、すみません、ガウェイン卿。あんまり見ないでくださいまし」
「はっ。失礼しました」

 レヴィアの言葉を聞き、ぐりんと首を背けるガウェイン。流石の彼も二人が仲良くなりつつあるのには気づいているらしく、ほほえましげに見守っていたのだ。彼女はその視線に気づき、恥ずかしくなってしまったのだろう。
 
「ち、ちょっと早すぎたみたいですわね。わたくしとした事が、はしたない」
「あっ……」

 ぱっと離れてしまう女神。アーサーの胸に寂寥せきりょう感が宿る。もっとくっついていたかった。筋違いなのは分かっているが、ガウェインに対し恨めし気な気持ちを抱いてしまう。
 
 やはり二人きりになるべきだろうか。他人のいる場所では色々と躊躇する事もあるだろう。そう思った彼はこの場にいる部下へと命じる。
 
「ゴ、ゴホン! ガウェインよ、もういいぞ。執事も下がって宜しい」
「はっ。しかし、よろしいのですか?」
「その問いかけはレヴィア殿に失礼だぞ。大丈夫だ。お前の心配するようにはならん」
「これは失礼しました。では、外で待機しております」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...