美少女パパと最強娘! ~前世の娘がクラス召喚されてきた!? TS転生者のパパは正体を隠しつつ娘の為に頑張る! その美貌と悪辣さで~

ちりひと

文字の大きさ
88 / 93
第五章. 悪嬢 vs 悪役令嬢!? 真なるヒロインはどっちだ!

079. ファインプレー、からの后たちの会話

しおりを挟む
(よっしゃ! 切り抜けた!)

 修羅場チックな場所から逃げ出したレヴィア。彼女は心の中でガッツポーズを決めた。

 危ないところであった。今までの努力が台無しになるところだった。
 
(流石俺! マジでファインプレーだった! よかったー)

 あのまま正体をバラされればロムルスは不信感を抱いたかもしれない。もしくは後で告げ口をされる可能性もあった。しかしルシアを悪役に仕立て上げたことにより、彼女の言葉を素直に信じたりはしないだろう。加えて最後に身を引く事で健気な女をアピール。ロムルスはさらにこちらへと心惹かれるに違いない。
 
 ピンチをチャンスに変え、さらには一石二鳥の結果。素晴らしい結果であった。代わりにロムルスとルシアの間に亀裂ができたかもしれないが、知ったことではない。
 
 心の中で自画自賛しながらも階段を下りたレヴィア。そこにはレナ、ステラ、イレーヌの手下三人組がいた。
 
「き、今日ほど姉御を恐ろしいと思ったことはないっす……」
「思わず同情してしまったわ……。ルシアという方に」
「レヴィア様すごい……」
 
 どうやら一連の出来事を見ていたらしい。口々にレヴィアの所業を讃えてくる。その言葉に気分を良くしたレヴィアは「そうだろそうだろ」と頷く。
 
「ま、俺にかかればこんなモンだ。王族だろうが世界最強だろうがひとひねりよ」
「や、マジで姉御に従っといてよかったっす。分け前期待してますね」
「妃となられた暁にはぜひ夫の店をひいきに……」
「わ、私は何してもらおうかな……」

 三人ともレヴィアが妃になれると確信したのだろう。協力の対価をそれぞれが主張してくる。その現金さを見たレヴィアはさらに気を良くし、「フフフ。まあ任せておけ」とドヤ顔。こういう即物的な人間は嫌いじゃないのだ。
 
 さて、いつまでもここでグダグダしているのはマズい。いつロムルスが追いかけてくるかも分からないからだ。今回の出来事は予定外ではあったが、これはこれで演出的には悪くない。少々前倒しになるが、ロムルスを不安がらせる“溜め”を入れた方がいいだろう。
 
 そう考えつつレヴィアたち四人はステラ&イレーヌの部屋へと戻り、再びこれからの計画を話し合うのであった。



 * * *
 


 その日の夕刻。
 
 ルシアは自らの居住地、『翼の宮』へと帰り着く。
 
 翼という名の通り、翼を模した意匠があるこの場所。鳥やペガサス、グリフォンなど翼を持つ生物の彫刻や彫像がところどころに飾られている。
 
 特に多いものはワシの意匠であった。鷲とはヴィペール王族の紋章であり、王国の権威を示すもの。つまり翼の宮は英雄殿の中でも特別であり、重要な人物が住まう場所なのだ。
 
「ルシア様」
「ルシア様、如何でした? 千妃せんひとなられる方は……」

 ルシアが帰ってくると、他の妃たちが集まってくる。皆が皆、心配そうな顔であった。
 
 彼女らに対し、ルシアはふるふると首を振る。
 
「残念ながら、妃としてふさわしい人物ではありませんでした。実力の程は分かりませんが、性格が……。あれは毒婦の類です」
「そんな……!」
「何という事でしょう……!」

 嘆く后たち。
 
 ここにいるのは全員が貴族の出。それも、国を支えるという意識が非常に強い者たちだった。
 
 過去、貴族が増長し、思うままに権力を振る舞っていた時代。成長したロムルスはその力を持って多くの貴族を物理的に取り潰した。しかし全部を取り潰した訳ではない。国を思う故にロムルスの味方となった貴族も多く、そういった者たちは今も王族を支えてくれている。ここにいるのは彼らの子女という訳だ。
 
「まあ毒婦というには少々間抜けな気もしましたが……好ましくない事に変わりはありません。今でさえロムルス様がああなのです。結婚すればどうなるかは目に見えています」
「ええ。何としても阻止しなくては……」

 そして国を想う故に千人目の后というのは重大な関心事だった。
 
 ――次期後継者の母。
 
 国中に影響を及ぼす事は間違いない。貴族でなくとも、他の九百九十九人とは別格の扱いをされるはず。
 
 故に彼女らは千人目の后――千妃せんひとなる者に多大な関心を寄せている。ロムルスの女好きはもう諦めているものの、せめてその相手はマトモな相手を選んでほしい。本音を言えば自らの子を後継者にしたくはあるが、それが叶わないのなら……という訳だ。

 后のうちの一人が決意したように言う。

「ロムルス様に直訴しましょう。レヴィアという者を后にしないようにと。千人以上集めているのです。他に適格な者はいるはずです」
「いえ、今のロムルス様が話を聞いて下さるかどうか。恋は盲目といいますが、この間お話した時は完全にその状態でした」
「最悪、“いなくなってもらう”という手もありますが……」
「それは最後の手段としましょう。后候補が“いなくなる”など、ロムルス様の名誉に傷がついてしまいます。とはいえ、国が乱れるよりはマシでしょうが」

 あーだこーだと話し合う后たち。しかしイマイチいい方法が見えてこない。政治に関しては他者の意見を多分に取り入れるロムルスであるが、女の事となれば他者の言葉など耳から耳だからだ。
 
「ルシア様。ルシア様ではどうにかなりませんか? ロムルス様の幼馴染である貴女なら……」

 すがるような目を向ける后たち。しかしルシアは再び首を横に振る。
 
「残念ながら、レヴィアという女に一杯食わされました。もうわたくしの言葉は届かないでしょう。少なくとも千妃に関しては」

 あの後、ロムルスを説得しようとした彼女だが、彼は一切耳を貸さなかった。
 
 優しく、美しく、健気な女。それがロムルスから見たレヴィアであり、ルシアは彼女との仲を邪魔する者。彼女をいじめ、ロムルスから遠ざけようとする邪魔者。最終的に険悪な雰囲気となり、ロムルスは一方的に話を切って立ち去ってしまった。
 
 その言葉を聞き、がっくりと肩を落とす后ら。ルシアで無理なら自分たちでも無理と分かっているからだ。彼女の言は王の言葉よりも通り安いくらいなのだから。

 とりあえず明日までに対策を考えておくと言い、ルシアは彼女たちと別れる。そして自室への道を歩きつつもため息を吐く。
 
(本当、困ったものだわ。次々と后を増やしてついには千人目。しかもその千人目の子を次期後継者とするなんて……)

 千妃を許容しているように見えるルシアだが、内心はそうではない。当たり前だ。出自も知れぬ平民を次期後継者の母とするなど、国が乱れる原因になりかねない。最初は無欲でも権力を持たせれば狂ってしまうのが人間の常。能力も大事だが、幼き頃からの教育も大事だと彼女は考えている。
 
 そもそも后が千人いる辺りからしておかしいのだ。予算はハンパなく膨れ上がっているし、争いもヒドい。誰がロムルスの寵愛を受けるかという女の争いが。翼の宮においてはあまり無いが、他の宮では結構な問題になっている。
 
(一度手を出したっきりなんて娘もいるのだから、せめてそういう娘と離婚してくれればいいのに。そうしたら多少は……って、ここに一度も手を出されてない女がいるのでしたね……)

 ずーんと沈んだ様子になるルシア。普段は気にしてないように振る舞う彼女だが、内心はしっかり気にしていた。女のプライドは既にボロボロである。
 
 見た目は悪くない。立ち振る舞いだって気を付けている。頭も国政を理解できる程度に努力してきた。なのに……。

(まあ、仕方ないのでしょう。他の后の方々と違い、わたくしは政治的な都合で嫁いだ身。女として求められていた訳ではない。ロムルス様も嫌々娶られたのでしょうね……)

 ルシアは過去を思い出す。
 
 王権をないがしろにし、好き放題していた一部の貴族たち。そんな貴族を一掃するためにロムルスは立ち上がった。
 
 その際、公爵家は王家側についた。しかし問題となったのは当時のルシアの婚約相手。相手は侯爵家の子息で、敵対貴族の音頭を取る家。王家寄りの公爵家とはウマが合わなかったが、政治的バランスを取る為にルシアと婚約していたのだ。
 
 が、内乱のせいで状況は一変。敵味方に分かれた事でルシアとの婚約は無しとなった。代わりに王家へと嫁ぐ事になり、「滅ぼすのは敵対貴族のみ」という王家の意思を示す為にロムルスと婚約する事となる。敵対貴族の婚約者だったルシアを娶る事で「敵方と多少の縁があっても裁いたりはしない」と他の貴族へと示し、味方を増やしつつ裏切る可能性を減らす……という話し合いがあったそうだ。

(そういう意味だとロムルス様も可愛そうですね。不本意な婚約だったのでしょうから。こんな口うるさい女をわざわざ娶りたいなんて思わないでしょうし)

 ルシアは己の欠点を自覚していた。口うるさく説教臭いという。
 
 もちろん、普段からそんな風にしている訳ではない。が、ロムルスの振る舞いがあまりにもひどいのでついつい口うるさくなってしまうのだ。幼い頃の関係も影響しているのだろう。
 
 今はあんな感じのロムルスであるが、子供の頃はああではなかった。気が弱く、自信なさげで、ちょっとした事で泣いてしまう男の子。ルシア、ルシアと言い、ちょこちょこと自分の後ろをついて来ていたのをよく覚えている。まるで弟のように感じていたものだ。
 
 しかし十数年後。異性という事で徐々に距離が開き、ルシアに婚約者が出来た事もあってロムルスと会う事は殆どなくなっていった。そして次に会ったときは立派な女狂い。いや、正確には次の次か。内乱中、反乱軍のハニートラップにハマッて以来ああなってしまったのだ。
 
 その狂いっぷりは反乱軍も予想できぬほどの狂いっぷりであり、様々な経緯はあったものの、結果として反乱軍のハニートラップは失敗。王族側は勝利を得る。ここまではまだよかったが、なんとロムルスは勝利の他に九人の后をもお持ち帰りしたのだ。
 
 結果、第一夫人になる予定だったルシアは第十夫人になってしまった。もちろんルシアの祖父たる公爵家当主はカンカンだったが、最早遅い。既にロムルスは絶対的な権力を手にしていたのだから。
 
 とはいえ、それでルシアが不貞腐れるなんて事はなかった。怒りはあるが、再び内乱になるなんて事態は避けたかったからだ。故に彼女は第十后となる事を許容し、祖父を説得。公爵令嬢として、そして王族としての義務を果たすべく努力しているのだ。すなわち、国を守るという。
 
 ひたすらに王族として振る舞う日々。その事に寂しさを覚えぬ訳ではない。だが今の自分が出来ることはそれしかない。
 
 沈んではいられない。もしレヴィアが千妃になれば再び国が荒れてしまう可能性は固い。いや、確実に荒れる。ただでさえ魔王という存在が迫ってきているのだ。王族たるルシアは何としてもそれを阻止しなければならない。
 
(ロムルス様はアテにならない。ならばわたくしがやるしかありません。あの女を廃し、将来の王妃として相応しい者を千妃としなくては。その為には……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...