美少女パパと最強娘! ~前世の娘がクラス召喚されてきた!? TS転生者のパパは正体を隠しつつ娘の為に頑張る! その美貌と悪辣さで~

ちりひと

文字の大きさ
66 / 93
第四章. 英雄王子と花嫁狩り

059. 秒で

しおりを挟む
「全く、死んだ夫に似て頑固なんだから……」

 ハァ、とため息をつくアネット。エドの説得に最終的に折れたのだ。エドがイレーヌをどれだけ大事にしているか彼女も理解していたし、放っておけば再び飛び出しかねないと判断。それよりはレヴィアたちに協力してもらった方がマシ、と考えたとの事だ。
 
「フフッ。恋人がさらわれて泣いているだけの男よりはよかろう。立派だし、私としては好ましいと思うが」
「その言葉は嬉しいけどねぇ。やっぱり心配だよ。ネイさん、頼んだよ」
「任せろ。イレーヌとやらは状況次第だが、ご子息だけは無事帰して見せるさ」

 ネイは安心させるようにアネットの肩に手をやる。実際、その言葉に嘘はない。ネイとしてもエドという少年は好ましいと思うし、可能なら恋人と共に無事帰してあげたいと思う。花嫁狩りなどとという不誠実極まりないものに寝取られるなど許せる事ではない。
 
 その彼は椅子に座り、そわそわしている。出発が待ちきれないのだろう。しかしレヴィアたちの準備がまだ終わっていない。

 しばらく待つと、向こうの部屋から純花とリズが出てきた。 

「お、おおお……」

 彼女たちの姿を見たネイが唸る。何故なら視線の先の純花とリズは……
 
「うーん。こういうのは初めてだな」
「いいんじゃない? 結構似合ってるわよ」
 
 黒髪の美男子と、金髪のショタっ子になっていた。
 
 純花は白いシャツに青いマントと男冒険者風の恰好。本人の容姿や雰囲気が相まって非常にクールな印象を受ける。
 
 リズは赤ずきんローブこそ今まで通りだが、下は半ズボン。金髪は後頭部で結われ、前からはミドルヘアーくらいに見える。こちらは可愛いらしい感じであった。
 
 『女だから声をかけられる。なら男になればいい』

 これこそがネイの施策である。男装をすることで兵士たちの目をかいくぐろうとしているのだ。
 
「ふ、二人ともいい感じじゃないか。思わず声をかけてしまいそうだぞ」

 ネイの感想。それを聞いた二人は「いい感じなんだ」「何顔赤くしてんのよ。キモいわよ」などと言葉を返す。
 
 クール系男子と半ズボンのショタっ子。ネイの好みに中々にマッチしていた。コーディネート担当はレヴィアなので、後で褒めてやらねばなるまい。

 まじまじと二人を眺める。「あー、目の保養になるぅ」という喜び。「勿体ない。何で女なんだ」という悲しみ。ネイの心の中でパトスが荒ぶる。プラスとマイナスの波で大荒れ状態だ。
 
 そして次の瞬間。
 
「よー、待たせたな」

 ――ネイの、頭が、吹っ飛んだ。
 
 二人と同じ部屋から出てきた者。それを見てしまったからだ。同じく直視したアネットは衝撃のあまり鼻血を出しぶっ倒れ、「母さん!? 母さん!!」と息子に心配されている。リズもちょっとだけ動揺しており、反対に純花は冷静そのもの。
 
「へ、へぇ……。い、いいじゃないの。ロリコンのクセに」
「様になってるじゃん。レヴィア」
「フフフ。そうだろそうだろ。身長低いのがちょっと気になるけどな。あとロリコンじゃないってば」
 
 ジャケットを着崩したワイルドな恰好。気の強そうな瞳。低い位置で結われたポニーテールという、イケメンのみに許される髪型。

 レヴィアだった。超美少女の美は男装しても全く失われていなかった。
 
 加えてその雰囲気も良い。純花とリズはその仕草から女っぽい雰囲気が多く残っていたが、こちらにそういったものは無い。まるで最初から男だったようだ。素のレヴィアと非常にマッチしている。線の細い美男子にしか思えない。
 
「ネイ?」
「どうしたの? 呆けた顔して」

 純花とリズが心配してくる。ネイはその二人を無視し、ぽーっとした表情でレヴィアの下まで歩いた。そして彼女の手を両手できゅっと握る。
 
「結婚してくれ」
「嫌」

 秒でフられた。それもマジ顔で。ネイはがくんと膝を落とす。
 
「悪いけど全っ然好みじゃないんだよね。特に性格。雑だし女っぽくないし、妙に真面目なトコあってメンドクセーし。その割に顔がいい男見たらすぐ目移りするしな。間違いなくホストとかに騙されて金貢ぐタイプ。結婚どころか彼女でも嫌」

 さらにギッタギタのメッタメタに叩いてくる。ネイは瞳から光を失い、絶望したような表情になった。少し前にどこかで見た光景である。
 
「レ、レヴィア! 言い過ぎ!」
「あっ。す、すまん、つい本音が。いや、見てる分には面白いから嫌いとかじゃねーんだよ。付き合うのは絶対ヤなだけで」

 全然フォローになってないフォロー。ネイは顔を伏せ、「フ、フフ……」と不気味に笑い始めた。その不気味さにちょっと引いてしまうレヴィアとリズ。
 
 そして数秒後。彼女は立ち上がり、さわやかな顔を見せた。
 
「よくよく考えればレヴィアだった。コイツの言う事などアテになるものか。拒否されてむしろ安心したよ」

 無論、冗談で言ったのだがな……なんて誤魔化すネイ。色々と目をそらすことにしたらしい。辛いことは見ざる聞かざる。人生を楽しむ秘訣である。もっともその結果どうなるかは不明だ。
 
 その目そらしっぷりに頬を引きつらせるリズ。引きつらせつつも話をそらすというか進める事にしたらしく、口を開く。
 
「と、とりあえずこれで三人はオッケーね。で、ネイは……」
「うーん、やっぱ駄目かー。どうすっかね」

 レヴィアはネイの胸を見ながらぼやいた。既に男装済みのネイであったが、ちょっと女を隠しきれていない。恰好は純花同様に男冒険者姿なものの、これで男と主張するのはちょっと無理がある。具体的には胸部が膨らみすぎている。

 サラシ的な布で締め付けるには少々厳しい大きさ。苦しいし、下手したらそのうち緩むかもしれない。「着ぐるみとか探す?」「怪しすぎるわよ」「いっそ置いていくとか」などと三人は話し合う。

 うーん、と悩む一同。そのうちレヴィアは不承不承という感じで言った。
 
「仕方ない。大きめの全身鎧で誤魔化すか。腹回りとか詰めれば着れるだろ。で、顔の大きさの違和感とかはフルフェイスの兜で誤魔化す。金かかるけどこれしかねーな」
「そ、そうか。私もイケメンがよかったのだが」

 非常に厚かましいことを言うネイ。誰もイケメンなんて言ってないのに。そんな彼女に一同は呆れた様子を見せつつ、再び準備に取り掛かるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...